和光診療室

「和光市駅」南口から徒歩1分の歯科
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和光市で歯科を選ぶなら歯科タケダへ!

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総院長

竹田 直樹

診療時間月曜日火曜日水曜日木曜日金曜日土曜日日曜日
午前 10:00~13:00
午後 14:30~19:3014:00~
17:00

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よくあるご質問

矯正
矯正について

生まれつき歯並びがきれいな人なら考えたことは無いかもしれませんが、だれにも多 少の歯並びのがたつきはあるものです。 女優さんや俳優さんがニコっと笑った時、口もとから覗く白くきれいな歯並びにあこ がれて、一度は矯正治療について考えたことがある人は多いはず。 歯並びを綺麗にしたいと思った時に最初に浮かぶ方法は、歯の矯正治療でしょう。
「矯正治療を受けてみたい」と考えてみても良くわからないことが多い人のために、 わかりやすく詳しく矯正治療についてまとめてみます。
そもそもなぜ歯並びがキレイな人とそうでない人がいるのでしょうか? その違いは何なのでしょうか?
歯がきれいに並ぶか並ばないかは、幼児期の口腔内の発育環境が大きく影響を及ぼし ていることが多いとされています。
一般的に歯並びが悪くなる理由としては、あごの発育不全と生活習慣の悪癖が大きく 関係します。 人間の歯の成長プロセスは複雑ですが、歯ができる順番としては歯の頭が出来上がっ て、その後に歯の根っこが作られ位置決めがされます。乳歯から永久歯に切り替わり 永久歯に生え変わると、上下で歯が当たるところまで適度に成長し、ある程度の咬合 状態が確立したところで成長が止まります。 その後、歯の根っこがしっかり伸びて骨に固定されます。
このように、歯が出来上がる順番としてまず歯の頭が最初にできるため、歯の頭がキ レイに並ぶスペースが確保できていないと、この時点でガタガタになり、その状態が ベースになり歯が生え変わるため、永久歯に生え変わってもガタガタが修正されるこ とはほとんどありません。
人間は機械ではありませんから、あごの発育状況によって歯並びに個人差が生まれて しまうのは仕方がないことと言えます。
歯はもともと、生えることと、ある程度咬み合わせられるところでなんとなくかみ合っ ているというのが実際のところです。
さて、本題の矯正治療とはどういう治療なのか。 歯の矯正は人間が本来持っている生理現象を利用して行う治療方法です。
どういう生理現象を利用しているかというと、
人間の歯が生えている歯槽骨という顎の骨は、力がかかると、力がかかった部分の骨が 分解されます。その反対側の骨は骨と歯の根の間にスペースができることで、骨が作られ ます。(リモデリング)
これをゆっくり繰り返していくことで歯が移動するという仕組みです。 人間の体ってすごいですね!!
イメージ画像
ワイヤー矯正でもマウスピース矯正でも、この生理現象を利用して歯を動かします。 ゆっくり時間をかけて力をかけ続けて動かしたい位置まで動かしていきます。 かける力が強すぎても、弱すぎてもうまく動きません。
一般的に矯正治療は、歯を動かしている時間だけが矯正治療のように思われがちですが、 実は歯を動かし終わってからの固定時間もかなり大切です。 骨の吸収と再生を繰り返して動かされた歯は、動かし終わってもその土台となる骨が完成 していない状態と言えるでしょう。 放置すると骨が柔らかいため、後戻りしてしまう確率が高いです。 そのため歯を動かし終わったら、ワイヤーやマウスピースを使用して顎の位置と歯の位置 を固定する、保定という期間が必要となります。
保定期間は通常2年程度です。 ワイヤーでの保定であればそのまま装着し続けなければいけませんし、マウスピースでの 保定の場合でも、寝ている間は必ず、日中でもできるだけ長く保定用のマウスピースを付 け続けないと後戻りしてしまいます。
矯正期間が長くなるのは保定期間も入っているからですね。

矯正の種類

矯正治療は大きく分けて2種類、ワイヤー矯正とマウスピース矯正があります。 ワイヤー矯正は昔から見られる矯正方法で、歯にブラケットと言われるワイヤーを通 す器具を接着し、ワイヤーが元に戻ろうとする力を利用して歯に力をかけて動かして いきます。 以前は、ワイヤーもブラケットも金属で銀色のものばかりでしたが、今はセラミック でできたブラケットや白い色のワイヤーも作られており、笑った時に金属が目立つと いうことがかなり少なくなってきました。

ワイヤー矯正だとさらに歯の唇側に装置を付けるのか、歯の舌側に装置を付けるのか の2通りの方法があります。 どちらもブラケットを装着してそこにワイヤーを通すということに変わりはありませ んが、舌側の方が見えにくいという利点はあります。 ワイヤー矯正の場合は、ワイヤーの弾性力(元に戻ろうとする力)を受けるため、調 整した後にやや強い痛みが伴います。調整後、大体 1 日程で痛みは軽減するので、日 常生活に支障をきたし続けるわけではありません。

マウスピース矯正は比較的新しい矯正治療の方法で、現在では有名なインビザライン が先駆けと言えます。
急速に普及してきたデジタルスキャナーを使い、歯の3D データを撮影し、3D デー タをパソコンに取り込みます。 パソコンに取り込んだ歯のデータをソフト上で少しずつ動かし、動かした歯の模型を 3D プリンターで印刷、その模型でマウスピースのシートを造形し、カットして完成 します。 マウスピース矯正では、マウスピース1枚あたり0.2mm~0.3mm程度を動か すことができるため、仮に1mm歯を動かそうとすると4~5枚のマウスピースが必 要になります。 インビザラインは必要なマウスピースが数十枚になりますが、単純にそれだけ移動量 が大きいということができるでしょう。

また、矯正治療には部分矯正と全顎矯正という方法があります。 ワイヤー矯正でもマウスピース矯正でも、全顎、部分に対応する矯正方法があります。 どちらであっても主治医の考え方や技量、設計により差異があり、対応できるかどう かはケースバイケースです。 それぞれ得意な動きと苦手な動きがありますが、それは後述します。

マウスピース矯正の終盤で、咬合の緊密化というプロセスに入ります。 ワイヤー矯正は歯の側面にワイヤーを装着し、上下で嚙み合うのは自身の歯です。こ れに対しマウスピース矯正は、噛み合う歯の間に薄いとはいえマウスピースが干渉し ます。そのため、マウスピースをはずした状態での咬合とは変わりますし、マウスピ ースを付けているため普段以上に咬み絞めてしまうということもあり、自然な咬合状 態を作るにはワイヤー矯正の方が適しているということがいえるでしょう。 しかし、先述したように、私たちの歯は緻密に正確な設計の元に生えているわけでは 無く、なんとなく適度に噛み合えるように成長し、その後生活習慣や普段のかみ合わ せによって削れたり動いたりしながら、なんとなくかみ合わせが落ち着いた状態にな

っているだけです。 マウスピースに咬合緊密化ができないわけではなく、ワイヤーに比べて少し緩めな仕 上がりであることも認識しておくことが必要ですし、外して生活しているうちにそれ が落ち着いて適度な状態になっていくと理解しておくことも大切でしょう。

ワイヤー矯正とマウスピース矯正はそれぞれに得意な動きと苦手な動きがあります。

  ◎ワイヤー矯正が得意な動き(ワイヤーが元に戻ろうとする力を利用)
  ・歯の噛み合う高さ(咬合平面)をまっすぐにする(歯の上下移動)
  ・きれいなアーチを作る
  ・歯を平行に移動させる
  ・咬合の緊密化
  ・奥歯のかみ合わせを合わせる
  ・歯を回転させる
  ◎マウスピース矯正が得意な動き
  ・ある部位だけ動かす
  ・傾斜移動
  ・前歯の回転
  ・前歯の空隙の改善

以上を参考に検討してみると良いでしょう。

矯正治療ってそもそもどんな治療?

矯正治療と聞くと、「ワイヤーで歯を動かす」とか「マウスピースで歯を動かす」と かそのくらいしかわからないですよね。 実際どういうことを考えて治療されているのか知りたくないですか?

歯の矯正治療はクローゼットの整理整頓と同じようなものです。 歯がガタガタしているのは、歯が口の中でキレイに並ぶスペースが足りていない状態 です。これをどうやってキレイに整理するかということを考えます。 クローゼットを大きくしたり、中の洋服を捨てたり、並べ替えたり、スペースを作っ てキレイに整頓することが必要です。

洋服なら捨てたり、箱詰めしたり整理はそれほど大変じゃありません。 でも歯を抜くというのは、簡単にしたくないですよね。ではどうやってスペースを作 るのかというと。

方法は大きく分けて4つ
❶歯と歯の間を少し削る
❷歯を横に広げて全体的なスペースを確保する
❸歯を奥に移動させて、移動させた分でスペースを作る
❹それでもどうしてもスペースが足りない場合は、歯の抜歯を考える

です。

順番に説明します。
❶歯と歯の間を少し削る
スペースを作るために歯と歯の間を少し削ります。
こちらは IPR(Inter Proximal Reduction)と呼ばれる処置になり、0.2mm~0. 5mmの間で慎重に削ります。
歯と歯の間ですから、削るのは 2 歯の側面になり0.2mm削れば間に0.4mmの スペースが作られることになります。 この処置のタイミングは、ある程度歯が並んだ時に行われることが多いです。 歯がある程度並ぶ前では、重なっている部分があるため綺麗に削ることができなかっ たり、歯の違うヵ所に傷をつけてしまったりすることもあるためです。 もちろん先生によって手技が異なるため、絶対にどのタイミングでやるべきとは言い 切れません。
先生によっては IPR なんて歯を削るような処置はやるべきじゃない!!という方もい れば、IPR を行って、よりスピーディにゴールに到達できて患者さんの満足度が上が るなら、積極的に行うべきという考え方の先生もいます。 歯を削る量とタイミングさえ間違えなければ歯へのダメージも最小限ですし、選択肢 の一つと考えてもいいと思います。
IPR をしたくない、絶対に歯を削りたくないという患者さんもいらっしゃいますが、 歯の状態によっては IPR を行った方がスムーズに矯正治療が進む場合もありますから 先生と良く相談してみるのが良いでしょう。 部分矯正の場合は、全体矯正と比べて動かせる量に限界がありますから、IPR が必要 になるケースが多いと言えるでしょう。

❷歯を横に広げて全体的なスペースを確保する

歯を横に広げると言われてもピンとこない人が多いとは思います。 横に広げるというのはアーチを横に広げるということです。(側方拡大) 主に左右の臼歯の間隔を横に広げることで前歯も含めて歯がアーチ状にキレイに並べ るようにスペースを作っていくということになります。 顎が細い人は、前歯の生えている前の方の骨が、極端に言うと船のへさきのようにと がった状態になっています。 そこに何本もの歯を並べようとしても限界があり、歯が重なる叢生と呼ばれる状態に なることがほとんどです。 顎が細くなるのは、柔らかいものばかりを食べているため顎がしっかりと発育してい ないためと言われていますが、現代の多くの人が当てはまると思われます。 顎が細い人は奥歯の左右の間隔も狭い傾向にあるため、その間隔を横に広げると、前 歯を並べるスペースも確保され、きれいに並べることができるようになります。

イメージ図

奥歯の横幅を広げる方法は、

①拡大装置を使う。
②マウスピースで広げる
③ワイヤーで広げる

の 3 つの選択肢があります。 1の拡大装置を使うのがオーソドックスな方法ですが、広げるスピードが早すぎると 歯が予定以上に外側に傾いてしまったり、かみ合わせが上下で合わなくなったりする ことがありますので、無理に早くしたりせず、しっかり経過を観ていくことが大事で す。 万が一そのような状態になってしまっても、時間はかかりますが修正していけますの で担当医に相談してください。 2のマウスピースで広げることもできます。拡大装置を使うよりもかなり緩やかにな りますが、少しずつ広がっていきます。 マウスピースによる拡大は基本的には傾斜移動になることが多いです。 傾斜移動というのは歯が根っこを中心に扇型に広がるイメージです。

イメージ図(comingsoon)

アタッチメントと呼ばれる引っかかりを使用したり、マウスピース自体に予め反対側 にねじるような設計を加えておくなどすることで、しっかりと平行移動させることが

できる方法もあります。 必ず平行移動の方が良いかというとそういうわけでもなく、私の場合はあごの骨が細 く前歯がガタガタしていますが、マウスピース矯正を行い臼歯の間隔を広げたところ、 ある程度の傾斜移動があり、内側に倒れていた歯が外側に広がることでかみ合わせが 良くなり、顎関節の緊張がほぐれるといった 2 次的な改善も見られました。 あくまでも個人的な結果ではありますが、場合によっては平行移動ではなく傾斜移動 をしっかりさせるという考え方も必要だと思えました。 ケースバイケースで選択するのが良いでしょうから担当の先生に聞いてみてください。

マウスピース矯正で横に広げるのが得意なのはインビザラインだと言えます。 部分矯正でも不可能ではありませんが、部分矯正は比較的マウスピースの枚数が少な いことが多いため、移動量は少ないと言えます。

❸ワイヤー矯正で広げる

ワイヤー矯正の場合は一部分だけを広げるというのはあまり一般的ではありません。 ワイヤーのアーチに合わせてすべての歯が移動して少しずつ整っていきます。 ワイヤーのアーチに合わせて移動しますので、アーチが整い矯正力がかからないところまで歯が移動すると結果的に左右の奥歯の間隔も広がっていきます。

❹歯の抜歯を考える
❶歯と歯の間を少し削る❷歯を横に広げて全体的なスペースを確保する❸歯を奥に移動させて移動させた分でスペースを作る❶❷❸を検討した結果、どうしてもスペースが足りない場合には歯を抜いてスペースを確保する方法が必要になることもあります。 お話をすると歯は抜きたくないと言われる患者さんが多いですが、最初から歯を抜 くことを検討した方が早くきれいになるケースというのも実際には多いものです。 インビザラインでは抜歯ケースを推奨していませんが、できないことはありません。 当院では必要に応じて歯を抜くケースでもインビザラインで治療している場合があります。

先生の考え方次第ではありますが、抜歯をしてしまったら元には戻せないから、いったん並べてみて、その結果を見て歯を抜くかどうかを考えるという先生もいらっしゃいます。 しかし、通常の矯正で1.5年以上をかけて、そこから歯を抜いて矯正となれば、 あらたに1.5年以上がかかります。

これでは治療期間が伸びすぎてしまうため、最初の段階で歯を抜くことを検討した方がいい場合は多くあります。 歯科医院の担当医と良くご相談されることをお勧めします。

マウスピース矯正について

マウスピース矯正は比較的新しい矯正治療の方法で今では有名なインビザラインが先駆けと言えます。

急速に普及してきたデジタルスキャナーを使って、歯の3D データを撮影し、3D データをパソコンに取り込みます。 パソコンに取り込んだ歯のデータをソフトで少しずつ動かし、動かした歯の模型を3D プ リンターで印刷、その模型でマウスピースのシートを造形し、カットして完成します。 マウスピース矯正では、マウスピース1枚あたり0.2mm~0.3mm程度を動かすことができるため、仮に1mm歯を動かそうとすると4~5枚のマウスピースが必要になり ます。

1日最低20時間の装着が必要です。

装着時間が短いと、短時間でも少しずつ歯が後戻りするため、設計通りに動かなくなり ます。どれだけしっかり装着できるかがカギになります。 また、マウスピースは樹脂に近い素材であるため、使っているうちに矯正力が弱くなると もいわれています。

最近のマウスピースは1~2週間に1回の交換が主流なので、それほど気にしなくてもよさそうです。

マウスピース矯正の成功は先生の知識と設計者の経験が重要になります。 また、設計通りに動いているかどうかの経過観察が非常に重要になりますから、治療を受 ける歯科医院の先生とスタッフさんのコミュニケーション力も大切になります。 治療説明をしっかりしてくれる先生を選びましょう。 ワイヤー矯正と同様に、費用も比較的高く、期間も長くかかりますので、クリニックの雰 囲気も大切です。 先生がどのくらいマウスピース矯正の経験があるかも重要なポイントになりますので、そ れとなく聞いてみるといいでしょう。

マウスピース矯正でも基本はワイヤー矯正の知識が大切ですし、マウスピースでうまくい かない場合はワイヤーでのリカバリーが必要になりますから、最低でも矯正認定医がいる 歯科医院や歯科法人を選ぶのが安全かもしれません。

1点ポイントとして、ワイヤー矯正とマウスピース矯正は動かす方法が全く違います。 ワイヤー矯正ができるからマウスピース矯正ができるとは考えない方が良いです。 逆にマウスピース矯正ができるからワイヤー矯正ができるというのも違います。 それぞれ別物として知識をもっているか、経験がどのくらいあるかを確かめられると良いかもしれません。

ワイヤー矯正について

ワイヤー矯正は歯にブラケットと言われるワイヤーの固定器具を装着し、ワイヤーが元に戻ろうとする力を利用して歯を動かす矯正治療です。
ワイヤーは U 字状の形態をしていて、ワイヤーを取り付けると、元の U 字に戻ろうとしま す。 矯正医は患者の歯のアーチを確認しつつワイヤーのアーチや太さを検討し治療に入ります。 最初は細く柔らかいワイヤーから始めて、だんだんと太いワイヤーに変えていきます。 矯正を始めるころは、歯並びがガタガタしているため太いワイヤーではガタガタに対応で きず、力も強すぎるため、細い柔らかいワイヤーで少しずつ歯並びを整えていき、経過を 観ながらワイヤーの太さを変えていきます。

ワイヤー矯正をする場合、ほとんどの場合すべての歯にブラケットを取り付ける必要があ ります。 前歯の1本を動かしたい場合に隣の2本を含めて3本だけにワイヤーを付けるということ はできません。 ワイヤーを使って矯正を行う場合、まわりの歯が土台になり動かす歯に力がかかるので、 土台が弱いと土台も動いてしまい、まったく矯正できないばかりではなく、動かしたくな い歯が動いてしまうこともありますし、最悪歯を失うリスクもあります。 ワイヤー矯正は全体的に歯並びを整える矯正治療であるため、ほとんどすべての歯にワイ ヤーを取り付ける必要があります。 ワイヤー矯正はマウスピース矯正と違い基本的に取り外すことができません。 しかし、これがワイヤー矯正の最大の利点でもあります。 マウスピース矯正は最低20時間以上の装着が必要です。 ですが実際は食事をするときに外したり、時と場合に自由に外せるため、意外と20時間 しっかりと装着できている人はあまり多くありません。

しかし、ワイヤー矯正の場合は、自分で取り外すことができないため、24時間絶えずワ イヤーが矯正力を歯に加え続けています。 そのため、マウスピース矯正に比べると、ワイヤー矯正の方が歯が動くスピードが早いと 言われています。 また、ワイヤー矯正はワイヤーのアーチに合わせてすべての歯が並んでいくので、上下の 咬合関係を作るのが得意です。

ワイヤー矯正の成功は矯正医の技術力にかかっています。 先生との性格的な相性も大事で、費用も高く、期間も長くかかる治療なので、しっかりコ ミュニケーションが取れる先生を選ぶのが良いでしょう。 カウンセリングの時に質問をたくさんしてみてください。 近いから、安いからという安易な理由で選ぶのはお勧めしません。

ワイヤー矯正とマウスピース矯正の
メリット・デメリット

ワイヤー矯正とマウスピース矯正のメリット・デメリットを比較してみましょう。

1 見た目
誰もが最もわかりやすい違いとして見た目があげられます。 ワイヤー矯正は歯にワイヤーが装着されていて器具が目立ちます。 最近は金具やワイヤーがセラミックで白いものや色が付いたカラフルなものがあっ

たりして以前とはだいぶ違った印象がありますが、やはり口もとに装着されているた め目立たないとは言い難いです。

どうしても口もとに目が行きがちで、大きく笑うことをためらう場面もあるでしょ う。

マウスピース矯正は透明なマウスピースを装着するので、見た目はほとんど変わり ません。

隣で友人がマウスピース矯正をしていても、言われたり、食事の時に外すところを 見ない限り、マウスピース矯正をしていると気が付かないほど自然です。

ただ、装着し始めたころは、違和感があり滑舌が少し悪くなります。

見た目をまったく気にしない方は別ですが、表面的にはマウスピース矯正の方がメ リットは大きいでしょう。

2 清掃性 ワイヤー矯正は口の中にブラケットと呼ばれるワイヤーの固定器具とワイヤーが あります。

食事の時も取り外すことはできませんので、食べ物が器具やワイヤーに付着して しまうのは避けることができません。 食べ物が付着して残ってしまうと、口の中が酸性に傾いて虫歯リスクも上がって しまうため、食後の歯みがきは必須と言えます。 また、通常の歯ブラシではしっかり取り除くことができないこともあるため、念 入りの歯ブラシと定期的な歯科医院での清掃が必要です。 ワイヤー矯正専用の器具も売っていますので、それを利用するのもいいですし、 こまめに歯ブラシをして口の中を清潔な状態に維持しなければいけません。

マウスピース矯正では、必要に応じてマウスピースを外すことができるため、通 常通り食後の歯みがきをすればある程度口腔内を清潔に保つことができます。 マウスピース自体も時々洗浄剤を使ったり、家庭用の超音波洗浄機を使用したり して清潔に保つことで、口腔内の虫歯リスクはかなり低くできます。 それでも歯と歯の間までしっかりキレイにすることができない部分もありますの で、定期的な歯医者でのクリーニングをお勧めします。

清掃性の点では、マウスピース矯正の方がメリットが大きいです。

3 費用
矯正治療の費用は以前と比べて非常に安価になってきたと言えます。 大きく分けると部分矯正なのか全顎矯正なのかで違いがあります。 全顎矯正であれば、ワイヤー矯正では40万円程度から150万円と幅広く、マ ウスピース矯正でも60万円から100万円程度が一般的となっています。 部分矯正だと回数などにもよりますが、20万から50万円程度が多いです。

全顎矯正にしても部分矯正にしても、価格面では大きな幅がありますが、全顎矯 正だと2~4年、部分矯正だと矯正の程度にはよりますが6カ月から2年くらい が目安になります。 仮に全顎矯正で150万円だった場合、保定期間まで含めて4年かかるとして考 えると、月々の費用は150万円÷48カ月=3万1250円です。 毎月支払うには大きな支出ではありますが、矯正治療後の満足度は高いはずです から、むしろその先の生きている期間で割ったほうが価値として考えるにはよい かもしれません。仮に25歳で矯正治療を受け80歳まで生きたとして55年、 150万円を55年の660カ月で割ると1月あたり2,272円となり、決し て高くはないのかもしれません。 80歳までの価値で考えるのも極端すぎますが、歯列を改善することにより審美

的な改善だけでなく、歯の清掃性が上がり、口腔内疾患にかかりずらくなること を考えると、歯を失うリスクの軽減にもなるため検討する価値は十分にあると思 います。

部分矯正も同じように考えると、50万円を2年の24カ月で割ると1月あたり 2万833円の負担になり、こちらも安いとは言えない負担ではあります。 全顎矯正と同じように55年の660カ月で割ると1月あたりの負担は757円 となり、十分に矯正をする価値があると言えるのではないでしょうか。

このほかにも歯科医院によって再診料や調整料、矯正治療中に必要となる処置に 費用が掛かる場合もあり、一概に金額は出せませんので、担当の先生と良く相談 してみてください。

矯正治療は審美的な改善効果が最も大きいため、なるべく若いころにキレイにし た方が、その後の生活に大きな影響を与える治療だと言えます。 お子様のいるご家族にとっては一生もののプレゼントになりますし、大人になっ てからいつまでたってもご両親に感謝できるプレゼントの一つですから、是非検 討して頂きたいものです。 もちろん、今更始めるのは遅いかな...と思っている方も、健康寿命の伸びた現代 において歯を守ることは健康を守ることにつながりますね。

こちらはワイヤー矯正、マウスピース矯正のどちらにメリットがあるかという比 較はできません。

当院のマウスピース矯正だと 4 回で 99,000 円のコースがあります。 1 回あたり 24,750 円とリーズナブルな設定料金になっています。 もし 8 回で終わるとしたら、99,000 円×2回=198,000 円です。 再診料が 3,300 円かかりますが、断然お得ですね。

通院がないタイプのマウスピース矯正がありますが、正直お勧めできません。 口の中の状態が変わっていきますし、マウスピースでうまく動かない場合もあり ますので、定期的にクリーニングや検診を受けられる歯科医院の方が安心です。

4 矯正力 ワイヤー矯正は細く柔らかいワイヤーを徐々に太いワイヤーに変えていきながら 歯並びを整えていく治療です。

ワイヤーは基本的に取り外すことはできませんので、24時間歯にワイヤーの力 がかかり続けます。 一方、マウスピース矯正は最低20時間の装着が必要と言われています。 食べる時間や時と場合により取り外すことができるため、20時間しっかり装着 するにはしっかりと意識していないとできません。 外している時間は歯に矯正力がかからず元の位置に戻ろうとしますので、外して いる時間が長いと0からとは言いませんが、もう一度歯を動かしていくことにな ります。

私もマウスピース矯正の経験がありますが、2時間ほど外したままにしておくと、 マウスピースを再び装着した際に矯正力がかかる感触がありましたので、連続2 時間以上外した状態でいると少しずつ後戻りしてしまうようです。 このような理由もあり、マウスピース矯正よりもワイヤー矯正の方が歯が早く動 くと言われています。

矯正力に関してはやはり、24時間力をかけることができるワイヤー矯正の方が メリットが高いです。

5 取り外しの可否
ワイヤー矯正は基本的に取り外すことができません。 ただし、記念撮影や結婚式など、どうしてもという場合には必要に応じて外して くれる医院がほとんどです。 その際に費用が発生することもありますが、ワイヤーを取り外す場合は、ブラケ ットと呼ばれる装置を全て外して、イベントが終わったらもう一度すべて付け直 しをします。 外した後はクリーニングも必要で時間も最初に取り付けるのと同じだけかかるの で、1時間以上かかります。 ある程度費用がかかっても仕方ないかもしれません。 マウスピースはいつでも自分で取り外すことができるため、自由です。

取り外しに関してはマウスピース矯正にメリットがあります。

6 矯正治療の期間
治療期間は全顎矯正と部分矯正によって異なります。 全顎矯正であれば歯の状態にはよりますが、一般的には1.5年から4年と言わ れています。

この4年には保定期間2年が含まれているため矯正治療自体は1.5年から2年 程度になることが多いです。 部分矯正も程度に差がありますが6カ月から3年程度と言われており、そのうち 保定期間2年が含まれますので、矯正治療自体は6カ月から1年くらいが一般的 になります。

全顎矯正でも部分矯正でも、歯の位置を完全に固めるための保定期間は非常に重 要なので、2年くらいを目安に続けることが必要です。

ワイヤー保定の場合はそのままワイヤーを付け続けることもありますが、歯科医 院によっては保定期間はマウスピースで行う医院もありますので、ワイヤーで早 く動かして、保定期間は見えにくいマウスピースにするというのも一つの方法で はありますね。

7 矯正治療の成功と失敗 一番の成功は患者さんが満足できたかどうかだと思います。 そしてその結果は費用対効果という点に行きつく気がします。

近年矯正をしている方が大きく増えたのは、良くも悪くもマウスピース矯正の普 及が理由の一つと言えます。 従来のワイヤーを使う矯正に比べ、目立たないという見た目の問題が改善したこ とにより、いままで気になっていた歯並びを改善したいという要望が増えたのだ と思います。

歯科医師は患者さんの主訴を聞いて最適な治療をご提案します。 その際に、部分矯正で改善が図れるのか、全顎矯正が必要なのか、はたまたオペ などの外科処置が伴うケースでないと厳しいのかがどの治療方法を選択するかの 基準となり、そのうえで、ワイヤーでもいいのか、どうしてもマウスピースが良 いのか、早く治したいならワイヤ矯正とマウスピース矯正を併用した方法とする のかを検討します。

もしマウスピースが良いと患者さんの要望があれば、全顎矯正が必要な場合イン ビザラインをご提案します。 ただその前に、2年以上マウスピース矯正を続けていけるのかどうかがわからな い中で100万円近い費用を出していただく負担も理解できます。 実際にめんどくさくて付けられなくなったという方が多いのも事実です。

そのような場合は一旦部分矯正のマウスピースで続けられるかどうかを試してみ ることも一つの選択肢です。 歯科医院によってはお試しプランなどがありますし、部分矯正から差額で全顎矯 正に移行できる歯科医院もあります。 多くの選択肢があり、フレキシブルに選択できる歯科医院選択というのも矯正治 療を成功させるために必要な考え方かもしれません。

さて、矯正治療の成功と失敗ですが、最終的に患者さんが満足できたかどうか。 これにつきます。

矯正治療としての失敗と言えるのは
・歯並びが全く改善されたなかった。
・矯正が終わった時点で一番改善したかったところが改善されなかった
・歯が動かなかった

が主なものとなります。

ですが、これも難しいところがあります。 ワイヤー矯正で歯が動かなかったというのはほとんどありません。 歯にワイヤーを取り付けているため動かないということが基本的にないからです。 マウスピース矯正の場合は比較的多くみられます。 その理由は、マウスピースを毎日20時間以上付けられない人がいるからです。 マウスピースを付けずに歯が動かないことは当然ですから、これは失敗とは言え ません。 論文では動かなかった症例の99%が20時間以上マウスピースを装着していな かったことが原因だと言われています。

矯正治療において、時々かみ合わせに関する問題が発生します。 マウスピースによる部分矯正で起こることが多いです。 「かみ合わせが、始める以前と変わった」と言われることがあります。 しかしこれは矯正治療をしていれば当たり前のことで、歯を動かしているため以 前とかみ合わせが変わるのは当たり前のことです。 しかしケースによっては歯を動かしたことで干渉部位が変わり、確かにかみ合わ せが良くない状態になってしまっている場合もあります。 ただ、このような場合でも咬かみ合わせの調整のために歯のぶつかるところを研

磨したりをしたり、修正用マウスピースを使って数枚で改善する場合が多いです。 ワイヤー矯正でもそうですが、ある程度歯を動かしながら調整しつつかみ合わせ を整えていきます。 それに比べてマウスピース矯正はある程度最終形態をデザインして進めていくた め、最終デザインまで予定通りに進めばいいですが、そうでない場合も多くあり ます。 口の中は千差万別であるため、計画通りに動いていない場合は良くあり、最終的 に微調整が必要になることは仕方ないことです。 部分矯正では~回という回数があり、その回数以内で動かせる最良のゴールに向 かって歯を動かします。 その回数で完全に治ることが保証されていませんので、ある回数を終わった時点 でかみ合わせが気になったとしても、それは失敗とは言えないでしょう。 最終的にその状態の改善が不可能と言われた時、初めて失敗になると理解してお くことが大切です。

また患者さんの満足度という視点で考えると、矯正歯科医学的知見に基づいて治 療が不完全であるように見えても、ある程度の費用の中で、患者さんの一番の悩 みの改善に関して満足できる地点に到達しているのであれば、それは矯正治療の 成功と言えるのではないでしょうか。 矯正治療には費用や期間などさまざまな負担があります。それらを比較考量して 患者さんの最も気になっている患者さんの悩みを部分矯正により改善したという のであれば、まさにそこには患者さんを中心とした医療が成立していると言えま す。

患者さんが満足できる治療=成功という考え方が一つの答えではありますが、矯 正治療は美容整形に近いところもあり、患者さんの要望自体も歯科医学的に困難 な場合もあるため、ある程度の妥協も必要です。

8 部分矯正と全顎矯正 矯正治療において歯の診断をする際に基本とされているアングルの分類がありま す。これはエドワードワングルという歯科医師が開発しました。 エドワードアングルは矯正歯科の父と言われ、矯正歯科の理論と技術を大幅に発 展させ、歯列の咬合(かみ合わせ)の分類法を確立させた先生です。

その分類にはアングル 1 級、アングル 2 級の1と2、アングル 3 級という、大き く分けて 3 分類があります。

アングルの分類は第一大臼歯の咬合状態を元に判断を行います。

この分類からざっくり判断すると、全顎矯正は1~3に対応でき、部分矯正はア ングル1級と、アングル2級の一部に対応できると矯正治療になります。 アングル 3 級に関しては顎変形症という、顎の骨自体に問題がある場合は外科的 処置が必要になるため、すべてに対応できるとは言えません。

一般的な解釈は上述のとおりですが、先生方の治療を拝見していると、必ずしも これに完全に当てはまるとも言えない症例を見て来ました。 顎骨性の咬合異常は基本的に外科処置ができないと難しいですが、ある程度のと ころまで治したい。外科処置はしたくないという患者さんの要望に応えるべく、 真剣に取り組み、満足された患者さんもたくさんいらっしゃいます。

矯正の認定医の先生から見ると、これは手を付けるべきかどうかと、着手したこ と自体を疑問視される先生もいらっしゃいますが、目の前にいる患者さんの要望 に応えたい、救いたいという担当医の先生方の努力には感動を覚えることも度々 あります。

着手に対する見解の違いはあるものの、満足してもらえる矯正治療を提供できる かどうかは担当医の技量に大きく差があると感じます。 担当医がしっかりした経験と知識を持っていればゴールに到達できる可能性はど の状態でもあると感じています。

部分矯正であっても同じことが言えます。 先生の技量によりできるできないの差は大きいです。 歯の動きを自分で設計されている先生は、術前術後の歯並びを見ても、患者さん の要望に応えることが多くできている印象があります。

それぞれ違いはあるものの、担当医の先生としっかりお話しして進めていくのが いいですね。

矯正するならワイヤー?マウスピース?

矯正するならどちらがいいのか?大きな悩みどころですね。 大前提として、どちらでも対応が可能だという視点でお話ししていきます。 どちらにするかの決め手のポイントは次のようになると思います。 1見た目が気になるかどうか

2飽きずにつづけられるかどうか
3忘れ物や失くしものが多いかどうか
4しっかり歯みがきができるかどうか
5話すことが多い仕事をしているかどうか

1見た目
マウスピース矯正を選択する一番のポイントは見た目という方が一番多いです。 仕事柄人としゃべることが多い人やモデルの仕事をしている方などは、ワイヤー矯正によ る見た目が気になるためマウスピース矯正じゃないと無理と言われる方が多いです。 見た目では圧倒的にマウスピース矯正にメリットがあります。

周りの同僚がマウスピース矯正をしていたことがありましたが、1mの距離で話していて も気が付かず、マウスピース矯正をしていると言われてはじめて気が付き、外してもらう まで実際に付けているのかわからないくらいでした。

2飽きずに続けられるかどうか
ワイヤー矯正は一度取り付けたら簡単には外せません。 つまり、半ば強制的に矯正治療が続いていきます。 一方でマウスピース矯正はいつでも外すことができてしまうのと、つけたり外したりを繰 り返す必要があります。 また、装着タイミングをしっかり管理して取り替えていかなければいけなくなります。 マウスピース矯正ではめんどくさくなり飽きてしまって離脱していく方がかなり多いです。 ゴールに向かって根気よく続けていけるかどうかがマウスピース矯正をやり遂げられるか のポイントになります。

飽きっぽいタイプの人には不向きかもしれません。

3忘れ物や失くしものが多いかどうか ワイヤー矯正は取り外すことができないため、忘れてくることはありませんが、マウスピ ースは結構忘れます。 患者さんでもごみと一緒に捨ててしまったり、外して忘れてきてしまったりして、作り直 したいという方がたくさんいらっしゃいます。 マウスピースにストラップを付けておくこともできませんので、忘れ物が多い人には不向 きかもしれません。

4しっかり歯みがきができるかどうか
これはワイヤー矯正の方にとって重要なポイントになるかもしれません。

マウスピース矯正の場合はいつでも取り外しができるので、歯みがきもマウスピースを外 してしまえばいつも通りです。 しかしワイヤー矯正の場合は取り外しができませんので、しっかり歯みがきするのが重要 です。

ワイヤーが付いている分、通常の歯みがきよりも丁寧に磨く必要があります。 それも毎日今まで以上に丁寧な歯みがきが必要です。 こまめに歯みがきをしないと口の中が不衛生になるばかりか、歯周病や虫歯など、口の中 の疾患リスクが高くなります。

いずれにしても、最終的な歯並びがきれいになるというゴールを目指して、毎日こまめに ケアしなければいけないのはどちらも同じですね。 自分がきれいになることをモチベーションにして頑張って頂きたいです。

5話す仕事をしているか これはワイヤー矯正にも共通する問題ではありますが、慣れるまで活舌が悪くなります。 痛いからしゃべりにくいというのもありますが、やはり、口の中に異物が入った状態です から、なかなか普段通りに話すことができません。
でも、だんだん慣れていきます。
私の場合は 1 週間もするとそれほど気にせずに話せるようになっていました。 2週間もすれば気にせずに話すことができるようになってしまいます。 活舌が大切な司会業をやっている方、アナウンサーさんには向いていないかもしれません が、通常会話であれば許容範囲と言えます。

8,どんな歯医者を選んだらいいのか
歯医者選びは非常に大切です。
正直言って外からでは技術レベルや対応は分かりません。 ホームページやインターネット、口コミでもほぼ判断できないでしょう。 ではどうやって判断するのかというと、やはり一回カウンセリングを受けてみるのが良い です。

お試しのようなプランがあるところは試してみるのが良いですね。 実際に治療に行ってみて先生やスタッフさんの雰囲気を感じ取るのが一番です。

そうは言っても、すごく感じは良かったのに・・・という結果もありがちです。 一つの目安としては矯正治療で 4 年以上かかることはありますか?と聞いてみてください。 あるという先生のところはあまりお勧めしません。

通常であれば2~3年で終わります。抜歯を伴う矯正治療はもう少しかかるかもしれませ ん。
保定を含めて 4 年以上はありえます。 あくまでも矯正治療自体の期間がどのくらいかを聞いてみると良いでしょう。

あとは、ワイヤー矯正であれば矯正認定医かもしくは認定医が在籍している歯科法人が間 違いありません。 マウスピース矯正であれば、どれだけの人数の治療を完了させてきたかがポイントです。 最低でも経験値として1000人以上を診てきた先生なら安心です。

後はやはり相性の問題があります。 しっかりお話しして歯科医院の先生や衛生士さんとのコミュニケーションが取れるかどう か気にしてみてください。 また、装置が壊れたりなくなったりしたときに、すぐに通院できるというのもポイントの 一つかと思います。

9,矯正治療のリスク
矯正治療に限らず歯科治療には様々なリスクが伴います。 保険治療であっても常に100%うまくいくとは限りません。 担当する歯科医師も決して治療の失敗を望むことはなく、間違いなく成功することを 目指して治療に当たっています。
それでも予見できないことは起こります。 ここでは矯正治療を行ううえで可能性の高いリスクについてご紹介していきます。

1失活のリスク(神経が死んでしまう) 矯正治療では歯に力をかけて動かしていくため、神経に与える影響は少なからずあ

ります。矯正治療の中でも割と高い頻度で失活は生じます。 日常生活でもボールが当たった等の外的な力により数日~数年後に失活しているこ

とが明らかになることもあります。 失活してしまうかどうかは患者さんの身体的状況からも千差万別であるため、失活

するかどうかの予見は非常に難しいです。 ワイヤー矯正でもマウスピース矯正でもある程度の知見から、歯に加える力につい

ては移動量としてエビデンスがあり、その移動量を超える範囲で動かすことはほとん どありません。 これまで数万人の方にマウスピース矯正を提供してきましたが、1000人に1人く

らいの割合で失活する方がいらっしゃいます。 その場合も特に強い力をかけていたわけではなく、通常の規定値で動かしていたの

に失活してしまったという方や、マウスピースを数日外して、装着するを繰り返した 結果失活した方もいらっしゃいます。

失活する際は、歯の色が変わってきたり、痛みがひどく出たりする場合などがあり ます。

そのような症状が出たときにはマウスピースを外して様子を見るなどすることが大 切です。

あまりに痛い場合などは担当医にすぐに相談することをお勧めします。

これまであったケースでは、色が変わり始めたことに気が付いて、少しマウスピー スを外して過ごしていたら、徐々に回復したという報告もありました。

痛すぎる場合は我慢せず、先生に相談しましょう。

ご自身で痛みに弱いという自覚がある場合は、それを先生に伝えて、少し移動量を 少なめに設計してもらうなど相談してみるのも良いでしょう。

2歯根吸収のリスク
これはあまり多くは見られませんが、まれにあります。 歯根吸収は日常の生活の中でも起きる現象です。 咬み絞めが強かったり、歯ぎしりをしていたり、歯の根に強い力がかかると、根の

先が溶けて吸収され歯の根が短くなることがあります。 矯正治療により歯の根に力がかかると、それにより歯の根が吸収されてしまいます。 この症状は通常は1mm短くなる程度で、ある程度許容範囲ではあります。 歯根吸収が起きても日常生活では大きな支障はほとんどありません。 これも人により様々なため、歯根吸収が起きることを予見することは難しいでしょ

う。

3顎関節症のリスク 矯正治療によりかみ合わせが変わったりすることで、顎関節症を発症するケースが

あります。 特に、マウスピース矯正を開始したことにより就寝時にかみしめたり食いしばった

りして、朝起きた時に顎が痛くなったり口があかなくなったり...というような顎関節 症状が出てくることがあります。

4歯肉退縮のリスク 矯正治療により歯茎が下がってしまうリスクがあります。

設計上では問題ない場合でも、結果的に歯茎が下がる場合があります。 徐々に下がっていくのであれば途中で気が付いて、治療をいったん止めるなどの対 応ができますが、歯肉退縮については、気が付いたら歯茎が下がっていたというこ とが多いため、なかなか対策が難しいです。 そのようなリスクを理解しつつ、こまめにセルフチェックするなどして観察し、違 和感があればすぐに担当医に相談するのが良いでしょう。

5虫歯や歯周病などのリスク 矯正治療中は矯正装置をつけていたり、マウスピースを装着している時間がながく なるため、普段以上に丁寧な歯みがきを心掛ける必要があります。 矯正をしていない時に比べて、食べ物が口の中に残っている時間が長くなる可能性 があるため、酸性に傾きやすかったり、虫歯菌にとって良い環境になる可能性があ り、虫歯や歯周病のリスクが高まります。

食後の歯みがきは普段以上に丁寧に行うようにすると良いでしょう。

6口内炎のリスク 口の中に矯正装置やマウスピースを装着すると、口の中の粘膜に異物が触れるため、 口内炎になりやすくなります。
大抵は 2 週間くらいで口の中も慣れてきて、口内炎ができにくくなります。 慣れるまでは痛くて辛いこともあるかもしれませんが、飽くなき美の追求のためな らある程度の痛みは乗り越えられますね!
美は 1 日にしてならず!
キレイな歯並びを手に入れるために頑張りましょう!!! どうしても痛い場合は先生に口内炎の薬を処方してもらうなどして、辛い時を乗り 越えましょう。

7かみ合わせが変わるリスク 矯正治療を行うことでかみ合わせが大きく変わることがあります。 口を閉じられなくなったり、うまく噛めなくなる状態が続くこともあるかもしれま せんが、矯正治療中であれば許容しなければいけないこともあります。 大抵は矯正治療の終盤になって落ち着いてくるものですが、どうしても気になる場 合は咬み合わせの調整などをしてもらうのも一つの方法です。 かみ合わせについては今までとは変わると認識しておいた方が良いです。

インプラントについて

インプラント治療とは、歯を失った方がその機能を再び取り戻すための画期的な歯科医療の手法であり、今日の歯科学の世界において非常に大きな役割を果たしている治療法です。この治療は、単に失った歯を補うという役割を超えて、患者の日常生活における快適さや満足感を劇的に向上させることができます。
具体的には、見た目の美しさと自然な噛み心地を提供し、食事や会話といった日常の生活を以前のように楽しめるようになるため、自信を回復させる手段として多くの人々に受け入れられています。
こちらでは、インプラントの歴史的な背景から始まり、その基本的な仕組みや特徴、手術の具体的なプロセス、治療中に注意すべきポイント、考えられるリスク、そして患者がよく抱く疑問に対する回答まで、非常に幅広い情報を網羅しています。さらに、最近の技術的な進歩や、インプラント治療が口の中全体の健康にどのような影響を与えるのかについても、詳しく掘り下げてまとめています。
この文書を読むことで、インプラント治療に対する理解が一段と深まり、治療を受けるかどうか迷っている患者さんが、自分にとって最適な判断をするための参考にして頂ければと思っています。
また、歯科医師や歯科衛生士などの医療従事者にとっても、患者さんとの会話の中で役立つ知識を提供したり、治療の計画を立てる際に参考にできる資料として活用していただければ幸いです。インプラント治療は、見た目や機能だけでなく、生活全体にポジティブな変化をもたらす可能性を秘めた治療法であり、その魅力を余すことなくお伝えしたいと思います。

インプラントの歴史をたどる

⚫︎古代における歯の補填の試み

インプラント治療の起源は、驚くべきことに人類の歴史の非常に古い時代にまで遡ることができます。考古学者たちが発掘作業を通じて明らかにした証拠によると、古代エジプトや古代マヤ文明、そして古代ローマの人々は、歯を失った際にその代わりとなるものを何とか作り出そうと試みていました。

たとえば、古代エジプトでは、貴族の墓の中から金の細いワイヤーで固定された人工的な歯が見つかっています。これは、当時の技術としては非常に高度なものであり、彼らが歯の喪失を深刻に受け止めていたことを物語っています。また、古代マヤ文明では、貝殻を丁寧に加工して顎の骨に埋め込むという方法が取られていたことが確認されています。これらの貝殻は、形状を整えられて歯の代わりとして機能するよう工夫されており、当時の人々の知恵と技術力を感じさせます。さらに、古代ローマ時代には、象牙や金属を素材にした人工歯の痕跡が残されており、これもまた歯を補うための努力の結果です。

これらの古代の試みは、現代のインプラント技術と比べると非常に原始的で、成功率も低かったと考えられます。しかし、人類が何千年も前から歯を失うことによる不便さや見た目の問題に悩み、それをなんとか解決しようと努力してきたことは明らかです。これらの初期の挑戦は、現代のインプラント治療の基礎を築くための重要な第一歩であったと言えるでしょう。過去の人々が残したこのような努力がなければ、今日の高度な技術は生まれていなかったかもしれません。

⚫︎20世紀以前の進歩と試行錯誤

18世紀から19世紀にかけて、歯科学が学問として発展するにつれて、インプラント治療も少しずつ進化を遂げていきました。この時期には、金属を使ったインプラントが登場し、より洗練された形で歯を補う試みが始まりました。しかし、この時代にはまだ大きな課題が山積みで、たとえば、体が金属を受け入れにくいことや、感染症が頻繁に起こることなどが問題となっていました。

具体的な例として、1809年にイタリアの歯科医師であるマジョーロ(Maggiolo)が、純金でできた人工の歯の根を開発したことが挙げられます。この金製の歯の根は、現代のインプラントの原型とも言えるものだったのですが、残念ながら長期的に安定して機能することはできませんでした。その後も、19世紀の終わり頃には、磁器で作られたインプラントや、白金の管を使ったインプラントなど、さまざまな素材や方法が試されました。歯科医師たちは、試行錯誤を繰り返しながら、少しでも良い結果を得ようと努力を重ねていたのです。

しかし、当時の技術では、顎の骨に埋め込んだ金属や素材が体に馴染まず、炎症を引き起こしたり、拒絶反応を起こしたりすることが多く、成功したケースはごくわずかでした。それでも、これらの挑戦は決して無駄ではなく、後のインプラント技術の発展に大きなヒントを与えました。特に、体に害を与えず、骨と調和する素材の必要性が強く認識されるようになり、これが後の研究の方向性を定めるきっかけとなりました。

⚫︎現代インプラントの誕生

インプラント治療が現在の形に近づいたのは、20世紀の1950年代に入ってからのことです。この時期に、スウェーデン出身の整形外科医であるペル・イングヴァール・ブローネマルク博士が、偶然の発見を通じてインプラント治療の歴史を大きく変えることになりました。

ブローネマルク博士は、もともと骨の治癒プロセスを研究しており、ウサギの太ももの骨にチタン製の小さな光学機器を埋め込んで観察していました。実験が終わり、その機器を取り外そうとしたところ、驚くべきことにチタンが骨と完全に一体化してしまっていたのです。この現象に注目した博士は、これを「オッセオインテグレーション(骨結合)」と呼びました。この発見は、インプラント治療に革命をもたらす画期的な出来事でした。

チタンは、体の拒絶反応が少なく、骨と強固に結びつく特性を持っていることがわかり、これが長期的に安定したインプラントを実現するための鍵となりました。ブローネマルク博士は、この発見を活かして歯科用のインプラントの開発に取り組み、1965年に最初の臨床試験を成功させました。この成功が、現代のインプラント治療のスタートラインとなったのです。

⚫︎ブローネマルクの影響とその後の展開

ブローネマルク博士の1965年の成功は、インプラント治療が実用的な医療として広がるきっかけとなりました。この技術は、その後世界中に知れ渡り、歯科医療における重要な治療法の一つとして確立されました。博士の功績は、インプラントそのものの技術を進化させただけでなく、歯科学全体に新しい考え方をもたらした点でも非常に大きいと言えます。特に、オッセオインテグレーションという概念は、歯科だけでなく、整形外科や耳鼻科など他の医療分野にも影響を与えました。例えば、人工関節や補聴器の開発にも応用されるなど、その影響力は多岐にわたります。現在では、ブローネマルク博士の研究を土台として、インプラントの表面を加工する技術の改良、新しい素材の導入、さらにはデジタル技術を活用した治療法の開発が進められており、インプラント治療は日々進化を続けています。このように、彼の業績は現代医療において今なお生き続けているのです。

インプラントとは何か

⚫︎インプラントの基本的な概念

インプラントとは、歯を失った部分に人工の歯の根を顎の骨に埋め込み、その上に人工の歯を取り付けることで、歯の見た目と機能を回復させる治療法です。この方法は、従来の入れ歯やブリッジとは異なり、独立した構造でしっかりと固定されるため、周囲の健康な歯を削ったり傷つけたりする必要がありません。そのため、より自然な噛み心地や安定感を得られるのが特徴です。

インプラント治療がもたらす主な利点は、次のように挙げられます:

• 見た目が自然で、まるで自分の歯のようになる。

• しっかり噛めるようになり、発音もクリアになる。

• 周囲の健康な歯に負担をかけない。

• 顎の骨が痩せるのを防いでくれる。

• 長い期間にわたって安定して使える。

これらのメリットがあるため、インプラントは歯を失った多くの人にとって、最適な解決策として選ばれています。

⚫︎インプラントの構造とその役割

インプラントは、3つの主要な部分から構成されています。それぞれが重要な役割を果たし、全体として機能することで、自然な歯に近い体験を提供します。

まず、インプラント体があります。これは、顎の骨の中に埋め込まれる人工の歯の根にあたる部分で、通常はチタンやチタン合金で作られています。チタンは体に馴染みやすく、骨としっかりと結びつく性質を持っています。この部分の表面には、骨との結合をより強固にするための特殊な加工が施されており、一般的にはスクリュー(ねじ)の形をしています。この形状は、骨との接触面積を増やし、埋め込んだ直後から安定するように設計されています。

次に、アバットメントがあります。これは、インプラント体とその上の人工歯をつなぐ中間部分で、インプラント体にしっかりと固定されます。アバットメントは、上に取り付ける人工歯を支える役割を果たし、インプラントの位置や角度に合わせてさまざまな形や素材が用意されています。通常はチタン製が使われますが、見た目をより自然にするためにジルコニア製のものを使う場合もあります。

最後に、人工歯冠です。これは、実際に外から見える歯の部分で、セラミックやジルコニアといった素材で作られています。天然の歯と同じような色や形に仕上げられ、患者の他の歯と調和するように細かく調整されます。最近では、CAD/CAMというコンピュータ技術を使って、より精密で自然な人工歯を作ることが可能になっています。

この3つの部品が一体となって働くことで、インプラントは見た目も機能も天然の歯に非常に近いものになるのです。

⚫︎インプラントの種類とその特徴

インプラントにはさまざまな種類があり、治療の目的や患者さんの口の中の状態によって、どのタイプが最適かを歯科医師が慎重に選びます。現在では、その中でも特にエンドオッセアスインプラント(以下単にインプラントと呼びます)が圧倒的に広く使われており、現代のインプラント治療の主流となっています。このタイプを中心に、状況に応じた具体的なケース――たとえば即時埋入する場合、増骨剤を使う場合、ソケットリフトを行う場合、そしてサイナスリフトが必要な場合――について詳しく見ていきましょう。それぞれの特徴や適用場面を丁寧に掘り下げて説明します。

インプラント:現代の標準タイプ

まず、最も一般的なのがインプラントです。このインプラントは、チタン製のねじ型の構造を持ち、顎の骨に直接埋め込むタイプで、現在ではインプラント治療のほぼ全てと言っても過言ではないほど広く採用されています。その理由は、シンプルで信頼性が高く、さまざまな患者さんの状態に対応できる柔軟性があるからです。

インプラントは、大きさや形が患者さんの骨の状態や、どの歯を補うのかによって細かく選ばれます。たとえば、前歯を失った場合と奥歯を失った場合では、骨にかかる力や必要な安定性が異なるため、インプラントの長さや太さが調整されます。最近では、表面処理技術の進歩が目覚ましく、インプラントの表面に微細な凹凸を施したり、特殊なコーティングを加えたりすることで、骨との結合が以前よりもずっと早く、強固に進むよう改良されています。これにより、手術後の回復期間が短縮され、患者さんにとって負担が減るのも大きな利点です。

このインプラントを中心に、以下では具体的な治療シナリオごとにその適用方法を詳しく見ていきます。

現代の歯科医療では、他の種類が使われることはまれで、インプラントがほぼ標準となっているため、ここではその活用法に焦点を当てて説明します。

即時埋入の場合

インプラントの一つの応用として、**即時埋入(Immediate Placement)**があります。これは、歯を抜いたその場で、すぐにインプラントを埋め込む方法です。たとえば、虫歯や歯周病で歯が抜けた場合や、事故で歯が折れてしまった場合に、抜歯したその日のうちにインプラントを入れることが可能です。この方法の大きな特徴は、治療期間を大幅に短縮できる点にあります。通常、インプラント治療では抜歯後に数ヶ月待って骨が治るのを確認してから埋入しますが、即時埋入ならその待ち時間を省略できるのです。

ただし、即時埋入が適しているかどうかは、いくつかの条件に左右されます。まず、抜歯した部分の骨が十分に残っていて、健康な状態であることが必要です。たとえば、感染がひどく骨が溶けている場合は、この方法は難しくなります。また、インプラントがしっかりと固定される「初期安定性」が得られるかも重要なポイントです。最近のインプラントは、ねじのデザインが改良され、柔らかい骨でも安定しやすいものが多く、即時埋入の成功率を高めています。

たとえば、前歯を失った患者さんが、見た目をすぐに回復したいと希望する場合、即時埋入でインプラントを入れて仮歯を装着すれば、その日のうちに笑顔を取り戻せます。このスピード感と審美性が、即時埋入の大きな魅力です。ただし、術後のケアや噛む力の管理がより慎重に求められるため、患者さんへの説明と協力が欠かせません。

増骨剤を使う場合

次に、インプラントを埋める際に、**増骨剤(Bone Augmentation Material)**を使用する場合があります。これは、顎の骨の量が不足しているときに、骨を補う材料を追加してインプラントを安定させる方法です。たとえば、長年歯がない状態が続くと、骨が自然に痩せて薄くなってしまうことがあります。そんなとき、単純にインプラントを埋めるだけでは安定性が得られないため、増骨剤を活用して骨のボリュームを増やすのです。

増骨剤にはいくつかの種類があり、患者さん自身の骨(自家骨)を別の部分から採取して使う場合もあれば、人工的な骨補填材や牛由来の素材を使う場合もあります。たとえば、下顎の奥歯を補うためにインプラントを入れる際、骨の高さが足りないと判断された場合、手術中に増骨剤を埋め込んで、インプラントをしっかり支える土台を作ります。このプロセスは、インプラントの柔軟性を活かした治療法で、骨が少ない患者さんでも治療を受けられる可能性を広げてくれます。

増骨剤を使う場合、治療期間が少し長くなることがあります。たとえば、増骨剤が骨と一体化するまで3~6ヶ月待ってからインプラントを埋めるケースや、手術と同時に行うケースがあります。どちらにせよ、インプラントの高い適応力のおかげで、骨の状態が悪い患者さんにも自然な歯を取り戻すチャンスが与えられるのです。

ソケットリフトの場合

上顎の奥歯を治療する際に、骨の厚みが足りない場合、インプラントと一緒に**ソケットリフト(Socket Lift)**という手法が使われることがあります。これは、上顎洞(鼻の横にある空洞)の底を少し持ち上げてスペースを作り、そこに増骨剤を入れて骨を増やす方法です。たとえば、上顎の奥歯を失ってしばらく経つと、上顎洞が下がってきて骨が薄くなることがあります。そんなときに、ソケットリフトが役立つのです。

具体的な手順としては、インプラントを埋める穴をドリルで開ける際に、上顎洞の膜(シュナイダー膜)を慎重に押し上げます。そして、その下に増骨剤を詰めて、インプラントを同時に埋め込むか、後で埋めるかを決めます。たとえば、骨が5mm程度しかない場合、ソケットリフトで2~3mm持ち上げて増骨剤を加えれば、インプラントを安定させられるのです。

この方法の利点は、大きな手術を避けられることです。たとえば、もっと大がかりなサイナスリフトに比べ、ソケットリフトは切開が小さく、患者さんの負担が少ないのが特徴です。インプラントのねじ型デザインは、このような微妙な調整が必要な場面でもしっかりと固定されるので、ソケットリフトとの相性が抜群です。上顎の治療で骨が薄い患者さんにとって、自然な噛み心地を取り戻すための現実的な選択肢となっています。

サイナスリフトの場合

さらに骨が極端に少ない場合、特に上顎で深刻な骨吸収があるときには、**サイナスリフト(Sinus Lift)**がインプラントと組み合わせて行われます。これは、上顎洞の底を大幅に持ち上げて、大量の増骨剤を入れて骨を増やす大がかりな方法です。たとえば、上顎の骨が3mm以下しかないような重度のケースでは、ソケットリフトでは対応しきれず、サイナスリフトが必要になります。

サイナスリフトの手術は、歯肉を大きく切開し、骨に窓を開けて上顎洞膜を持ち上げ、そこに自家骨や人工骨をたっぷり詰めるという流れです。その後、骨が安定するのを待って(通常6~9ヶ月)、インプラントを埋め込みます。たとえば、奥歯をすべて失った患者さんが、しっかり噛めるようにしたいと希望する場合、サイナスリフトで骨を10mm以上増やして、複数のインプラントを安定させることができます。

この方法は、手術の規模が大きいため、患者さんの体力や回復力も考慮されます。しかし、インプラントの高い生体適合性と結合力のおかげで、サイナスリフト後の骨にもしっかりと馴染み、長期間安定した結果をもたらします。骨が極端に少ない患者さんでも、諦めずに治療を受けられる可能性を広げる、まさに救世主のような手法と言えるでしょう。

その他の種類(補足)

インプラントが主流である現代において、他の種類はほとんど使われなくなっていますが、補足として触れておきます。たとえば、サブペリオステアルインプラントは、骨の上に金属フレームを置いて歯を固定するタイプで、かつては骨量が少ない患者さんに使われました。しかし、安定性がインプラントに劣り、現代ではほぼ見かけません。

また、ジゴマティックインプラントは、上顎の骨が極端に少ない場合に頬骨に固定する特殊な方法です。たとえば、重度の骨吸収で通常のインプラントが不可能な場合に有効ですが、手術が複雑で専門的な技術が必要なため、ごく限られたケースでしか使われません。

ミニインプラントは、直径が3mm未満の小さなインプラントで、一時的な使用や狭いスペース、入れ歯の安定化に役立ちます。たとえば、下顎の前歯を仮に補う場合に便利ですが、耐久性が低いため、インプラントに取って代わられています。

さらに、「即時負荷インプラント」や「オールオンフォー」といった手法もありますが、これらもインプラントをベースにした応用です。患者さんの状態や希望に合わせて選ばれますが、結局のところ、インプラントがその柔軟性と信頼性で現代治療の中心となっているのです。このように、現在ではインプラントがインプラント治療のほぼ全てを占めており、即時埋入、増骨剤使用、ソケットリフト、サイナスリフトといったさまざまな状況に対応できる万能性が特徴です。そのチタン製の構造と表面処理技術の進化により、骨との結合が早く、強く、患者さんのニーズに柔軟に応えられるのが強みです。他の種類は過去のものとなりつつあり、インプラントが現代の歯科医療の標準として確立していると言えるでしょう。

インプラント治療のステップごとの詳細

⚫︎初回の診察と診断プロセス

インプラント治療を始めるにあたって、最初に行われるのが歯科医師による丁寧な診察と診断です。この段階は、治療がうまくいくかどうかを大きく左右する非常に重要なプロセスで、以下のような項目が詳しく調べられます。

まず、患者さんの全身の健康状態を確認します。例えば、糖尿病や骨粗しょう症、心臓病などの病気があるかどうか、また普段飲んでいる薬やアレルギーの有無をチェックします。これらは、インプラント治療が適しているかどうかや、成功率に影響を与える可能性があるためです。

次に、口の中の状態を詳しく見ます。残っている歯の健康状態、歯周病があるかどうか、噛み合わせがどうなっているか、歯肉などの軟らかい組織がどのくらい健康かを調べます。特に歯周病は、インプラントが長持ちするかどうかに大きな影響を与えるので、もし見つかれば先に治療することが必要です。

さらに、顎の骨の状態を評価します。レントゲン写真やCTスキャンを使って、骨の厚さ、質、密度を詳しく確認します。最近では3DのCTスキャンが使われることが多く、これによって非常に精密なデータが得られます。これにより、インプラントを埋めるのに十分な骨があるか、またその質が適切かを判断します。

また、歯が抜けた部分についても詳しく見ます。その場所の状態や、周囲の歯との関係、見た目の美しさをどれくらい求めるかを考慮して、最適なインプラントの種類や大きさ、埋める位置を決めます。

最後に、神経や血管の位置をCTスキャンで確認します。特に下顎管や上顎洞といった重要な部分がどこにあるかを把握することで、手術中に神経を傷つけるリスクを減らすことができます。

これらの情報をすべて集めて分析し、インプラント治療が適切かどうか、またどんな治療計画がベストかを判断します。このとき、患者さんの希望や期待も丁寧に聞き取り、治療の目標をはっきりさせます。必要に応じて、口の中の写真を撮ったり、歯の型を取ったりして、さらに詳しい計画を立てるための資料にします。

⚫︎治療計画の具体的な立案

初診でのデータを基に、患者さん一人ひとりに合わせた詳細な治療計画が作られます。この計画には、次のような内容が含まれています。

まず、必要なインプラントの本数と、どこに埋めるかを決めます。これは、歯が抜けた状態や顎の骨の条件によって変わります。1本だけの場合もあれば、顎全体を補う場合もあるので、ケースごとに柔軟に対応します。

次に、インプラントの種類や大きさを選びます。たとえば、骨が少ない場合には短いインプラントや細いものが検討されます。

また、骨や歯肉の追加処置が必要かどうかも考えます。骨の量や質が足りない場合、骨を増やす「骨移植」が必要になることがありますし、見た目を良くするために歯肉を移植することもあります。

さらに、治療のスケジュールと期間を決めます。最初の手術から最終的な歯の装着まで、通常は数ヶ月から半年以上かかることが多いです。

費用の見積もりも提示します。インプラントの本数や骨移植の有無、使う素材によって金額が変わるため、具体的な数字を伝えます。

そして、インプラント以外の選択肢も説明します。たとえば、ブリッジや入れ歯といった方法もあり、それぞれのメリットとデメリットを伝えて、患者さんが十分な情報を持って選べるようにします。

この計画は、患者さんと一緒にじっくり話し合い、必要なら調整します。生活スタイルや経済的な状況、患者さんの希望も考慮しながら、最も良い形に仕上げます。また、リスクや合併症の可能性についても丁寧に説明し、納得してもらった上で進めます。

⚫︎手術に向けた準備

インプラントの手術を行う前に、以下のような準備が進められます。

まず、治療の内容や流れ、期待できる結果、リスク、他の選択肢について患者さんに詳しく説明し、同意を得ます。これはインフォームドコンセントと呼ばれる重要なステップです。

次に、全身の健康状態を再確認します。必要なら血液検査や心電図を行い、特に糖尿病のコントロールや、抗凝固薬を使っている人の調整をします。

口の中も準備します。歯石を取ったり、虫歯を治療したりして、清潔で健康な状態に整えます。

麻酔の方法も決めます。通常は局所麻酔ですが、複雑なケースや患者さんの希望によっては全身麻酔も検討します。

また、CTデータを使って手術用のガイド(ステント)を作ることもあります。これで手術の精度と安全性が上がります。

術前に使う薬も準備します。感染を防ぐための抗生物質や、不安を和らげる鎮静剤などが考えられます。

最後に、手術当日の注意点を伝えます。食事の制限や薬の飲み方、服装などについて細かく説明します。

これらの準備で、安全で効果的な手術を目指し、患者さんの不安も軽減します。

⚫︎インプラント手術の実際

手術は次のような流れで進みます。

①最初に麻酔をします。通常は局所麻酔ですが、場合によっては静脈内鎮静や全身麻酔も使います。

②歯肉を切開して顎の骨を出します。切開は小さくして、術後の痛みや腫れを減らします。

③骨にドリルで穴を開けます。専用の道具で少しずつ広げ、熱を防ぐために生理食塩水で冷やしながら慎重に進めます。

④準備した穴にインプラント体を埋め込み、初期の安定を確認します。

骨が足りない場合は、自家骨や人工骨で骨移植を行い、長持ちするようにします。

⑤最後に、歯肉を元に戻して縫います。治癒を助ける膜を使うこともあります。

手術時間は、インプラント1本で30分~1時間程度ですが、複数本や骨移植があると長くなります。

手術後は、骨とインプラントが結合する「オッセオインテグレーション」の期間(3~6ヶ月)が必要で、その間は仮の歯やブリッジで見た目と機能を保ちます。

⚫︎回復期間と二次手術の役割

インプラント手術後の回復期間は、治療全体の成功を左右する非常に重要なステップです。この期間中に、インプラント体が顎の骨と生物学的に結びつき、噛む力に耐えられるほどの強固な土台が形成されます。現代のインプラント治療では、通常、初回手術後に2次手術が行われることが前提となっており、この回復期間はその準備段階として欠かせません。

患者さんは定期的に歯科医院を訪れ、治癒の進み具合をチェックしてもらいます。たとえば、数週間おきに診察を受け、レントゲン撮影を通じてインプラントと骨の結合状態を確認します。この検査は、インプラントがしっかりと骨に定着しているか、問題なく治癒が進んでいるかを把握するために不可欠です。また、この期間中、患者さんには特別なケア方法が指導されます。具体的には、柔らかい毛の歯ブラシを使って優しく清掃したり、刺激の少ない洗浄液で口の中を清潔に保ったりすることで、感染や炎症を防ぎます。たとえば、硬いブラシで強く磨くとインプラント周囲を傷つける恐れがあるため、慎重なケアが求められるのです。

回復期間の長さは、患者さんの骨の質や全身の健康状態、使用するインプラントの種類によって異なりますが、一般的には3~6ヶ月程度が目安です。ただし、最近では表面処理技術が進んだインプラントが登場しており、たとえば親水性の高いコーティングや微細な凹凸が施されたものが使われることで、骨との結合が早まり、2~3ヶ月に短縮されるケースも増えています。この期間は、初回手術で埋めたインプラントが骨にしっかり馴染むための大切な時間であり、次のステップである2次手術に向けて準備を整える段階でもあります。

現代のインプラント治療では、2次手術がほぼ標準的なプロセスとして組み込まれています。初回手術では、インプラント体を歯肉の下に完全に埋めてしまい、そのまま治癒を待つのが一般的です。そして、回復期間が終わった後、2次手術でインプラントを露出させる作業が行われます。具体的には、歯肉を再度切開し、インプラントの上部を出し、治癒用のアバットメント(ヒーリングアバットメント)と呼ばれる小さな部品を取り付けます。このアバットメントは、歯肉を自然な形に整える役割を果たし、最終的な人工歯が美しくフィットするための土台を作ります。たとえば、前歯のように見た目が重要な部位では、歯肉のラインをきれいに整えることで、より自然な仕上がりを目指すのです。

2次手術は、通常、局所麻酔で行われ、初回手術に比べると規模が小さく、時間も短くて済みます。たとえば、30分程度で終わるケースが多く、患者さんの負担も比較的軽いのが特徴です。手術後は、歯肉が新しい形に落ち着くまで数週間(通常2~4週間)待つ必要があり、その間に患部が安定したら、最終的な人工歯の製作と装着へと進みます。この2次手術があることで、インプラントの位置や歯肉の状態をより精密に調整でき、見た目と機能の両方で優れた結果を得られるのです。

このように、回復期間と2次手術は、インプラント治療の成功に欠かせない一連の流れです。患者さんにとっては少し長いプロセスに感じるかもしれませんが、2次手術を前提としたこのステップが、最終的に自然で快適な歯を実現するための鍵を握っています。

インプラント治療の回復期間が終わり、2次手術が完了した後、いよいよ最終的な人工歯の製作と取り付けの段階に進みます。現代では、2次手術がほぼ必ず行われる前提で治療が進められるため、このステップはその後の仕上げとして非常に重要な位置を占めています。ここでは、患者さんの期待に応える見た目と機能を実現するために、最新の技術と細やかな調整が駆使されます。

⚫︎最終的な歯の製作と取り付け

まず最初に、精密な材料を使ってインプラントの位置や周囲の歯肉の形状を正確に記録します。この作業は「印象採取」と呼ばれ、柔らかいシリコンやゴムのような素材を口の中で固めて型を取るのが一般的です。たとえば、インプラントの上に小さなトレーを置き、その中に印象材を流し込んで固めることで、細かい部分まで正確に再現します。最近では、デジタル技術の進歩により、口腔内スキャナーを使って3Dデータとして記録するケースも増えてきました。この方法なら、患者さんの不快感が少なく、より精密なデータが得られるため、人工歯の設計に大いに役立ちます。

次に、上下の歯の噛み合わせを確認します。インプラントが入った状態で、自然で快適な噛み心地になるよう、上下の歯がどのように接触するかを慎重にチェックするのです。たとえば、ワックスや専用の器具を使って噛み合わせを記録し、それが最終的な歯の形に反映されます。このステップを怠ると、噛むときに違和感が出たり、インプラントに余計な力がかかったりする恐れがあるため、非常に重要な作業です。

その後、人工歯の色を決めます。患者さんの残っている歯の色や、希望する明るさ、自然さに合わせて、セラミックやジルコνιαの色見本を見ながら最適な色調を選びます。たとえば、隣の歯が少し黄ばんでいる場合、それに合わせた自然な色を選ぶことで、口全体が調和した印象になります。そして、仮歯を製作して実際に口に装着し、形や機能が問題ないかを試します。この仮歯は、患者さんが実際に使ってみて「もう少し高さを調整してほしい」「形を丸くしたい」といった感想を伝えるためのテスト段階でもあります。たとえば、仮歯を数日使って噛み心地や見た目を確認し、必要なら微調整を加えることで、最終的な歯の完成度を高めます。

これらのデータをもとに、歯科技工士が最終的な人工歯を製作します。素材には主にセラミックやジルコニアが使われ、これらは天然の歯に近い硬さと美しさを持ちながら、耐久性にも優れています。たとえば、セラミックは透明感があり、前歯のような審美性が求められる部位にぴったりですし、ジルコニアは強度が高いため、奥歯に適しています。技工士は、印象データやデジタルスキャンを基に、ミクロン単位で精密に歯を削り出し、患者さんの口に完璧に合う形を作り上げます。最近では、CAD/CAM技術が導入され、コンピュータで設計したデータを機械が自動で削り出すため、さらに正確で美しい仕上がりが可能になっています。

完成した人工歯は、インプラントに取り付けられます。このとき、アバットメント(2次手術で装着したもの)にネジで固定するか、セメントで接着するかを状況に応じて選びます。取り付け後、噛み合わせやフィット感を細かく調整します。たとえば、噛んだときに高すぎる部分があれば削ったり、他の歯とのバランスを見て微調整したりします。この作業は、患者さんが違和感なく自然に噛めるようになるまで丁寧に行われます。

最後に、レントゲン撮影でインプラントと人工歯の適合状態を確認します。これにより、内部で問題が起きていないか、骨との結合が維持されているかをチェックできます。さらに、患者さんに鏡を見てもらい、「見た目はどうか」「噛み心地に違和感はないか」を直接聞いて、満足度を確認します。たとえば、「もう少し白くしたい」「形が気になる」といった意見があれば、ここで最終的な修正を加えることも可能です。この段階では、見た目と機能の両方で患者さんの期待に応えることが目標です。2次手術を経て歯肉が整った状態だからこそ、自然で美しい仕上がりが実現します。最新技術を駆使し、歯科医師と技工士が連携して丁寧に作り上げることで、インプラント治療は最高の結果を迎えるのです。

インプラントの利点と欠点

⚫︎利点の詳細

自然な見た目と機能

インプラントは、その見た目が本物の歯とほとんど変わらないという点で、他の治療法とは一線を画しています。歯を失った後に感じる見た目の違和感や、周囲からの視線に対する不安を解消してくれるのです。人工の歯の根から丁寧に作られた歯冠までが一体となって機能するため、外見上、自分の歯と区別がつかないほどの自然さが実現します。たとえば、笑顔を見せるときや写真に写るときに、以前と同じように自信を持って振る舞えるのは、インプラントならではの魅力です。

また、噛む力についても非常に優れています。天然の歯に匹敵する、あるいは場合によってはそれを超えるほどの強さで、硬い食べ物でもしっかり噛み砕くことができます。たとえば、ステーキやナッツ、リンゴのような硬い果物でも、気にせず楽しめるのです。このしっかりした噛み心地は、食事を単なる栄養摂取ではなく、人生の楽しみのひとつとして味わうことを可能にします。

さらに、発音への影響がほとんどない点も大きな利点です。歯を失うと、空気が漏れて発音が不明瞭になることがありますが、インプラントは歯の根から再現するため、舌や唇の動きを自然にサポートします。たとえば、「サ行」や「タ行」の発音がクリアになり、会話中に相手に聞き返されることが減るでしょう。これにより、仕事でのプレゼンテーションや友人とのおしゃべりも、以前と同じようにスムーズに進められます。

このように、インプラントは見た目だけでなく、食事や会話といった日常生活のあらゆる場面で快適さを提供し、患者さんの生活の質を大きく引き上げてくれるのです。

耐久性

インプラントのもう一つの大きな魅力は、その耐久性にあります。正しいケアを続ければ、10年以上にわたって使い続けることができ、場合によっては一生涯にわたって機能し続けることも夢ではありません。この長持ちする理由は、使用される素材であるチタンの特性と、骨との強固な結びつきにあります。

チタンは、体に非常に馴染みやすい金属で、錆びたり劣化したりすることがほとんどありません。インプラント体がチタンで作られているため、口の中の湿った環境でも長期間安定して保たれるのです。さらに、インプラントが顎の骨としっかりと結合する「オッセオインテグレーション」という現象が、この耐久性を支えています。一度骨と一体化すれば、噛む力がかかっても動いたり外れたりする心配がほとんどありません。

たとえば、入れ歯のように何年かごとに作り直す必要がないため、長期的には手間やコストを抑えられる可能性もあります。研究によれば、適切に管理されたインプラントは15年後の残存率が90%を超えると報告されており、これは他の治療法と比べても非常に高い数字です。毎日の歯磨きや定期的な歯科検診を怠らなければ、インプラントはまるで自分の歯のように、長く頼りになる存在となるでしょう。

周囲の歯を守る

インプラントは、ブリッジとは異なり、周囲の健康な歯を削る必要がないという点でも優れています。ブリッジの場合、失った歯の両隣にある健康な歯を支えとして削り、そこに人工歯を固定します。この方法では、健康な歯の構造を犠牲にしなければならないため、将来的にその歯が弱くなったり、虫歯や歯周病のリスクが高まったりする可能性があります。

一方、インプラントは完全に独立した構造です。顎の骨に直接埋め込まれるため、隣の歯に一切負担をかけません。たとえば、前歯を1本失った場合でも、両側の歯をそのまま残し、インプラントだけで補うことができます。これにより、健康な歯を長く保ち、口全体のバランスを崩すことなく治療を終えられるのです。

また、口腔ケアの面でもメリットがあります。ブリッジでは、人工歯の下に食べかすがたまりやすく、清掃が難しい場合がありますが、インプラントは天然の歯と同じようにブラシやフロスでケアできるため、清潔を保ちやすいのも特徴です。このように、インプラントは周囲の歯に優しく、長期的な口腔の健康を守る助けとなります。

骨の維持

インプラントが他の治療法と大きく異なる点の一つに、顎の骨を維持する効果があります。歯を失うと、その部分の骨は噛む刺激を受けなくなり、徐々に痩せてしまう「骨吸収」という現象が起こります。この骨吸収が進むと、顔の輪郭が変化したり、残っている歯の位置がずれたりするリスクがあります。たとえば、下顎の歯をすべて失った場合、顎が細くなり、顔が老けて見えることもあるのです。

しかし、インプラントは人工の歯の根として機能し、噛むたびに骨に適度な刺激を与えます。この刺激が骨の密度を保ち、痩せるのを防いでくれるのです。たとえば、インプラントを入れて数年経っても、顎の形がほとんど変わらないという報告が多く、見た目の若々しさを維持する効果も期待できます。

さらに、将来別の歯を失った場合でも、骨がしっかり残っていれば追加のインプラント治療や他の歯科治療がしやすいという利点もあります。このように、インプラントは単に歯を補うだけでなく、口全体の健康と将来の選択肢を守る役割を果たしてくれるのです。

費用

⚫︎欠点の詳細

インプラント治療の最も大きな欠点の一つが、その費用です。1本あたり30万円から50万円程度かかることが一般的で、これは他の治療法と比べて非常に高額です。たとえば、ブリッジなら数万円から10万円程度で済むことが多いのに対し、インプラントはその数倍のコストがかかります。

この費用には、初診や検査、手術、インプラント自体の材料費、人工歯の製作費などが含まれます。さらに、骨の量が足りない場合に骨移植が必要になると、追加で10万円以上かかることもあります。日本では、健康保険が適用されるケースが一部の例外を除いてほとんどなく、基本的には全額自己負担となるため、経済的なハードルが高いと感じる人も多いでしょう。

たとえば、奥歯を2本失った場合、60万円から100万円近くかかる可能性があり、複数本となるとさらに大きな出費となります。このため、インプラントを希望しても、予算の都合で断念する患者さんも少なくありません。ただし、長持ちする点を考えると、長い目で見ればコストパフォーマンスが良い場合もあるため、一概に高いとは言えない側面もあります。それでも、初期投資としては大きな負担であることは間違いありません。

経済的な負担を軽くする意味で、デンタルローンの利用も検討する価値があるでしょう。

手術リスク

インプラントは手術を伴う治療であるため、さまざまなリスクが存在します。まず、感染症が挙げられます。手術中や術後に細菌が入り込むと、埋めた部分が腫れたり、痛みが出たりする可能性があります。滅菌を徹底していても、まれに起こることがあります。

次に、神経損傷のリスクがあります。下顎や上顎の神経に近い場所にインプラントを埋める際、誤って神経を傷つけてしまうと、唇や舌にしびれや痛みが生じることがあります。たとえば、下顎の奥歯を治療する場合、下歯槽神経を傷つけるリスクが懸念されます。

また、上顎の場合は上顎洞(鼻の横の空洞)を傷つける可能性もあります。これが起こると、副鼻腔炎のような症状が出ることがあり、治療が複雑になる場合も考えられます。さらに、手術中や術後の出血が予想以上に多い場合もあり、特に血が止まりにくい薬を飲んでいる人は注意が必要です。

まれですが、チタンに対するアレルギー反応も報告されています。腫れや赤みが出るケースで、他の素材(たとえばジルコニア)に変える必要が出てくることもあります。これらのリスクを減らすには、経験豊富な医師と最新の設備が必要で、患者さん自身も術後の指示を守ることが重要です。

治療期間

インプラント治療は、そのプロセスが長いことも欠点です。初診から最終的な歯の装着まで、数ヶ月から1年以上かかることも珍しくありません。たとえば、一般的な流れは、初診と診断で1~2週間、治療計画の立案でさらに1~2週間、手術が1日(複数本なら数日)、その後骨と結合する期間が3~6ヶ月、必要なら二次手術が1日、最後に人工歯の製作と装着で2~4週間というスケジュールです。

この期間は、患者さんの骨の状態や健康状態、治療する場所、骨移植の有無によって変わります。たとえば、骨が少ない場合には、骨移植のためにさらに3~6ヶ月追加されることもあります。この長期間にわたる治療は、患者さんの忍耐と協力が必要不可欠です。

治療中は仮の歯やブリッジを使うことが多いですが、見た目や機能に制限がある場合もあり、すぐに快適に噛みたい人にはストレスになるかもしれません。しかし、この慎重なプロセスが、長期的な安定と成功につながるため、必要な時間だと考えることもできます。

メンテナンス

インプラントは、天然の歯と同じように継続的なケアが必要です。毎日の歯磨きやフロスでの清掃が欠かせず、これを怠るとインプラント周囲炎というトラブルが起こるリスクがあります。この炎症は、骨を溶かしてしまい、最悪の場合はインプラントが抜け落ちることもあるのです。

たとえば、インプラント専用の歯間ブラシやフロスを使い、細かい部分まで丁寧に磨く必要があります。また、3~6ヶ月に1回の歯科検診で、専門家によるクリーニングを受けることも推奨されます。年に1度はレントゲンを撮り、骨の状態を確認するのも大切です。さらに、噛み合わせがずれないよう定期的にチェックし、必要なら調整します。生活習慣も重要で、喫煙や過度な飲酒はインプラントの寿命を縮める可能性があるため、控えるべきです。このように、インプラントは治療後も手間がかかり、患者さんの努力が求められるのです。

治療前後の準備とケア

⚫︎治療前の準備

全身管理

インプラント治療を成功させるためには、全身の健康状態を整えることが不可欠です。たとえば、糖尿病がある人は、血糖値がコントロールされていないと、傷の治りが遅れたり感染しやすくなったりします。HbA1c値(過去数ヶ月の血糖値の平均)を7.0%未満に保つことが理想的です。

骨粗しょう症も注意が必要です。骨密度が低いと、インプラントが安定しにくく、治療前に薬で骨を強くするなどの対策が必要になる場合があります。心臓病で抗凝固薬を飲んでいる人は、出血が止まりにくいリスクがあるため、主治医と相談して薬の調整を検討します。

自己免疫疾患でステロイドを使っている場合も、治癒が遅れる可能性があるため、医師と投薬プランを見直すことが大切です。これらの疾患は、インプラントの成功に直接影響するため、治療前にしっかり管理することが求められます。

生活習慣

生活習慣の見直しも重要です。喫煙は、治癒を遅らせ、インプラントの失敗リスクを高める大きな要因です。手術の少なくとも2週間前から禁煙し、できれば完全にやめるのが理想です。たとえば、タバコのニコチンが血管を収縮させ、血流を悪くするため、骨とインプラントの結合がうまくいかない場合があります。

アルコールも過度に摂取すると治癒を妨げるため、手術前後は控えめにすることが推奨されます。また、栄養バランスの取れた食事も大切で、タンパク質やビタミンC、Dを意識的に摂ることで、体の回復力を高められます。たとえば、魚や野菜、果物を積極的に食べる習慣をつけると良いでしょう。

口腔準備

口の中の状態を整えるのも必須です。歯周病がある場合、インプラントが失敗するリスクが高まるため、治療前に徹底的に治しておく必要があります。たとえば、歯茎の炎症や出血があるなら、クリーニングや薬で改善します。

虫歯も放置せず、手術前に治療を済ませます。口の中が清潔でないと、細菌がインプラント部分に感染する恐れがあるからです。さらに、普段の歯磨きやフロスの習慣を見直し、正しい方法を身につけることも大切です。歯科医師から指導を受け、実践することで、治療の準備が整います。

相談

治療を始める前には、歯科医師との詳細な相談が欠かせません。治療の具体的なステップや期間、期待できる結果と限界、リスク、費用、代替案(ブリッジや入れ歯など)をじっくり話し合います。たとえば、「どれくらい時間がかかるのか」「見た目はどこまで自然になるのか」「もし失敗したらどうなるのか」といった疑問を解消し、不安を取り除きます。

費用の支払い方法や、術後のケアについても確認し、現実的な計画を立てます。患者さんの希望と治療の現実が一致するよう、時間をかけて話し合うことで、納得した状態で治療に臨めるのです。

⚫︎術後のケア

直後

手術直後の24~48時間は、慎重なケアが必要です。まず、出血については、縫合によって自然に止まるのが一般的ですが、軽い滲み程度の出血が見られる場合があります。これは正常な範囲内で、通常は自然に収まります。ただし、出血が長時間続く場合や量が多い場合は、速やかに担当の歯科医師に連絡してください。

腫れや痛みが気になる場合、頬を軽く冷やすことで一時的に楽になることがありますが、過度な冷却は避けてください。冷やす場合は、氷嚢を直接長時間当てるのではなく、タオルで包んだものを短時間(5~10分程度)使用し、その後休憩を挟む程度に留めましょう。過剰に冷やすと血流が低下し、治癒が遅れる可能性があるためです。

頭を少し高くして休むことで、血流が安定し、腫れや不快感を軽減する効果が期待できます。安静を保ち、無理のない姿勢で過ごすことが回復を助けます。

食事は、熱いものや刺激物を避け、柔らかくて冷たいもの(スープやヨーグルト)を摂ります。ストローを使うと圧がかかり、出血が増える恐れがあるので使わないようにしましょう。

感染予防

感染を防ぐために、抗生物質を医師の指示通りに飲みます。たとえば、手術前後に5~7日分の処方が出ることが多いです。口腔衛生も重要で、手術当日は歯磨きを控えますが、翌日からは医師の指示に従い、慎重にケアを始めます。

塩水やクロルヘキシジン液でのうがいは、口の中を清潔に保ち、細菌の増殖を抑えます。たとえば、1日数回、食後に行うと効果的です。これで、インプラント部分の感染リスクを大幅に減らせます。

その後

術後数週間から数ヶ月は、長期的なケアが始まります。歯磨きは手術部位を避けつつ、他の部分を普段通り行い、医師の指示があれば特殊なブラシを使います。フロスはまだ控えめにし、様子を見ながら徐々に取り入れます。

定期的な検診で経過を確認し、異常があればすぐ報告します。たとえば、過度な痛みや腫れ、発熱は要注意です。この期間のケアが、インプラントの成功を左右するのです。

⚫︎長期的なケア

毎日のケア

インプラントを長持ちさせるには、毎日の丁寧なケアが欠かせません。歯ブラシはやわらかめにしてフッ素入りの歯磨き粉を使い、1日2~3回、インプラント周囲を特に慎重に磨きます。電動歯ブラシも効果的で、手動よりプラークをしっかり取れる場合があります。

フロスや歯間ブラシで、インプラントの隙間を清掃し、抗菌性のマウスウォッシュで細菌を減らします。舌の掃除も忘れず、口臭予防にもつながります。これを習慣化することで、インプラントを清潔に保てます。

何といってもインプラントで怖いのはインプラント周囲炎です。インプラントの周りに歯垢が付着して清掃状態が悪いと、歯垢の周りで口腔内細菌の活動が活発になり、歯ぐきに感染症を引き起こします。

この感染症は歯ぐきからどんどん奥に進み骨を溶かしてしまいます。

そうするとせっかくのインプラントが抜け落ちてしまいます。

毎日のケアを欠かさず長持ちさせて下さい。

検診

半年に1回の定期検診が推奨されますが、状況によっては3~4ヶ月ごとになることもあります。検診では、歯肉の状態やインプラントの安定性、噛み合わせをチェックし、専門家によるクリーニングで歯石や汚れを取ります。

年に1回はレントゲンを撮り、骨の状態を確認します。これで、問題を早期に発見し、簡単な治療で済ませられる可能性が高まります。医師からのアドバイスも受け、生活習慣を見直す良い機会です。

習慣

禁煙は必須で、タバコはインプラント周囲炎のリスクを高めます。食事はカルシウムやビタミンDを多く含むものを摂り、骨を強く保ちます。たとえば、牛乳や魚、緑黄色野菜が良い選択です。過度な飲酒も避け、口の乾燥を防ぎます。何か異常(痛みや腫れ、動揺)を感じたらすぐ医師に相談し、鏡で歯肉の変化をチェックする習慣も大切です。これで、インプラントを長く健康に保てるのです。

よくある質問と回答

⚫︎痛みは?

「インプラント治療は痛いですか?」とよく聞かれますが、手術中は局所麻酔を使うため、ほとんど痛みを感じません。麻酔が効いている間は不快感も少なく、患者さんの多くが「思ったより楽だった」と感想を述べます。ただし、麻酔の注射時に軽いチクッとした感覚がある場合もあります。

術後は多少の腫れや違和感が出ることがありますが、これは治癒の一部で、通常は数日から1週間で落ち着きます。たとえば、処方された鎮痛剤を飲んだり、氷で冷やしたり、軟らかい食事を取ることで楽になります。痛みが長引く場合は、医師に相談するのが賢明です。

⚫︎寿命は?

「インプラントはどれくらい持ちますか?」という質問も多いです。適切なケアを続ければ、10年以上使い続けられ、時には一生持つこともあります。たとえば、毎日の歯磨きや半年ごとの検診を欠かさず、喫煙を避ければ、非常に長持ちします。

寿命は、口腔ケアや生活習慣、全身の健康に左右されます。研究では、10年後の生存率が90~95%以上と高く、上部の人工歯は7~15年で交換が必要な場合もありますが、インプラント自体は非常に耐久性があります。

⚫︎食事は?

「手術後、いつ普通に食べられますか?」という疑問もよくあります。手術直後は24~48時間、液体や柔らかいもの(スープやプリン)に限り、1週間でマッシュポテトやパスタに移行します。2~4週間で少し固いものも試せ、2~3ヶ月でほぼ通常の食事が可能です。

ただし、回復速度は個人差や骨の状態、治療の複雑さで変わります。無理に硬いものを食べるとインプラントに負担がかかるので、医師の指示に従うことが大切です。

⚫︎病気でも?

「全身疾患があっても治療できますか?」と心配する人もいます。たとえば、糖尿病は血糖がコントロールされていれば(HbA1c 7.0%未満)、治療可能です。骨粗しょう症や心疾患も、医師と調整すれば対応でき、自己免疫疾患やがん治療歴も慎重な評価で可能になる場合があります。

重要なのは、主治医と歯科医師が連携し、リスクを把握することです。既往歴を伝え、検査や調整を済ませれば、多くの人がインプラントの恩恵を受けられます。

⚫︎ブリッジと?

「インプラントとブリッジの違いは?」という質問も多いです。インプラントは骨に埋め込む独立型で、隣の歯を削らず、10年以上持つことが多いです。ブリッジは隣の歯を削り、5~15年で交換が必要で、骨の刺激がないため痩せやすいです。インプラントは清掃が簡単で、ブリッジは下部が掃除しにくいです。治療期間はインプラントが長く、初期費用も高いですが、長期的なメリットを考えると価値があります。医師と相談し、状況に合う方を選びましょう。

リスクと副作用

⚫︎感染

インプラント治療では、感染がリスクの一つです。手術中や術後に細菌が入ると、腫れや痛み、熱が出ることがあります。たとえば、糖尿病や喫煙、不衛生な口内環境だとリスクが高まります。

予防には、術前の抗生物質(1時間前投与)、無菌環境での手術、術後5~7日の抗生物質、患者へのケア指導(うがいやブラシ使用)が効果的です。症状が出ればすぐ医師に連絡し、早期治療で対処できます。

⚫︎神経損傷

神経を傷つけるリスクもあり、特に下顎の奥歯や上顎前歯で注意が必要です。たとえば、下歯槽神経を傷つけると、唇や舌にしびれや痛みが出たり、味覚が変わったりします。

これを防ぐには、3D CTで神経の位置を確認し、サージカルガイドで精密に手術します。経験豊富な医師が短いインプラントを選ぶことも有効です。起きた場合、軽度なら自然回復、重度なら追加治療が必要です。

インプラントの失敗はまれ(成功率95%)ですが、骨不足、感染、過度な負荷、喫煙などが原因で起こります。たとえば、インプラントが動いたり、痛みが続く場合、骨吸収や炎症が疑われます。

⚫︎失敗

対応策は、除去、骨再生、再埋入、他の治療法(ブリッジなど)の検討です。適切な計画とケアでリスクは減らせます。

その他歯肉炎やインプラント周囲炎、歯肉退縮による見た目の問題、上顎洞のトラブル、チタンアレルギーなどもまれにあります。口腔衛生、早期発見、精密診断、適切な素材選択で、これらも管理可能です。

治療後の生活

⚫︎食事

インプラントが安定すればほとんどの食べ物を楽しめますが、硬いもの(ナッツやキャンディー)は注意が必要です。術後は柔らかい食事から始め、徐々に戻します。たとえば、熱いものや酸性の食品も初期は控え、栄養バランスを考えて水分を多めに摂ります。

⚫︎ケア

毎日の丁寧な清掃が必須です。柔らかい歯ブラシで3回磨き、歯間ブラシやフロス、水流式フロス、抗菌洗口液を使います。舌の掃除も忘れず、口全体を清潔に保ちます。

⚫︎検診

年2回の検診で、歯肉や安定性、噛み合わせをチェックし、クリーニングとレントゲンで状態を確認します。早期発見が重要で、医師のアドバイスを受けられます。

習慣喫煙は治癒を遅らせ、成功率を下げるので禁煙が理想です。過度な飲酒や激しい運動も控え、ストレス管理で免疫を保ちます。これでインプラントを長く使えます。

まとめ

インプラントは自然で長持ちする優れた治療ですが、高額でリスクもあり、ケアが欠かせません。医師と相談し、準備と習慣を整えれば、健康で自信ある生活が手に入ります。治療の知識を深め、自分に合う選択をすることで、笑顔と快適さが戻ってきます。インプラントは自然で長持ちする優れた治療ですが、高額でリスクもあり、ケアが欠かせません。医師と相談し、準備と習慣を整えれば、健康で自信ある生活が手に入ります。治療の知識を深め、自分に合う選択をすることで、笑顔と快適さが戻ってきます。

インプラントメーカーいろいろ

⚫︎アストラ、ノーベルバイオケア、ストローマン、オステム

インプラント治療の成功は、歯科医師の技術だけでなく、使用するインプラントの品質に大きく影響されます。世界には多くのインプラントメーカーが存在しますが、ここでは特に優れた4社――スウェーデンのアストラ(Astra Tech Implant System)、スウェーデン発祥で現在はスイスを拠点とするノーベルバイオケア(Nobel Biocare)、スイスのストローマン(Straumann)、そして韓国のオステム(Osstem)――を取り上げます。これらはそれぞれ独自の歴史と技術を持ち、世界中で広く採用されています。ここでは、各社の特徴や強み、世界シェアを解説し、どのメーカーがどのようなニーズに適しているのかを見ていきます。特に、アストラはその信頼性と設計で若干の優位性を持つ選択肢として注目されます。

⚫︎アストラ(Astra Tech Implant System)

概要と歴史: アストラテックはスウェーデンで生まれ、現在はアメリカのデンツプライシロナ社傘下にあるインプラントメーカーです。1996年に日本で認可を受けて以来、世界中で高い評価を得ており、ノーベルバイオケアやストローマンと並ぶ「世界三大インプラントメーカー」の一つとして知られています。

特徴:

骨との結合速度: アストラのインプラントは、表面を粗く加工する技術により、骨との結合(オッセオインテグレーション)が迅速で強固です。通常、他のインプラントが結合に6~12週間かかるのに対し、アストラはそれより短い期間で安定する傾向があります。

結合部の設計: インプラントとアバットメント(上部構造をつなぐ部品)の結合部に独自の「コニカルシールデザイン」を採用。これにより、ネジの緩みが少なく、細菌の侵入を防ぎ、長期間の安定性が期待できます。

骨吸収の抑制: 噛む力による負荷を適切に分散する設計で、骨の吸収を最小限に抑えます。これにより、インプラント周囲の骨の高さが維持され、審美性や機能性が長持ちします。

強み: 長期的な安定性と信頼性が際立ち、特に骨の状態が不安定な患者や、審美性を重視するケースに適しています。また、豊富な臨床データに裏打ちされた実績があり、学術的な検証も進んでいます。

世界シェア: 具体的な数値は公開されていませんが、ストローマンやノーベルバイオケアに次ぐシェアを持ち、特に欧米市場で高い支持を得ています。

適したニーズ: 長期使用を前提とした治療や、骨の状態が難しい症例での信頼性を求める患者に最適。

⚫︎ノーベルバイオケア(Nobel Biocare)

概要と歴史: スウェーデン発祥で、現在はスイスに拠点を置くノーベルバイオケアは、インプラントのパイオニアとして知られています。1965年にブローネマルク教授がチタン製インプラントを初めて臨床応用したことから始まり、60年以上の歴史を誇ります。

特徴:

インプラントの元祖: 世界初のインプラント治療を行ったメーカーであり、「オッセオインテグレーション」の概念を確立しました。40年以上使い続けられた症例も報告されています。

タイユナイト表面: 独自の表面加工「TiUnite」を施したインプラントは、骨との結合を促進し、早期の負荷にも対応可能。治療当日に仮歯を装着できるケースもあります。

豊富なラインナップ: インプラントの長さや太さのバリエーションが豊富で、骨が細い症例や全顎治療(All-on-4など)にも対応。柔軟性が非常に高いです。

強み: 長い歴史と実績に裏打ちされた信頼性、先進的な技術開発(例: サージカルガイドシステムやザイゴマインプラント)が特徴。審美性と機能性を両立させたい患者に支持されています。

世界シェア: 世界シェアで第2位(約20-25%程度と推定)とされ、ストローマンに次ぐ地位を確立。特に北米や欧州で広く採用されています。

適したニーズ: 審美性を重視する前歯部治療や、複雑な症例(骨量不足など)への対応を求める患者に適しています。

⚫︎ストローマン(Straumann)

概要と歴史: スイスのバーゼルに本社を置くストローマンは、50年以上の歴史を持つメーカーで、世界シェアNo.1を誇ります。国際的学術組織ITIとの連携により、科学的根拠に基づいた製品開発を行っています。

特徴:

SLActive表面: 独自の「SLActive」技術により、超親水性の表面を実現。骨との結合が通常6~8週間かかるところを3~4週間に短縮し、治療期間を大幅に削減します。

Roxolid素材: チタンとジルコニウムを組み合わせた高強度合金を採用。細いインプラントでも高い機械的強度を持ち、骨量が少ない症例にも適用可能です。

高い成功率: 10年間の臨床研究で成功率97%、生存率98.8%を記録。インプラント周囲炎の発生率も低いとされています。

強み: 世界トップシェアを支えるのは、迅速な骨結合と長期安定性。特に日本人のような骨幅が狭い患者にも適合しやすい小型インプラントが評価されています。

世界シェア: 約25-30%と推定され、世界70カ国以上で1300万本以上が使用されています。日本でも多くの歯科医院が採用。

適したニーズ: 治療期間を短縮したい患者や、骨量が少ないケースでの安全性と耐久性を重視する患者に最適。

⚫︎オステム(Osstem)

概要と歴史: 韓国のメーカーで、1997年に設立され、アジア市場を中心に急速に成長。世界シェアでは第6位(約5-10%程度)ですが、アジアではトップクラスのシェアを誇ります。

特徴:

アジア人に最適化: アジア人の骨格(顎が小さく骨量が少ない傾向)を考慮した設計。特に「ワイド&ショート」インプラントは、骨造成手術を回避しやすくします。

SA表面: 優れた表面性状「SA surface」を採用し、初期固定が容易で骨との結合がスムーズ。ストローマンのSLA技術に似た特性を持ちます。

コストパフォーマンス: 高品質ながら価格が抑えられており、他のトップメーカーと比較して手頃です。

強み: アジア人の体型に合わせた設計と、リーズナブルな価格で高品質を実現。特に韓国や日本での臨床実績が豊富で、信頼性も向上しています。

世界シェア: グローバルでは6位ですが、アジア市場ではシェアNo.1。特にコスト意識の高い地域で支持されています。

適したニーズ: 予算を抑えつつ高品質なインプラントを求める患者や、アジア人の骨格に適した治療を希望する患者に適しています。

比較と結論

信頼性と歴史: ノーベルバイオケアが最長の歴史を持ち、アストラとストローマンも長期データで信頼性を証明。オステムは歴史が浅いものの急速に評価を上げています。

治療期間: ストローマンのSLActiveが最も早く、アストラとノーベルバイオケアも優れる。オステムは標準的。

コスト: オステムが最も手頃で、ストローマン、ノーベルバイオケア、アストラは高価格帯。

世界シェア: ストローマン(1位)、ノーベルバイオケア(2位)、アストラ(3位クラス)、オステム(6位)。

アストラは信頼性と設計のバランスで若干優位性を持ちますが、ニーズ次第で選択肢が変わります。治療期間を重視するならストローマン、歴史と柔軟性を求めるならノーベルバイオケア、コストを抑えたいならオステムが候補に挙がります。最終的には、患者の骨状態や予算、歯科医師の意見を基に選ぶのが賢明です。

12.最後に当院ではアストラを使用しているので、アストラの臨床データをご紹介します。

スウェーデンで開発され、世界中で広く使用されています。特にその長期的な成功率や骨との結合性能に関するデータが豊富で、学術的な裏付けが強みとなっています。

アストラの臨床データ概要

1. 成功率と生存率

長期データ: アストラのインプラントは、10年以上の追跡研究で高い成功率を示しています。例えば、1990年代から2000年代初頭に実施された複数の臨床研究では、**インプラント生存率が95~98%**に達すると報告されています。これは、インプラントが抜け落ちたり機能しなくなったりせず、口腔内で維持されている割合を示します。

成功率: 単なる生存だけでなく、審美性や機能性が維持された状態での成功率も高く、**約94~97%**とされています。これは、インプラント周囲炎や骨吸収が少ないことを裏付けています。

具体例: 2011年の研究(Berglundh et al.)では、10年間の追跡でアストラインプラントの生存率が97.7%であり、インプラント周囲の骨喪失が平均0.3mm未満であることが確認されました。

2. 骨との結合(オッセオインテグレーション)

結合速度: アストラの特徴である「OsseoSpeed」表面加工技術(フッ化水素で処理されたチタン表面)は、骨との結合を促進します。臨床研究では、通常のインプラントが6~12週間で安定するのに対し、アストラは4~6週間で十分な初期安定性を得られると報告されています。

初期固定力: インプラント埋入直後のトルク値(初期固定力)が平均35Ncm以上で、早期負荷(即時仮歯装着)にも対応可能であることが示されています(例: Norton, 2013)。

科学的根拠: OsseoSpeed表面は、骨細胞の付着を高め、骨形成を促進するマイクロ構造が特徴。これにより、特に骨質が軟らかい患者でも高い成功率が得られています。

3. 骨吸収の抑制

骨レベルの維持: アストラの「コニカルシールデザイン」(インプラントとアバットメントの密閉性の高い結合部)は、噛む力による負荷を分散し、骨吸収を最小限に抑えます。臨床データでは、10年間で平均骨喪失量が0.3~0.5mm程度と、他のメーカー(例: 平均1mm前後)と比べて少ない傾向があります。

研究例: 2008年の論文(Pjetursson et al.)では、アストラインプラントを使用した症例の5年間の骨喪失が平均0.24mmであり、審美性や長期安定性に寄与すると評価されています。

4. インプラント周囲炎の発生率

低い炎症リスク: コニカルシールデザインにより、結合部への細菌侵入が抑えられ、インプラント周囲炎の発生率が低いことが報告されています。10年間の追跡研究で、インプラント周囲炎の発症率は**約2~5%**と、他のシステム(5~10%程度)と比較して低い水準です。

データ例: 2017年のメタアナリシス(Derks et al.)では、アストラを含むプレミアムインプラントシステムは、インプラント周囲炎のリスクが低減される傾向にあると結論づけられています。

5. 臨床応用の多様性

症例数: アストラは世界中で数百万本以上が埋入されており、症例データが豊富です。特に、骨量が少ない症例や即時埋入(抜歯直後のインプラント埋入)でも高い成功率が確認されています。

即時負荷のデータ: 特定の条件下で即時負荷を行った場合、**成功率が92~95%**と報告されており、早期回復を求める患者にも適応可能(例: Glauser et al., 2007)。

6. 患者満足度と審美性

審美的成果: 前歯部への適用でも、骨吸収が少ないため歯肉ラインが安定しやすく、審美的な満足度が高いとされています。患者ベースの調査では、90%以上の患者が機能性と見た目に満足と回答(デンツプライシロナの公式資料より)。

具体例: 2015年の研究(Cooper et al.)では、アストラを使用した前歯インプラントの審美スコア(PES/WES)が平均13.5/14と高評価でした。

主な臨床研究と出典

以下は、アストラの臨床データを裏付ける代表的な研究です:

Berglundh, T. et al. (2011): 「10年間のインプラント生存率と骨維持に関する研究」 - 生存率97.7%、骨喪失0.3mm未満。

Pjetursson, B. E. et al. (2008): 「5年間の骨レベル変化」 - 平均骨喪失0.24mm。

Norton, M. R. (2013): 「OsseoSpeed表面の初期安定性」 - 4週間での骨結合を確認。

Derks, J. et al. (2017): 「インプラント周囲炎のメタアナリシス」 - アストラの低リスクを指摘。

Glauser, R. et al. (2007): 「即時負荷の臨床結果」 - 成功率92%以上。

まとめ

アストラの臨床データは、高い生存率(95~98%)、迅速な骨結合(4~6週間)、骨吸収の抑制(0.3~0.5mm/10年)、低いインプラント周囲炎リスク(2~5%)を特徴とし、他のトップメーカー(ストローマンやノーベルバイオケア)と比較しても遜色ない結果を示しています。特に、長期的な安定性と審美性を求める症例で強みを発揮し、科学的根拠に基づく信頼性が評価されています。

歯周病と全身疾患

-歯科医院でのメインテナンスが命を守る鍵に-

歯周病とは何か?

歯周病は、歯茎が腫れたり、痛みが出たり、出血などの症状を伴い、歯を支える歯茎(歯肉)や骨に炎症を引き起こす慢性的な疾患で、歯垢(プラーク)と呼ばれる細菌の塊が主な原因です。この病気は、軽度の「歯肉炎」から始まり、進行すると「歯周炎」となり、歯がグラついたり抜けたりする深刻な状態に発展します。日本では、成人の約80%が何らかの歯周病の兆候を持っているとされ、非常に身近な健康問題です。
歯肉炎の段階では、歯茎が赤く腫れ、歯磨き時に出血することが特徴です。歯周炎に進行すると、歯茎が下がって歯が長く見えたり、口臭が強くなったり、さらには歯を支える骨が溶けてしまいます。この段階では自覚症状が少ない「サイレントディジーズ(沈黙の病気)」とも呼ばれ、気づいた時には手遅れになることもあります。
しかし、歯周病の影響は口の中だけに留まりません。近年、歯周病が全身疾患と深く関わっていることが科学的に明らかになり、心臓、血糖、呼吸器、妊娠など、命に関わる健康リスクと結びついています。この事実を踏まえると、歯周病の治療と予防、特に歯科医院での定期的なメインテナンスがどれほど重要かがわかります。

歯周病の原因と進行のメカニズム

歯周病を引き起こす原因は多岐にわたりますが、主に次の要素が関与しています。  

歯垢と歯石: 歯磨きが不十分だと、歯垢が歯や歯茎の間に溜まり、細菌が繁殖します。この歯垢が硬化した歯石は自宅では除去できず、炎症を悪化させます。  

生活習慣: 喫煙は歯茎の血流を悪化させ、免疫力を低下させるため、歯周病のリスクを2~6倍に高めます。過度な飲酒や栄養不足(特にビタミンCやDの欠乏)も同様です。  

全身疾患: 糖尿病、ホルモンの乱れ(妊娠や更年期)、免疫系の病気は歯周病を進行させます。  

遺伝的要因: 家族に歯周病が多い場合、遺伝的にリスクが高い傾向があります。  

不適切な口腔ケア: 歯ブラシの使い方が悪い、フロスや歯間ブラシを怠ると、細菌が蓄積しやすくなります。歯周病は、細菌が歯茎に炎症を起こし、その炎症が歯周ポケット(歯と歯茎の隙間)を深くすることで進行します。深くなったポケットで細菌がさらに繁殖し、骨を溶かす毒素を放出。この悪循環が全身に影響を及ぼすきっかけとなるのです。

歯周病が全身疾患に与える深刻な影響

歯周病は口の中の病気にとどまらず、全身に波及するリスクが明らかになっています。

歯周病細菌は最初は食後に残った食べかすを栄養に繁殖していきます。しかし時間の経過とともに歯茎の中の毛細血管に流れる血液を狙い、豊富な栄養源を手に入れるために歯肉に炎症を引き起こし、歯周組織を破壊し、血管壁を壊し血液に到達します。その後、歯周病細菌が血流を通じて各臓器に運ばれ、臓器内で発見されるという研究データが多く発表され、その深刻さを裏付けています。

以下に主要な影響を詳しく見ていきます。

3.1 心疾患との関連:歯周病細菌が心臓で発見される

歯周病と心疾患の関連は、多くの研究で確認されています。たとえば、2018年の『Journal of Periodontology』に掲載された研究では、歯周病患者の心臓組織や動脈硬化のプラークから、ポルフィロモナス・ジンジバリス(歯周病の主要な原因菌)が検出されました。この細菌は、血流に乗って心臓に到達し、血管内で炎症を起こし、動脈硬化や心筋梗塞のリスクを高めると考えられています。

別の研究(『Circulation』2016年)では、歯周病患者の心疾患リスクが1.5~2倍に上昇し、重度の歯周病ではそのリスクがさらに顕著であると報告されています。歯周病細菌が心臓弁や冠動脈で発見されるケースもあり、口の中の健康が心臓の命運を握っていると言えるでしょう。

3.2 糖尿病との双方向の関係

歯周病と糖尿病は互いに悪影響を及ぼす双方向の関係にあります。糖尿病患者は血糖コントロールが不良だと歯茎の免疫力が低下し、歯周病が進行しやすくなります。一方、歯周病の炎症はインスリン抵抗性を高め、血糖値を悪化させます。

『Diabetes Care』(2013年)の研究では、歯周病治療を受けた糖尿病患者のHbA1c(血糖値の指標)が平均0.4~1%改善したと報告されています。さらに、歯周病細菌が膵臓や肝臓で検出されたケースもあり、全身の代謝に影響を与えている可能性が示唆されています。

3.3 妊娠合併症と歯周病

妊婦の歯周病は、早産や低体重児出産のリスクを2~7倍に高めるとされます。『American Journal of Obstetrics and Gynecology』(2006年)によると、歯周病菌が胎盤や羊水中で発見され、子宮内感染を引き起こす可能性が指摘されています。この細菌が血流を通じて胎児に影響を与え、早産を誘発するのです。妊娠中の口腔ケアが母子の健康に直結する重要な例です。

3.4 肺炎と高齢者のリスク

高齢者では、歯周病菌が誤嚥性肺炎の原因となることがあります。『Journal of Dental Research』(2014年)の研究では、歯周病患者の肺組織から歯周病関連細菌が検出され、誤嚥による肺炎リスクが3倍以上高いとされました。特に、口腔ケアが不十分な場合、細菌が気道に入り込み、命に関わる感染症を引き起こします。

3.5 その他の疾患との関連

歯周病は関節リウマチやアルツハイマー病とも関連が指摘されています。たとえば、2019年の『Science Advances』の研究では、歯周病菌ポルフィロモナス・ジンジバリスがアルツハイマー患者の脳内で検出され、認知症の進行に関与する可能性が示唆されました。また、リウマチ患者の関節液からも同様の細菌が見つかっています。これらのデータから、歯周病が単なる口の病気ではなく、全身の炎症を誘発し、複数の臓器で細菌が発見される「全身性のリスク因子」であることがわかります。

歯周病治療のプロセス

歯周病が全身疾患にこれほど影響を与える以上、適切な治療が不可欠です。治療は進行度に応じて次のように行われます。

4.1 初期治療:スケーリングとルートプレーニング

軽度の場合、歯科医院で「スケーリング」(歯石除去)と「ルートプレーニング」(歯根の清掃)が行われます。これにより、歯垢や歯石が取り除かれ、炎症が抑えられます。通常、数回に分けて行われ、正しい歯磨きの仕方も指導されます。

4.2 進行した場合:外科的治療

中度~重度の歯周炎では、外科的治療が必要な場合があります。  

フラップ手術: 歯茎を切開し、深い歯石や感染組織を除去。  

骨再生療法: 溶けた骨を再生するGTR法やエムドゲインを使用。

これらは局所麻酔で実施され、回復には数週間かかります。

4.3 全身疾患との連携治療

糖尿病や心疾患が関与する場合、内科医と連携し、血糖管理や禁煙指導が並行して行われます。歯周病治療が全身の炎症を軽減し、疾患の改善に寄与することが期待されます。さらに、近年の研究により、歯周病細菌(特にPorphyromonas gingivalisやAggregatibacter actinomycetemcomitansなど)が歯肉の炎症部位から血液に乗って全身に運ばれ、血管壁に付着することで炎症を引き起こすことが明らかになっています。たとえば、2005年の米国心臓協会(AHA)の報告では、歯周病患者の動脈硬化性プラークから歯周病細菌のDNAが検出され、これが血管内皮の炎症やアテローム形成を促進する可能性が示唆されました。また、2012年のJournal of Clinical Periodontologyに掲載された研究(Tonetti et al.)では、歯周病治療を受けた患者群で血中の炎症マーカー(CRPやIL-6)が有意に低下し、心血管リスクが改善したことが報告されています。このメカニズムは、歯周病が心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患リスクを1.5~2倍に高めるとする疫学データ(例: Humphrey et al., 2008, American Journal of Preventive Medicine)とも一致します。このため、歯周病の管理は単なる口腔内の治療にとどまらず、全身の炎症性疾患の予防や管理において重要な役割を果たします。特に糖尿病患者では、歯周病が血糖コントロールを悪化させる双方向の関係が確認されており(例えば、Diabetes Care 2018年のメタアナリシスでHbA1cが平均0.4%改善)、連携治療の効果がより顕著に現れることが期待されます。こうした科学的根拠に基づき、歯周病治療は全身健康の向上に寄与する包括的なアプローチとして位置づけられています。

歯科医院でのメインテナンスがなぜ重要か

治療後の歯周病は再発しやすく、全身疾患への影響を防ぐには、歯科医院での定期メインテナンスが不可欠です。

5.1 メインテナンスの内容と頻度

頻度: 一般的に3~6ヶ月に1回、リスクが高い場合は1~2ヶ月ごと。 

内容: 歯垢・歯石の除去、歯茎の健康チェック、レントゲンによる骨の状態確認。  

効果: 再発を防ぎ、全身疾患リスクを低減。たとえば、定期クリーニングで心疾患リスクが約30%低下したとのデータ(『American Heart Journal』2011年)もあります。

自宅でのケアでは歯石や深いポケットの細菌を完全に除去できないため、専門家の介入が必須です。

5.2 全身疾患予防への貢献

メインテナンスは、歯周病菌が血流に乗って心臓や肺、脳に到達するのを防ぎます。研究で臓器内で検出された細菌は、口腔内の管理不足が原因とされており、定期的なクリーニングがそのリスクを大幅に減らします。たとえば、肺炎予防では、半年ごとのメインテナンスで入院リスクが半減した例も報告されています。

5.3 患者の意識と継続の重要性メインテナンスは一度で終わるものではなく、継続が鍵です。歯周病の再発は気づきにくいため、定期的に歯科医院でチェックを受けることで、早期発見・早期対処が可能になります。これが全身の健康を守る基盤となります。

自宅でのケアと歯科医院の連携

メインテナンスの効果を最大化するには、自宅でのケアも重要です。  

歯磨き: 1日2~3回、2分以上、歯と歯茎の境目を45度で丁寧に。  

フロス・歯間ブラシ: 歯間の歯垢を除去。  

生活習慣: 禁煙、野菜や果物を多めに摂り、ストレス管理。

しかし、自宅ケアだけでは不十分。歯科医院でのプロフェッショナルなクリーニングが、全身疾患を防ぐ最終防衛線です。

メインテナンスで歯周病と全身疾患を管理する

歯周病は、歯を失うだけでなく、心疾患、糖尿病、妊娠合併症、肺炎、認知症など、全身疾患に深刻な影響を与える病気です。研究で歯周病細菌が心臓、肺、脳、胎盤で発見されている事実は、その危険性を物語ります。歯科医院での治療で進行を止め、3~6ヶ月に1回のメインテナンスで再発を防ぐことが、口と体の健康を守る最善策です。「歯茎が腫れる」「出血する」などのサインを見逃さず、早めに受診を。そして、定期的なメインテナンスを習慣化してください。歯周病を管理することは、歯の健康だけでなく全身疾患を予防し、命を守るための大きな一歩です。

虫歯治療について

虫歯はズキズキ痛みが出始めたら緊急事態です。

痛みが出るということは神経が感染を起こし始めた証拠です。ズキズキ痛みが出始める前のしみるくらいの状態のうちに歯医者に行きましょう。

和光で虫歯治療をするなら歯科タケダクリニックへご相談下さい。

放置すると神経を抜くことになり、神経を抜いた歯は枯れ木のようにもろくなっていき、いずれは抜くことになります。虫歯(う蝕)は、口腔内の細菌が糖を代謝して酸を生成し、その酸が歯の表面の硬いエナメル質を溶かすことで始まる病気です。歯の内側は象牙質と呼ばれる柔らかい部分になるため、細菌が侵入すると一気に虫歯が進行し神経まで到達します。放置すると歯の痛み、感染症、さらには歯の喪失につながる可能性があるため、早期の対処が不可欠です。この記事では、虫歯の進行段階、治療法、費用、予防策などを詳しく掘り下げて解説します。

虫歯の進行段階

虫歯は進行度合いによって4つのステージ(C1~C4)に分類されます。

C3以上になると自発痛が出てきます。

自発通が出始めると神経が細菌感染を起こしてしまった可能性が高く、治療方法としては神経を取り除くしか方法がなくなります。

くれぐれも痛みがでる前に治療をすることが重要です。

  1. C1(初期虫歯) まったく痛くない
    • 特徴: 歯の最外層であるエナメル質に小さな白濁や黒ずみが生じる。まだ穴は開いていない。
    • 症状: 痛みやしみる感覚はほぼなく、見た目で気づくことが多い。
    • 進行速度: 比較的ゆっくりで、適切なケアで進行を止められる可能性がある。
  2. C2(象牙質虫歯) ちょっと染みる程度
    • 特徴: 虫歯がエナメル質を突破し、その下の象牙質に到達。穴が開き始める。
    • 症状: 冷たいもの、甘いもの、酸っぱいものに反応してしみたり、軽い痛みを感じる場合がある。
    • 進行速度: 象牙質はエナメル質より柔らかいため、進行が早まる。
  3. C3(神経まで達した虫歯) 痛い~激痛
    • 特徴: 虫歯が歯髄(神経や血管が集まる部分)に到達。炎症や感染を引き起こす。
    • 症状: ズキズキとした強い痛み、熱いものへの敏感さ、噛むときの不快感。放置すると歯髄炎や根尖性歯周炎に発展。
    • 進行速度: 急速に悪化し、全身への影響(発熱や腫れ)も出る可能性がある。
  4. C4(歯根のみ残った状態) 激痛~神経の死滅
    • 特徴: 歯冠がほぼ崩壊し、根だけが残る。歯髄が死に、歯根に膿が溜まることも。
    • 症状: 痛みが消失する場合もあるが、歯茎の腫れや膿の排出が起こる。

進行速度: 歯の修復がほぼ不可能な状態に到達。

虫歯治療の主な方法

虫歯の治療法は進行度や患者の希望、歯の状態によって異なります。以下に、各段階ごとの詳細な治療法を説明します。(保険診療)

  1. フッ素塗布や再石灰化(C1の場合)
    • 内容: 高濃度のフッ素を歯に塗布し、エナメル質の再石灰化を促す。削る必要がない非侵襲的治療。
    • 使用場面: 初期虫歯で穴が開いていない場合に適用。
    • メリット: 歯を削らずに済む、自然治癒を期待できる。
    • デメリット: 進行が進むと効果が薄れるため、定期的な経過観察が必要。
  2. 詰め物(コンポジットレジンやインレー)(C2の場合)
    • コンポジットレジン:
      • プラスチック樹脂を虫歯を削った部分に直接詰める方法。
      • メリット: 1回の通院で済む、色が自然で目立たない。
      • デメリット: 大きな虫歯には不向き、耐久性がやや劣る。
    • インレー:
      • 金属(金や銀)やセラミックで作られた詰め物を歯にはめる。
      • メリット: 耐久性が高く、噛む力が強い奥歯に適している。
      • デメリット: 型取りが必要で2回以上の通院を要する。
    • 手順: 虫歯をドリルで除去後、歯の形に合わせて詰め物を装着。
  3. 根管治療(C3の場合)
    • 内容: 感染した歯髄を取り除き、根管内を洗浄・消毒後、薬剤で封鎖する。その後、クラウン(被せ物)で補強。
    • 手順:
    • ❶歯に穴を開け、歯髄を取り除く。
    • ❷根管をファイルで清掃し、消毒薬で洗浄。
    • ❸ガッタパーチャ(ゴム状の材料)で根管を充填。(神経を取り除いた隙間を埋めていきます。)
    • ❹土台を立ててクラウンを被せる。

メリット: 歯を残せる可能性がある。

デメリット: 治療期間が長く(2~5回程度)、費用も高め。

  1. 抜歯(C4の場合)
    • 内容: 修復不可能な歯を抜き、その後の治療(ブリッジ、インプラント、入れ歯)を検討。
    • 手順: 麻酔後、鉗子で歯を抜き、必要に応じて縫合。
    • メリット: 感染の拡大を防げる。

デメリット: 歯を抜いた後、骨が瘦せていく。隣の歯が傾いてくる可能性がある。

治療の流れ

1.診察と診断

歯科医師が視診、レントゲン撮影、プロービング(歯の表面を調べる)で虫歯の深さや範囲を確認。

レーザー診断機器を使う医院も増えている。

2.麻酔

局所麻酔(注射)で治療中の痛みを軽減。表面麻酔を併用して注射の痛みを和らげる場合も。

3.虫歯の除去

高速ドリルやレーザー、エアアブレージョン(微粒子を吹き付ける方法)で虫歯を削る。

削る範囲は最小限に抑え、健全な歯質を残すよう配慮。

4.修復

詰め物や被せ物を装着し、噛み合わせを調整。

5.アフターケア

再発防止の指導(歯磨き方法、フロスの使用)、次回の検診日程を提案。

治療にかかる費用と時間

保険適用(日本での目安、2025年3月時点)

C1: フッ素塗布は数百円~1,000円程度。

C2: コンポジットレジンで1,500~3,000円、インレーで3,000~5,000円。

C3: 根管治療で5,000~10,000円+クラウン代(3,000~5,000円)。

C4: 抜歯で1,000~2,000円。

自由診療(世論の金額高騰に伴い変わっていきます。下記は目安にして下さい。)

セラミックインレー: 3万~8万円。

セラミッククラウン: 8万~15万円。

インプラント: 30万~50万円/本。

時間

C1: 15~30分(1回)。

C2: 30分~1時間(1~2回)。

C3: 1時間/回で2~5回。

C4: 30分~1時間(抜歯のみなら1回)。

虫歯治療の注意点

・痛みがなくても放置しない: 神経が死ぬと痛みが消える場合があるが、内部で感染が進行。

・治療後のケアが重要: 詰め物の隙間から再発する「二次う蝕」に注意。毎日の歯磨きとフロスが必須。

・歯科医選び: 最新設備や丁寧な説明をする医院を選ぶ。口コミや初診時の印象で判断。

虫歯予防のポイント

・正しい歯磨き: 朝晩2回、2~3分かけて磨く。フッ素濃度1,000~1,500ppmの歯磨き粉が効果的。

・食生活の改善: 砂糖入り飲料やお菓子を減らし、食後は30分以内に歯磨きか水で口をすすぐ。

・補助ツール: デンタルフロスや歯間ブラシで歯間の汚れを除去。

・定期検診: 6ヶ月に1回、クリーニングとチェックを受ける。

虫歯は早期発見と治療で歯を長く保つことが可能です。痛みがなくても定期的に歯科医院を訪れ、日々のケアを怠らないことが、健康な口腔環境への第一歩です。もし虫歯治療について疑問があれば、ぜひ専門家に相談してみてください。

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竹田 直樹

「和光市駅」南口から徒歩1分の歯科
歯科医師多数在籍。
保険診療をメインに幅広い治療を提供します。

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③医院間でカルテの連携をしているため、引っ越しがあっても歯科タケダの関連施設ならどこでも転院が可能。
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⑤各専門分野のプロフェッショナルである口腔外科学会、矯正歯科学会、歯周病学会の指導医や認定医が40名在籍している。
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矯正
矯正について

生まれつき歯並びがきれいな人なら考えたことは無いかもしれませんが、だれにも多 少の歯並びのがたつきはあるものです。 女優さんや俳優さんがニコっと笑った時、口もとから覗く白くきれいな歯並びにあこ がれて、一度は矯正治療について考えたことがある人は多いはず。 歯並びを綺麗にしたいと思った時に最初に浮かぶ方法は、歯の矯正治療でしょう。
「矯正治療を受けてみたい」と考えてみても良くわからないことが多い人のために、 わかりやすく詳しく矯正治療についてまとめてみます。
そもそもなぜ歯並びがキレイな人とそうでない人がいるのでしょうか? その違いは何なのでしょうか?
歯がきれいに並ぶか並ばないかは、幼児期の口腔内の発育環境が大きく影響を及ぼし ていることが多いとされています。
一般的に歯並びが悪くなる理由としては、あごの発育不全と生活習慣の悪癖が大きく 関係します。 人間の歯の成長プロセスは複雑ですが、歯ができる順番としては歯の頭が出来上がっ て、その後に歯の根っこが作られ位置決めがされます。乳歯から永久歯に切り替わり 永久歯に生え変わると、上下で歯が当たるところまで適度に成長し、ある程度の咬合 状態が確立したところで成長が止まります。 その後、歯の根っこがしっかり伸びて骨に固定されます。
このように、歯が出来上がる順番としてまず歯の頭が最初にできるため、歯の頭がキ レイに並ぶスペースが確保できていないと、この時点でガタガタになり、その状態が ベースになり歯が生え変わるため、永久歯に生え変わってもガタガタが修正されるこ とはほとんどありません。
人間は機械ではありませんから、あごの発育状況によって歯並びに個人差が生まれて しまうのは仕方がないことと言えます。
歯はもともと、生えることと、ある程度咬み合わせられるところでなんとなくかみ合っ ているというのが実際のところです。
さて、本題の矯正治療とはどういう治療なのか。 歯の矯正は人間が本来持っている生理現象を利用して行う治療方法です。
どういう生理現象を利用しているかというと、
人間の歯が生えている歯槽骨という顎の骨は、力がかかると、力がかかった部分の骨が 分解されます。その反対側の骨は骨と歯の根の間にスペースができることで、骨が作られ ます。(リモデリング)
これをゆっくり繰り返していくことで歯が移動するという仕組みです。 人間の体ってすごいですね!!
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ワイヤー矯正でもマウスピース矯正でも、この生理現象を利用して歯を動かします。 ゆっくり時間をかけて力をかけ続けて動かしたい位置まで動かしていきます。 かける力が強すぎても、弱すぎてもうまく動きません。
一般的に矯正治療は、歯を動かしている時間だけが矯正治療のように思われがちですが、 実は歯を動かし終わってからの固定時間もかなり大切です。 骨の吸収と再生を繰り返して動かされた歯は、動かし終わってもその土台となる骨が完成 していない状態と言えるでしょう。 放置すると骨が柔らかいため、後戻りしてしまう確率が高いです。 そのため歯を動かし終わったら、ワイヤーやマウスピースを使用して顎の位置と歯の位置 を固定する、保定という期間が必要となります。
保定期間は通常2年程度です。 ワイヤーでの保定であればそのまま装着し続けなければいけませんし、マウスピースでの 保定の場合でも、寝ている間は必ず、日中でもできるだけ長く保定用のマウスピースを付 け続けないと後戻りしてしまいます。
矯正期間が長くなるのは保定期間も入っているからですね。

矯正の種類

矯正治療は大きく分けて2種類、ワイヤー矯正とマウスピース矯正があります。 ワイヤー矯正は昔から見られる矯正方法で、歯にブラケットと言われるワイヤーを通 す器具を接着し、ワイヤーが元に戻ろうとする力を利用して歯に力をかけて動かして いきます。 以前は、ワイヤーもブラケットも金属で銀色のものばかりでしたが、今はセラミック でできたブラケットや白い色のワイヤーも作られており、笑った時に金属が目立つと いうことがかなり少なくなってきました。

ワイヤー矯正だとさらに歯の唇側に装置を付けるのか、歯の舌側に装置を付けるのか の2通りの方法があります。 どちらもブラケットを装着してそこにワイヤーを通すということに変わりはありませ んが、舌側の方が見えにくいという利点はあります。 ワイヤー矯正の場合は、ワイヤーの弾性力(元に戻ろうとする力)を受けるため、調 整した後にやや強い痛みが伴います。調整後、大体 1 日程で痛みは軽減するので、日 常生活に支障をきたし続けるわけではありません。

マウスピース矯正は比較的新しい矯正治療の方法で、現在では有名なインビザライン が先駆けと言えます。
急速に普及してきたデジタルスキャナーを使い、歯の3D データを撮影し、3D デー タをパソコンに取り込みます。 パソコンに取り込んだ歯のデータをソフト上で少しずつ動かし、動かした歯の模型を 3D プリンターで印刷、その模型でマウスピースのシートを造形し、カットして完成 します。 マウスピース矯正では、マウスピース1枚あたり0.2mm~0.3mm程度を動か すことができるため、仮に1mm歯を動かそうとすると4~5枚のマウスピースが必 要になります。 インビザラインは必要なマウスピースが数十枚になりますが、単純にそれだけ移動量 が大きいということができるでしょう。

また、矯正治療には部分矯正と全顎矯正という方法があります。 ワイヤー矯正でもマウスピース矯正でも、全顎、部分に対応する矯正方法があります。 どちらであっても主治医の考え方や技量、設計により差異があり、対応できるかどう かはケースバイケースです。 それぞれ得意な動きと苦手な動きがありますが、それは後述します。

マウスピース矯正の終盤で、咬合の緊密化というプロセスに入ります。 ワイヤー矯正は歯の側面にワイヤーを装着し、上下で嚙み合うのは自身の歯です。こ れに対しマウスピース矯正は、噛み合う歯の間に薄いとはいえマウスピースが干渉し ます。そのため、マウスピースをはずした状態での咬合とは変わりますし、マウスピ ースを付けているため普段以上に咬み絞めてしまうということもあり、自然な咬合状 態を作るにはワイヤー矯正の方が適しているということがいえるでしょう。 しかし、先述したように、私たちの歯は緻密に正確な設計の元に生えているわけでは 無く、なんとなく適度に噛み合えるように成長し、その後生活習慣や普段のかみ合わ せによって削れたり動いたりしながら、なんとなくかみ合わせが落ち着いた状態にな

っているだけです。 マウスピースに咬合緊密化ができないわけではなく、ワイヤーに比べて少し緩めな仕 上がりであることも認識しておくことが必要ですし、外して生活しているうちにそれ が落ち着いて適度な状態になっていくと理解しておくことも大切でしょう。

ワイヤー矯正とマウスピース矯正はそれぞれに得意な動きと苦手な動きがあります。

  ◎ワイヤー矯正が得意な動き(ワイヤーが元に戻ろうとする力を利用)
  ・歯の噛み合う高さ(咬合平面)をまっすぐにする(歯の上下移動)
  ・きれいなアーチを作る
  ・歯を平行に移動させる
  ・咬合の緊密化
  ・奥歯のかみ合わせを合わせる
  ・歯を回転させる
  ◎マウスピース矯正が得意な動き
  ・ある部位だけ動かす
  ・傾斜移動
  ・前歯の回転
  ・前歯の空隙の改善

以上を参考に検討してみると良いでしょう。

矯正治療ってそもそもどんな治療?

矯正治療と聞くと、「ワイヤーで歯を動かす」とか「マウスピースで歯を動かす」と かそのくらいしかわからないですよね。 実際どういうことを考えて治療されているのか知りたくないですか?

歯の矯正治療はクローゼットの整理整頓と同じようなものです。 歯がガタガタしているのは、歯が口の中でキレイに並ぶスペースが足りていない状態 です。これをどうやってキレイに整理するかということを考えます。 クローゼットを大きくしたり、中の洋服を捨てたり、並べ替えたり、スペースを作っ てキレイに整頓することが必要です。

洋服なら捨てたり、箱詰めしたり整理はそれほど大変じゃありません。 でも歯を抜くというのは、簡単にしたくないですよね。ではどうやってスペースを作 るのかというと。

方法は大きく分けて4つ
❶歯と歯の間を少し削る
❷歯を横に広げて全体的なスペースを確保する
❸歯を奥に移動させて、移動させた分でスペースを作る
❹それでもどうしてもスペースが足りない場合は、歯の抜歯を考える

です。

順番に説明します。
❶歯と歯の間を少し削る
スペースを作るために歯と歯の間を少し削ります。
こちらは IPR(Inter Proximal Reduction)と呼ばれる処置になり、0.2mm~0. 5mmの間で慎重に削ります。
歯と歯の間ですから、削るのは 2 歯の側面になり0.2mm削れば間に0.4mmの スペースが作られることになります。 この処置のタイミングは、ある程度歯が並んだ時に行われることが多いです。 歯がある程度並ぶ前では、重なっている部分があるため綺麗に削ることができなかっ たり、歯の違うヵ所に傷をつけてしまったりすることもあるためです。 もちろん先生によって手技が異なるため、絶対にどのタイミングでやるべきとは言い 切れません。
先生によっては IPR なんて歯を削るような処置はやるべきじゃない!!という方もい れば、IPR を行って、よりスピーディにゴールに到達できて患者さんの満足度が上が るなら、積極的に行うべきという考え方の先生もいます。 歯を削る量とタイミングさえ間違えなければ歯へのダメージも最小限ですし、選択肢 の一つと考えてもいいと思います。
IPR をしたくない、絶対に歯を削りたくないという患者さんもいらっしゃいますが、 歯の状態によっては IPR を行った方がスムーズに矯正治療が進む場合もありますから 先生と良く相談してみるのが良いでしょう。 部分矯正の場合は、全体矯正と比べて動かせる量に限界がありますから、IPR が必要 になるケースが多いと言えるでしょう。

❷歯を横に広げて全体的なスペースを確保する

歯を横に広げると言われてもピンとこない人が多いとは思います。 横に広げるというのはアーチを横に広げるということです。(側方拡大) 主に左右の臼歯の間隔を横に広げることで前歯も含めて歯がアーチ状にキレイに並べ るようにスペースを作っていくということになります。 顎が細い人は、前歯の生えている前の方の骨が、極端に言うと船のへさきのようにと がった状態になっています。 そこに何本もの歯を並べようとしても限界があり、歯が重なる叢生と呼ばれる状態に なることがほとんどです。 顎が細くなるのは、柔らかいものばかりを食べているため顎がしっかりと発育してい ないためと言われていますが、現代の多くの人が当てはまると思われます。 顎が細い人は奥歯の左右の間隔も狭い傾向にあるため、その間隔を横に広げると、前 歯を並べるスペースも確保され、きれいに並べることができるようになります。

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奥歯の横幅を広げる方法は、

①拡大装置を使う。
②マウスピースで広げる
③ワイヤーで広げる

の 3 つの選択肢があります。 1の拡大装置を使うのがオーソドックスな方法ですが、広げるスピードが早すぎると 歯が予定以上に外側に傾いてしまったり、かみ合わせが上下で合わなくなったりする ことがありますので、無理に早くしたりせず、しっかり経過を観ていくことが大事で す。 万が一そのような状態になってしまっても、時間はかかりますが修正していけますの で担当医に相談してください。 2のマウスピースで広げることもできます。拡大装置を使うよりもかなり緩やかにな りますが、少しずつ広がっていきます。 マウスピースによる拡大は基本的には傾斜移動になることが多いです。 傾斜移動というのは歯が根っこを中心に扇型に広がるイメージです。

イメージ図(comingsoon)

アタッチメントと呼ばれる引っかかりを使用したり、マウスピース自体に予め反対側 にねじるような設計を加えておくなどすることで、しっかりと平行移動させることが

できる方法もあります。 必ず平行移動の方が良いかというとそういうわけでもなく、私の場合はあごの骨が細 く前歯がガタガタしていますが、マウスピース矯正を行い臼歯の間隔を広げたところ、 ある程度の傾斜移動があり、内側に倒れていた歯が外側に広がることでかみ合わせが 良くなり、顎関節の緊張がほぐれるといった 2 次的な改善も見られました。 あくまでも個人的な結果ではありますが、場合によっては平行移動ではなく傾斜移動 をしっかりさせるという考え方も必要だと思えました。 ケースバイケースで選択するのが良いでしょうから担当の先生に聞いてみてください。

マウスピース矯正で横に広げるのが得意なのはインビザラインだと言えます。 部分矯正でも不可能ではありませんが、部分矯正は比較的マウスピースの枚数が少な いことが多いため、移動量は少ないと言えます。

❸ワイヤー矯正で広げる

ワイヤー矯正の場合は一部分だけを広げるというのはあまり一般的ではありません。 ワイヤーのアーチに合わせてすべての歯が移動して少しずつ整っていきます。 ワイヤーのアーチに合わせて移動しますので、アーチが整い矯正力がかからないところまで歯が移動すると結果的に左右の奥歯の間隔も広がっていきます。

❹歯の抜歯を考える
❶歯と歯の間を少し削る❷歯を横に広げて全体的なスペースを確保する❸歯を奥に移動させて移動させた分でスペースを作る❶❷❸を検討した結果、どうしてもスペースが足りない場合には歯を抜いてスペースを確保する方法が必要になることもあります。 お話をすると歯は抜きたくないと言われる患者さんが多いですが、最初から歯を抜 くことを検討した方が早くきれいになるケースというのも実際には多いものです。 インビザラインでは抜歯ケースを推奨していませんが、できないことはありません。 当院では必要に応じて歯を抜くケースでもインビザラインで治療している場合があります。

先生の考え方次第ではありますが、抜歯をしてしまったら元には戻せないから、いったん並べてみて、その結果を見て歯を抜くかどうかを考えるという先生もいらっしゃいます。 しかし、通常の矯正で1.5年以上をかけて、そこから歯を抜いて矯正となれば、 あらたに1.5年以上がかかります。

これでは治療期間が伸びすぎてしまうため、最初の段階で歯を抜くことを検討した方がいい場合は多くあります。 歯科医院の担当医と良くご相談されることをお勧めします。

マウスピース矯正について

マウスピース矯正は比較的新しい矯正治療の方法で今では有名なインビザラインが先駆けと言えます。

急速に普及してきたデジタルスキャナーを使って、歯の3D データを撮影し、3D データをパソコンに取り込みます。 パソコンに取り込んだ歯のデータをソフトで少しずつ動かし、動かした歯の模型を3D プ リンターで印刷、その模型でマウスピースのシートを造形し、カットして完成します。 マウスピース矯正では、マウスピース1枚あたり0.2mm~0.3mm程度を動かすことができるため、仮に1mm歯を動かそうとすると4~5枚のマウスピースが必要になり ます。

1日最低20時間の装着が必要です。

装着時間が短いと、短時間でも少しずつ歯が後戻りするため、設計通りに動かなくなり ます。どれだけしっかり装着できるかがカギになります。 また、マウスピースは樹脂に近い素材であるため、使っているうちに矯正力が弱くなると もいわれています。

最近のマウスピースは1~2週間に1回の交換が主流なので、それほど気にしなくてもよさそうです。

マウスピース矯正の成功は先生の知識と設計者の経験が重要になります。 また、設計通りに動いているかどうかの経過観察が非常に重要になりますから、治療を受 ける歯科医院の先生とスタッフさんのコミュニケーション力も大切になります。 治療説明をしっかりしてくれる先生を選びましょう。 ワイヤー矯正と同様に、費用も比較的高く、期間も長くかかりますので、クリニックの雰 囲気も大切です。 先生がどのくらいマウスピース矯正の経験があるかも重要なポイントになりますので、そ れとなく聞いてみるといいでしょう。

マウスピース矯正でも基本はワイヤー矯正の知識が大切ですし、マウスピースでうまくい かない場合はワイヤーでのリカバリーが必要になりますから、最低でも矯正認定医がいる 歯科医院や歯科法人を選ぶのが安全かもしれません。

1点ポイントとして、ワイヤー矯正とマウスピース矯正は動かす方法が全く違います。 ワイヤー矯正ができるからマウスピース矯正ができるとは考えない方が良いです。 逆にマウスピース矯正ができるからワイヤー矯正ができるというのも違います。 それぞれ別物として知識をもっているか、経験がどのくらいあるかを確かめられると良いかもしれません。

ワイヤー矯正について

ワイヤー矯正は歯にブラケットと言われるワイヤーの固定器具を装着し、ワイヤーが元に戻ろうとする力を利用して歯を動かす矯正治療です。
ワイヤーは U 字状の形態をしていて、ワイヤーを取り付けると、元の U 字に戻ろうとしま す。 矯正医は患者の歯のアーチを確認しつつワイヤーのアーチや太さを検討し治療に入ります。 最初は細く柔らかいワイヤーから始めて、だんだんと太いワイヤーに変えていきます。 矯正を始めるころは、歯並びがガタガタしているため太いワイヤーではガタガタに対応で きず、力も強すぎるため、細い柔らかいワイヤーで少しずつ歯並びを整えていき、経過を 観ながらワイヤーの太さを変えていきます。

ワイヤー矯正をする場合、ほとんどの場合すべての歯にブラケットを取り付ける必要があ ります。 前歯の1本を動かしたい場合に隣の2本を含めて3本だけにワイヤーを付けるということ はできません。 ワイヤーを使って矯正を行う場合、まわりの歯が土台になり動かす歯に力がかかるので、 土台が弱いと土台も動いてしまい、まったく矯正できないばかりではなく、動かしたくな い歯が動いてしまうこともありますし、最悪歯を失うリスクもあります。 ワイヤー矯正は全体的に歯並びを整える矯正治療であるため、ほとんどすべての歯にワイ ヤーを取り付ける必要があります。 ワイヤー矯正はマウスピース矯正と違い基本的に取り外すことができません。 しかし、これがワイヤー矯正の最大の利点でもあります。 マウスピース矯正は最低20時間以上の装着が必要です。 ですが実際は食事をするときに外したり、時と場合に自由に外せるため、意外と20時間 しっかりと装着できている人はあまり多くありません。

しかし、ワイヤー矯正の場合は、自分で取り外すことができないため、24時間絶えずワ イヤーが矯正力を歯に加え続けています。 そのため、マウスピース矯正に比べると、ワイヤー矯正の方が歯が動くスピードが早いと 言われています。 また、ワイヤー矯正はワイヤーのアーチに合わせてすべての歯が並んでいくので、上下の 咬合関係を作るのが得意です。

ワイヤー矯正の成功は矯正医の技術力にかかっています。 先生との性格的な相性も大事で、費用も高く、期間も長くかかる治療なので、しっかりコ ミュニケーションが取れる先生を選ぶのが良いでしょう。 カウンセリングの時に質問をたくさんしてみてください。 近いから、安いからという安易な理由で選ぶのはお勧めしません。

ワイヤー矯正とマウスピース矯正の
メリット・デメリット

ワイヤー矯正とマウスピース矯正のメリット・デメリットを比較してみましょう。

1 見た目
誰もが最もわかりやすい違いとして見た目があげられます。 ワイヤー矯正は歯にワイヤーが装着されていて器具が目立ちます。 最近は金具やワイヤーがセラミックで白いものや色が付いたカラフルなものがあっ

たりして以前とはだいぶ違った印象がありますが、やはり口もとに装着されているた め目立たないとは言い難いです。

どうしても口もとに目が行きがちで、大きく笑うことをためらう場面もあるでしょ う。

マウスピース矯正は透明なマウスピースを装着するので、見た目はほとんど変わり ません。

隣で友人がマウスピース矯正をしていても、言われたり、食事の時に外すところを 見ない限り、マウスピース矯正をしていると気が付かないほど自然です。

ただ、装着し始めたころは、違和感があり滑舌が少し悪くなります。

見た目をまったく気にしない方は別ですが、表面的にはマウスピース矯正の方がメ リットは大きいでしょう。

2 清掃性 ワイヤー矯正は口の中にブラケットと呼ばれるワイヤーの固定器具とワイヤーが あります。

食事の時も取り外すことはできませんので、食べ物が器具やワイヤーに付着して しまうのは避けることができません。 食べ物が付着して残ってしまうと、口の中が酸性に傾いて虫歯リスクも上がって しまうため、食後の歯みがきは必須と言えます。 また、通常の歯ブラシではしっかり取り除くことができないこともあるため、念 入りの歯ブラシと定期的な歯科医院での清掃が必要です。 ワイヤー矯正専用の器具も売っていますので、それを利用するのもいいですし、 こまめに歯ブラシをして口の中を清潔な状態に維持しなければいけません。

マウスピース矯正では、必要に応じてマウスピースを外すことができるため、通 常通り食後の歯みがきをすればある程度口腔内を清潔に保つことができます。 マウスピース自体も時々洗浄剤を使ったり、家庭用の超音波洗浄機を使用したり して清潔に保つことで、口腔内の虫歯リスクはかなり低くできます。 それでも歯と歯の間までしっかりキレイにすることができない部分もありますの で、定期的な歯医者でのクリーニングをお勧めします。

清掃性の点では、マウスピース矯正の方がメリットが大きいです。

3 費用
矯正治療の費用は以前と比べて非常に安価になってきたと言えます。 大きく分けると部分矯正なのか全顎矯正なのかで違いがあります。 全顎矯正であれば、ワイヤー矯正では40万円程度から150万円と幅広く、マ ウスピース矯正でも60万円から100万円程度が一般的となっています。 部分矯正だと回数などにもよりますが、20万から50万円程度が多いです。

全顎矯正にしても部分矯正にしても、価格面では大きな幅がありますが、全顎矯 正だと2~4年、部分矯正だと矯正の程度にはよりますが6カ月から2年くらい が目安になります。 仮に全顎矯正で150万円だった場合、保定期間まで含めて4年かかるとして考 えると、月々の費用は150万円÷48カ月=3万1250円です。 毎月支払うには大きな支出ではありますが、矯正治療後の満足度は高いはずです から、むしろその先の生きている期間で割ったほうが価値として考えるにはよい かもしれません。仮に25歳で矯正治療を受け80歳まで生きたとして55年、 150万円を55年の660カ月で割ると1月あたり2,272円となり、決し て高くはないのかもしれません。 80歳までの価値で考えるのも極端すぎますが、歯列を改善することにより審美

的な改善だけでなく、歯の清掃性が上がり、口腔内疾患にかかりずらくなること を考えると、歯を失うリスクの軽減にもなるため検討する価値は十分にあると思 います。

部分矯正も同じように考えると、50万円を2年の24カ月で割ると1月あたり 2万833円の負担になり、こちらも安いとは言えない負担ではあります。 全顎矯正と同じように55年の660カ月で割ると1月あたりの負担は757円 となり、十分に矯正をする価値があると言えるのではないでしょうか。

このほかにも歯科医院によって再診料や調整料、矯正治療中に必要となる処置に 費用が掛かる場合もあり、一概に金額は出せませんので、担当の先生と良く相談 してみてください。

矯正治療は審美的な改善効果が最も大きいため、なるべく若いころにキレイにし た方が、その後の生活に大きな影響を与える治療だと言えます。 お子様のいるご家族にとっては一生もののプレゼントになりますし、大人になっ てからいつまでたってもご両親に感謝できるプレゼントの一つですから、是非検 討して頂きたいものです。 もちろん、今更始めるのは遅いかな...と思っている方も、健康寿命の伸びた現代 において歯を守ることは健康を守ることにつながりますね。

こちらはワイヤー矯正、マウスピース矯正のどちらにメリットがあるかという比 較はできません。

当院のマウスピース矯正だと 4 回で 99,000 円のコースがあります。 1 回あたり 24,750 円とリーズナブルな設定料金になっています。 もし 8 回で終わるとしたら、99,000 円×2回=198,000 円です。 再診料が 3,300 円かかりますが、断然お得ですね。

通院がないタイプのマウスピース矯正がありますが、正直お勧めできません。 口の中の状態が変わっていきますし、マウスピースでうまく動かない場合もあり ますので、定期的にクリーニングや検診を受けられる歯科医院の方が安心です。

4 矯正力 ワイヤー矯正は細く柔らかいワイヤーを徐々に太いワイヤーに変えていきながら 歯並びを整えていく治療です。

ワイヤーは基本的に取り外すことはできませんので、24時間歯にワイヤーの力 がかかり続けます。 一方、マウスピース矯正は最低20時間の装着が必要と言われています。 食べる時間や時と場合により取り外すことができるため、20時間しっかり装着 するにはしっかりと意識していないとできません。 外している時間は歯に矯正力がかからず元の位置に戻ろうとしますので、外して いる時間が長いと0からとは言いませんが、もう一度歯を動かしていくことにな ります。

私もマウスピース矯正の経験がありますが、2時間ほど外したままにしておくと、 マウスピースを再び装着した際に矯正力がかかる感触がありましたので、連続2 時間以上外した状態でいると少しずつ後戻りしてしまうようです。 このような理由もあり、マウスピース矯正よりもワイヤー矯正の方が歯が早く動 くと言われています。

矯正力に関してはやはり、24時間力をかけることができるワイヤー矯正の方が メリットが高いです。

5 取り外しの可否
ワイヤー矯正は基本的に取り外すことができません。 ただし、記念撮影や結婚式など、どうしてもという場合には必要に応じて外して くれる医院がほとんどです。 その際に費用が発生することもありますが、ワイヤーを取り外す場合は、ブラケ ットと呼ばれる装置を全て外して、イベントが終わったらもう一度すべて付け直 しをします。 外した後はクリーニングも必要で時間も最初に取り付けるのと同じだけかかるの で、1時間以上かかります。 ある程度費用がかかっても仕方ないかもしれません。 マウスピースはいつでも自分で取り外すことができるため、自由です。

取り外しに関してはマウスピース矯正にメリットがあります。

6 矯正治療の期間
治療期間は全顎矯正と部分矯正によって異なります。 全顎矯正であれば歯の状態にはよりますが、一般的には1.5年から4年と言わ れています。

この4年には保定期間2年が含まれているため矯正治療自体は1.5年から2年 程度になることが多いです。 部分矯正も程度に差がありますが6カ月から3年程度と言われており、そのうち 保定期間2年が含まれますので、矯正治療自体は6カ月から1年くらいが一般的 になります。

全顎矯正でも部分矯正でも、歯の位置を完全に固めるための保定期間は非常に重 要なので、2年くらいを目安に続けることが必要です。

ワイヤー保定の場合はそのままワイヤーを付け続けることもありますが、歯科医 院によっては保定期間はマウスピースで行う医院もありますので、ワイヤーで早 く動かして、保定期間は見えにくいマウスピースにするというのも一つの方法で はありますね。

7 矯正治療の成功と失敗 一番の成功は患者さんが満足できたかどうかだと思います。 そしてその結果は費用対効果という点に行きつく気がします。

近年矯正をしている方が大きく増えたのは、良くも悪くもマウスピース矯正の普 及が理由の一つと言えます。 従来のワイヤーを使う矯正に比べ、目立たないという見た目の問題が改善したこ とにより、いままで気になっていた歯並びを改善したいという要望が増えたのだ と思います。

歯科医師は患者さんの主訴を聞いて最適な治療をご提案します。 その際に、部分矯正で改善が図れるのか、全顎矯正が必要なのか、はたまたオペ などの外科処置が伴うケースでないと厳しいのかがどの治療方法を選択するかの 基準となり、そのうえで、ワイヤーでもいいのか、どうしてもマウスピースが良 いのか、早く治したいならワイヤ矯正とマウスピース矯正を併用した方法とする のかを検討します。

もしマウスピースが良いと患者さんの要望があれば、全顎矯正が必要な場合イン ビザラインをご提案します。 ただその前に、2年以上マウスピース矯正を続けていけるのかどうかがわからな い中で100万円近い費用を出していただく負担も理解できます。 実際にめんどくさくて付けられなくなったという方が多いのも事実です。

そのような場合は一旦部分矯正のマウスピースで続けられるかどうかを試してみ ることも一つの選択肢です。 歯科医院によってはお試しプランなどがありますし、部分矯正から差額で全顎矯 正に移行できる歯科医院もあります。 多くの選択肢があり、フレキシブルに選択できる歯科医院選択というのも矯正治 療を成功させるために必要な考え方かもしれません。

さて、矯正治療の成功と失敗ですが、最終的に患者さんが満足できたかどうか。 これにつきます。

矯正治療としての失敗と言えるのは
・歯並びが全く改善されたなかった。
・矯正が終わった時点で一番改善したかったところが改善されなかった
・歯が動かなかった

が主なものとなります。

ですが、これも難しいところがあります。 ワイヤー矯正で歯が動かなかったというのはほとんどありません。 歯にワイヤーを取り付けているため動かないということが基本的にないからです。 マウスピース矯正の場合は比較的多くみられます。 その理由は、マウスピースを毎日20時間以上付けられない人がいるからです。 マウスピースを付けずに歯が動かないことは当然ですから、これは失敗とは言え ません。 論文では動かなかった症例の99%が20時間以上マウスピースを装着していな かったことが原因だと言われています。

矯正治療において、時々かみ合わせに関する問題が発生します。 マウスピースによる部分矯正で起こることが多いです。 「かみ合わせが、始める以前と変わった」と言われることがあります。 しかしこれは矯正治療をしていれば当たり前のことで、歯を動かしているため以 前とかみ合わせが変わるのは当たり前のことです。 しかしケースによっては歯を動かしたことで干渉部位が変わり、確かにかみ合わ せが良くない状態になってしまっている場合もあります。 ただ、このような場合でも咬かみ合わせの調整のために歯のぶつかるところを研

磨したりをしたり、修正用マウスピースを使って数枚で改善する場合が多いです。 ワイヤー矯正でもそうですが、ある程度歯を動かしながら調整しつつかみ合わせ を整えていきます。 それに比べてマウスピース矯正はある程度最終形態をデザインして進めていくた め、最終デザインまで予定通りに進めばいいですが、そうでない場合も多くあり ます。 口の中は千差万別であるため、計画通りに動いていない場合は良くあり、最終的 に微調整が必要になることは仕方ないことです。 部分矯正では~回という回数があり、その回数以内で動かせる最良のゴールに向 かって歯を動かします。 その回数で完全に治ることが保証されていませんので、ある回数を終わった時点 でかみ合わせが気になったとしても、それは失敗とは言えないでしょう。 最終的にその状態の改善が不可能と言われた時、初めて失敗になると理解してお くことが大切です。

また患者さんの満足度という視点で考えると、矯正歯科医学的知見に基づいて治 療が不完全であるように見えても、ある程度の費用の中で、患者さんの一番の悩 みの改善に関して満足できる地点に到達しているのであれば、それは矯正治療の 成功と言えるのではないでしょうか。 矯正治療には費用や期間などさまざまな負担があります。それらを比較考量して 患者さんの最も気になっている患者さんの悩みを部分矯正により改善したという のであれば、まさにそこには患者さんを中心とした医療が成立していると言えま す。

患者さんが満足できる治療=成功という考え方が一つの答えではありますが、矯 正治療は美容整形に近いところもあり、患者さんの要望自体も歯科医学的に困難 な場合もあるため、ある程度の妥協も必要です。

8 部分矯正と全顎矯正 矯正治療において歯の診断をする際に基本とされているアングルの分類がありま す。これはエドワードワングルという歯科医師が開発しました。 エドワードアングルは矯正歯科の父と言われ、矯正歯科の理論と技術を大幅に発 展させ、歯列の咬合(かみ合わせ)の分類法を確立させた先生です。

その分類にはアングル 1 級、アングル 2 級の1と2、アングル 3 級という、大き く分けて 3 分類があります。

アングルの分類は第一大臼歯の咬合状態を元に判断を行います。

この分類からざっくり判断すると、全顎矯正は1~3に対応でき、部分矯正はア ングル1級と、アングル2級の一部に対応できると矯正治療になります。 アングル 3 級に関しては顎変形症という、顎の骨自体に問題がある場合は外科的 処置が必要になるため、すべてに対応できるとは言えません。

一般的な解釈は上述のとおりですが、先生方の治療を拝見していると、必ずしも これに完全に当てはまるとも言えない症例を見て来ました。 顎骨性の咬合異常は基本的に外科処置ができないと難しいですが、ある程度のと ころまで治したい。外科処置はしたくないという患者さんの要望に応えるべく、 真剣に取り組み、満足された患者さんもたくさんいらっしゃいます。

矯正の認定医の先生から見ると、これは手を付けるべきかどうかと、着手したこ と自体を疑問視される先生もいらっしゃいますが、目の前にいる患者さんの要望 に応えたい、救いたいという担当医の先生方の努力には感動を覚えることも度々 あります。

着手に対する見解の違いはあるものの、満足してもらえる矯正治療を提供できる かどうかは担当医の技量に大きく差があると感じます。 担当医がしっかりした経験と知識を持っていればゴールに到達できる可能性はど の状態でもあると感じています。

部分矯正であっても同じことが言えます。 先生の技量によりできるできないの差は大きいです。 歯の動きを自分で設計されている先生は、術前術後の歯並びを見ても、患者さん の要望に応えることが多くできている印象があります。

それぞれ違いはあるものの、担当医の先生としっかりお話しして進めていくのが いいですね。

矯正するならワイヤー?マウスピース?

矯正するならどちらがいいのか?大きな悩みどころですね。 大前提として、どちらでも対応が可能だという視点でお話ししていきます。 どちらにするかの決め手のポイントは次のようになると思います。 1見た目が気になるかどうか

2飽きずにつづけられるかどうか
3忘れ物や失くしものが多いかどうか
4しっかり歯みがきができるかどうか
5話すことが多い仕事をしているかどうか

1見た目
マウスピース矯正を選択する一番のポイントは見た目という方が一番多いです。 仕事柄人としゃべることが多い人やモデルの仕事をしている方などは、ワイヤー矯正によ る見た目が気になるためマウスピース矯正じゃないと無理と言われる方が多いです。 見た目では圧倒的にマウスピース矯正にメリットがあります。

周りの同僚がマウスピース矯正をしていたことがありましたが、1mの距離で話していて も気が付かず、マウスピース矯正をしていると言われてはじめて気が付き、外してもらう まで実際に付けているのかわからないくらいでした。

2飽きずに続けられるかどうか
ワイヤー矯正は一度取り付けたら簡単には外せません。 つまり、半ば強制的に矯正治療が続いていきます。 一方でマウスピース矯正はいつでも外すことができてしまうのと、つけたり外したりを繰 り返す必要があります。 また、装着タイミングをしっかり管理して取り替えていかなければいけなくなります。 マウスピース矯正ではめんどくさくなり飽きてしまって離脱していく方がかなり多いです。 ゴールに向かって根気よく続けていけるかどうかがマウスピース矯正をやり遂げられるか のポイントになります。

飽きっぽいタイプの人には不向きかもしれません。

3忘れ物や失くしものが多いかどうか ワイヤー矯正は取り外すことができないため、忘れてくることはありませんが、マウスピ ースは結構忘れます。 患者さんでもごみと一緒に捨ててしまったり、外して忘れてきてしまったりして、作り直 したいという方がたくさんいらっしゃいます。 マウスピースにストラップを付けておくこともできませんので、忘れ物が多い人には不向 きかもしれません。

4しっかり歯みがきができるかどうか
これはワイヤー矯正の方にとって重要なポイントになるかもしれません。

マウスピース矯正の場合はいつでも取り外しができるので、歯みがきもマウスピースを外 してしまえばいつも通りです。 しかしワイヤー矯正の場合は取り外しができませんので、しっかり歯みがきするのが重要 です。

ワイヤーが付いている分、通常の歯みがきよりも丁寧に磨く必要があります。 それも毎日今まで以上に丁寧な歯みがきが必要です。 こまめに歯みがきをしないと口の中が不衛生になるばかりか、歯周病や虫歯など、口の中 の疾患リスクが高くなります。

いずれにしても、最終的な歯並びがきれいになるというゴールを目指して、毎日こまめに ケアしなければいけないのはどちらも同じですね。 自分がきれいになることをモチベーションにして頑張って頂きたいです。

5話す仕事をしているか これはワイヤー矯正にも共通する問題ではありますが、慣れるまで活舌が悪くなります。 痛いからしゃべりにくいというのもありますが、やはり、口の中に異物が入った状態です から、なかなか普段通りに話すことができません。
でも、だんだん慣れていきます。
私の場合は 1 週間もするとそれほど気にせずに話せるようになっていました。 2週間もすれば気にせずに話すことができるようになってしまいます。 活舌が大切な司会業をやっている方、アナウンサーさんには向いていないかもしれません が、通常会話であれば許容範囲と言えます。

8,どんな歯医者を選んだらいいのか
歯医者選びは非常に大切です。
正直言って外からでは技術レベルや対応は分かりません。 ホームページやインターネット、口コミでもほぼ判断できないでしょう。 ではどうやって判断するのかというと、やはり一回カウンセリングを受けてみるのが良い です。

お試しのようなプランがあるところは試してみるのが良いですね。 実際に治療に行ってみて先生やスタッフさんの雰囲気を感じ取るのが一番です。

そうは言っても、すごく感じは良かったのに・・・という結果もありがちです。 一つの目安としては矯正治療で 4 年以上かかることはありますか?と聞いてみてください。 あるという先生のところはあまりお勧めしません。

通常であれば2~3年で終わります。抜歯を伴う矯正治療はもう少しかかるかもしれませ ん。
保定を含めて 4 年以上はありえます。 あくまでも矯正治療自体の期間がどのくらいかを聞いてみると良いでしょう。

あとは、ワイヤー矯正であれば矯正認定医かもしくは認定医が在籍している歯科法人が間 違いありません。 マウスピース矯正であれば、どれだけの人数の治療を完了させてきたかがポイントです。 最低でも経験値として1000人以上を診てきた先生なら安心です。

後はやはり相性の問題があります。 しっかりお話しして歯科医院の先生や衛生士さんとのコミュニケーションが取れるかどう か気にしてみてください。 また、装置が壊れたりなくなったりしたときに、すぐに通院できるというのもポイントの 一つかと思います。

9,矯正治療のリスク
矯正治療に限らず歯科治療には様々なリスクが伴います。 保険治療であっても常に100%うまくいくとは限りません。 担当する歯科医師も決して治療の失敗を望むことはなく、間違いなく成功することを 目指して治療に当たっています。
それでも予見できないことは起こります。 ここでは矯正治療を行ううえで可能性の高いリスクについてご紹介していきます。

1失活のリスク(神経が死んでしまう) 矯正治療では歯に力をかけて動かしていくため、神経に与える影響は少なからずあ

ります。矯正治療の中でも割と高い頻度で失活は生じます。 日常生活でもボールが当たった等の外的な力により数日~数年後に失活しているこ

とが明らかになることもあります。 失活してしまうかどうかは患者さんの身体的状況からも千差万別であるため、失活

するかどうかの予見は非常に難しいです。 ワイヤー矯正でもマウスピース矯正でもある程度の知見から、歯に加える力につい

ては移動量としてエビデンスがあり、その移動量を超える範囲で動かすことはほとん どありません。 これまで数万人の方にマウスピース矯正を提供してきましたが、1000人に1人く

らいの割合で失活する方がいらっしゃいます。 その場合も特に強い力をかけていたわけではなく、通常の規定値で動かしていたの

に失活してしまったという方や、マウスピースを数日外して、装着するを繰り返した 結果失活した方もいらっしゃいます。

失活する際は、歯の色が変わってきたり、痛みがひどく出たりする場合などがあり ます。

そのような症状が出たときにはマウスピースを外して様子を見るなどすることが大 切です。

あまりに痛い場合などは担当医にすぐに相談することをお勧めします。

これまであったケースでは、色が変わり始めたことに気が付いて、少しマウスピー スを外して過ごしていたら、徐々に回復したという報告もありました。

痛すぎる場合は我慢せず、先生に相談しましょう。

ご自身で痛みに弱いという自覚がある場合は、それを先生に伝えて、少し移動量を 少なめに設計してもらうなど相談してみるのも良いでしょう。

2歯根吸収のリスク
これはあまり多くは見られませんが、まれにあります。 歯根吸収は日常の生活の中でも起きる現象です。 咬み絞めが強かったり、歯ぎしりをしていたり、歯の根に強い力がかかると、根の

先が溶けて吸収され歯の根が短くなることがあります。 矯正治療により歯の根に力がかかると、それにより歯の根が吸収されてしまいます。 この症状は通常は1mm短くなる程度で、ある程度許容範囲ではあります。 歯根吸収が起きても日常生活では大きな支障はほとんどありません。 これも人により様々なため、歯根吸収が起きることを予見することは難しいでしょ

う。

3顎関節症のリスク 矯正治療によりかみ合わせが変わったりすることで、顎関節症を発症するケースが

あります。 特に、マウスピース矯正を開始したことにより就寝時にかみしめたり食いしばった

りして、朝起きた時に顎が痛くなったり口があかなくなったり...というような顎関節 症状が出てくることがあります。

4歯肉退縮のリスク 矯正治療により歯茎が下がってしまうリスクがあります。

設計上では問題ない場合でも、結果的に歯茎が下がる場合があります。 徐々に下がっていくのであれば途中で気が付いて、治療をいったん止めるなどの対 応ができますが、歯肉退縮については、気が付いたら歯茎が下がっていたというこ とが多いため、なかなか対策が難しいです。 そのようなリスクを理解しつつ、こまめにセルフチェックするなどして観察し、違 和感があればすぐに担当医に相談するのが良いでしょう。

5虫歯や歯周病などのリスク 矯正治療中は矯正装置をつけていたり、マウスピースを装着している時間がながく なるため、普段以上に丁寧な歯みがきを心掛ける必要があります。 矯正をしていない時に比べて、食べ物が口の中に残っている時間が長くなる可能性 があるため、酸性に傾きやすかったり、虫歯菌にとって良い環境になる可能性があ り、虫歯や歯周病のリスクが高まります。

食後の歯みがきは普段以上に丁寧に行うようにすると良いでしょう。

6口内炎のリスク 口の中に矯正装置やマウスピースを装着すると、口の中の粘膜に異物が触れるため、 口内炎になりやすくなります。
大抵は 2 週間くらいで口の中も慣れてきて、口内炎ができにくくなります。 慣れるまでは痛くて辛いこともあるかもしれませんが、飽くなき美の追求のためな らある程度の痛みは乗り越えられますね!
美は 1 日にしてならず!
キレイな歯並びを手に入れるために頑張りましょう!!! どうしても痛い場合は先生に口内炎の薬を処方してもらうなどして、辛い時を乗り 越えましょう。

7かみ合わせが変わるリスク 矯正治療を行うことでかみ合わせが大きく変わることがあります。 口を閉じられなくなったり、うまく噛めなくなる状態が続くこともあるかもしれま せんが、矯正治療中であれば許容しなければいけないこともあります。 大抵は矯正治療の終盤になって落ち着いてくるものですが、どうしても気になる場 合は咬み合わせの調整などをしてもらうのも一つの方法です。 かみ合わせについては今までとは変わると認識しておいた方が良いです。

インプラントについて

インプラント治療とは、歯を失った方がその機能を再び取り戻すための画期的な歯科医療の手法であり、今日の歯科学の世界において非常に大きな役割を果たしている治療法です。この治療は、単に失った歯を補うという役割を超えて、患者の日常生活における快適さや満足感を劇的に向上させることができます。
具体的には、見た目の美しさと自然な噛み心地を提供し、食事や会話といった日常の生活を以前のように楽しめるようになるため、自信を回復させる手段として多くの人々に受け入れられています。
こちらでは、インプラントの歴史的な背景から始まり、その基本的な仕組みや特徴、手術の具体的なプロセス、治療中に注意すべきポイント、考えられるリスク、そして患者がよく抱く疑問に対する回答まで、非常に幅広い情報を網羅しています。さらに、最近の技術的な進歩や、インプラント治療が口の中全体の健康にどのような影響を与えるのかについても、詳しく掘り下げてまとめています。
この文書を読むことで、インプラント治療に対する理解が一段と深まり、治療を受けるかどうか迷っている患者さんが、自分にとって最適な判断をするための参考にして頂ければと思っています。
また、歯科医師や歯科衛生士などの医療従事者にとっても、患者さんとの会話の中で役立つ知識を提供したり、治療の計画を立てる際に参考にできる資料として活用していただければ幸いです。インプラント治療は、見た目や機能だけでなく、生活全体にポジティブな変化をもたらす可能性を秘めた治療法であり、その魅力を余すことなくお伝えしたいと思います。

インプラントの歴史をたどる

⚫︎古代における歯の補填の試み

インプラント治療の起源は、驚くべきことに人類の歴史の非常に古い時代にまで遡ることができます。考古学者たちが発掘作業を通じて明らかにした証拠によると、古代エジプトや古代マヤ文明、そして古代ローマの人々は、歯を失った際にその代わりとなるものを何とか作り出そうと試みていました。

たとえば、古代エジプトでは、貴族の墓の中から金の細いワイヤーで固定された人工的な歯が見つかっています。これは、当時の技術としては非常に高度なものであり、彼らが歯の喪失を深刻に受け止めていたことを物語っています。また、古代マヤ文明では、貝殻を丁寧に加工して顎の骨に埋め込むという方法が取られていたことが確認されています。これらの貝殻は、形状を整えられて歯の代わりとして機能するよう工夫されており、当時の人々の知恵と技術力を感じさせます。さらに、古代ローマ時代には、象牙や金属を素材にした人工歯の痕跡が残されており、これもまた歯を補うための努力の結果です。

これらの古代の試みは、現代のインプラント技術と比べると非常に原始的で、成功率も低かったと考えられます。しかし、人類が何千年も前から歯を失うことによる不便さや見た目の問題に悩み、それをなんとか解決しようと努力してきたことは明らかです。これらの初期の挑戦は、現代のインプラント治療の基礎を築くための重要な第一歩であったと言えるでしょう。過去の人々が残したこのような努力がなければ、今日の高度な技術は生まれていなかったかもしれません。

⚫︎20世紀以前の進歩と試行錯誤

18世紀から19世紀にかけて、歯科学が学問として発展するにつれて、インプラント治療も少しずつ進化を遂げていきました。この時期には、金属を使ったインプラントが登場し、より洗練された形で歯を補う試みが始まりました。しかし、この時代にはまだ大きな課題が山積みで、たとえば、体が金属を受け入れにくいことや、感染症が頻繁に起こることなどが問題となっていました。

具体的な例として、1809年にイタリアの歯科医師であるマジョーロ(Maggiolo)が、純金でできた人工の歯の根を開発したことが挙げられます。この金製の歯の根は、現代のインプラントの原型とも言えるものだったのですが、残念ながら長期的に安定して機能することはできませんでした。その後も、19世紀の終わり頃には、磁器で作られたインプラントや、白金の管を使ったインプラントなど、さまざまな素材や方法が試されました。歯科医師たちは、試行錯誤を繰り返しながら、少しでも良い結果を得ようと努力を重ねていたのです。

しかし、当時の技術では、顎の骨に埋め込んだ金属や素材が体に馴染まず、炎症を引き起こしたり、拒絶反応を起こしたりすることが多く、成功したケースはごくわずかでした。それでも、これらの挑戦は決して無駄ではなく、後のインプラント技術の発展に大きなヒントを与えました。特に、体に害を与えず、骨と調和する素材の必要性が強く認識されるようになり、これが後の研究の方向性を定めるきっかけとなりました。

⚫︎現代インプラントの誕生

インプラント治療が現在の形に近づいたのは、20世紀の1950年代に入ってからのことです。この時期に、スウェーデン出身の整形外科医であるペル・イングヴァール・ブローネマルク博士が、偶然の発見を通じてインプラント治療の歴史を大きく変えることになりました。

ブローネマルク博士は、もともと骨の治癒プロセスを研究しており、ウサギの太ももの骨にチタン製の小さな光学機器を埋め込んで観察していました。実験が終わり、その機器を取り外そうとしたところ、驚くべきことにチタンが骨と完全に一体化してしまっていたのです。この現象に注目した博士は、これを「オッセオインテグレーション(骨結合)」と呼びました。この発見は、インプラント治療に革命をもたらす画期的な出来事でした。

チタンは、体の拒絶反応が少なく、骨と強固に結びつく特性を持っていることがわかり、これが長期的に安定したインプラントを実現するための鍵となりました。ブローネマルク博士は、この発見を活かして歯科用のインプラントの開発に取り組み、1965年に最初の臨床試験を成功させました。この成功が、現代のインプラント治療のスタートラインとなったのです。

⚫︎ブローネマルクの影響とその後の展開

ブローネマルク博士の1965年の成功は、インプラント治療が実用的な医療として広がるきっかけとなりました。この技術は、その後世界中に知れ渡り、歯科医療における重要な治療法の一つとして確立されました。博士の功績は、インプラントそのものの技術を進化させただけでなく、歯科学全体に新しい考え方をもたらした点でも非常に大きいと言えます。特に、オッセオインテグレーションという概念は、歯科だけでなく、整形外科や耳鼻科など他の医療分野にも影響を与えました。例えば、人工関節や補聴器の開発にも応用されるなど、その影響力は多岐にわたります。現在では、ブローネマルク博士の研究を土台として、インプラントの表面を加工する技術の改良、新しい素材の導入、さらにはデジタル技術を活用した治療法の開発が進められており、インプラント治療は日々進化を続けています。このように、彼の業績は現代医療において今なお生き続けているのです。

インプラントとは何か

⚫︎インプラントの基本的な概念

インプラントとは、歯を失った部分に人工の歯の根を顎の骨に埋め込み、その上に人工の歯を取り付けることで、歯の見た目と機能を回復させる治療法です。この方法は、従来の入れ歯やブリッジとは異なり、独立した構造でしっかりと固定されるため、周囲の健康な歯を削ったり傷つけたりする必要がありません。そのため、より自然な噛み心地や安定感を得られるのが特徴です。

インプラント治療がもたらす主な利点は、次のように挙げられます:

• 見た目が自然で、まるで自分の歯のようになる。

• しっかり噛めるようになり、発音もクリアになる。

• 周囲の健康な歯に負担をかけない。

• 顎の骨が痩せるのを防いでくれる。

• 長い期間にわたって安定して使える。

これらのメリットがあるため、インプラントは歯を失った多くの人にとって、最適な解決策として選ばれています。

⚫︎インプラントの構造とその役割

インプラントは、3つの主要な部分から構成されています。それぞれが重要な役割を果たし、全体として機能することで、自然な歯に近い体験を提供します。

まず、インプラント体があります。これは、顎の骨の中に埋め込まれる人工の歯の根にあたる部分で、通常はチタンやチタン合金で作られています。チタンは体に馴染みやすく、骨としっかりと結びつく性質を持っています。この部分の表面には、骨との結合をより強固にするための特殊な加工が施されており、一般的にはスクリュー(ねじ)の形をしています。この形状は、骨との接触面積を増やし、埋め込んだ直後から安定するように設計されています。

次に、アバットメントがあります。これは、インプラント体とその上の人工歯をつなぐ中間部分で、インプラント体にしっかりと固定されます。アバットメントは、上に取り付ける人工歯を支える役割を果たし、インプラントの位置や角度に合わせてさまざまな形や素材が用意されています。通常はチタン製が使われますが、見た目をより自然にするためにジルコニア製のものを使う場合もあります。

最後に、人工歯冠です。これは、実際に外から見える歯の部分で、セラミックやジルコニアといった素材で作られています。天然の歯と同じような色や形に仕上げられ、患者の他の歯と調和するように細かく調整されます。最近では、CAD/CAMというコンピュータ技術を使って、より精密で自然な人工歯を作ることが可能になっています。

この3つの部品が一体となって働くことで、インプラントは見た目も機能も天然の歯に非常に近いものになるのです。

⚫︎インプラントの種類とその特徴

インプラントにはさまざまな種類があり、治療の目的や患者さんの口の中の状態によって、どのタイプが最適かを歯科医師が慎重に選びます。現在では、その中でも特にエンドオッセアスインプラント(以下単にインプラントと呼びます)が圧倒的に広く使われており、現代のインプラント治療の主流となっています。このタイプを中心に、状況に応じた具体的なケース――たとえば即時埋入する場合、増骨剤を使う場合、ソケットリフトを行う場合、そしてサイナスリフトが必要な場合――について詳しく見ていきましょう。それぞれの特徴や適用場面を丁寧に掘り下げて説明します。

インプラント:現代の標準タイプ

まず、最も一般的なのがインプラントです。このインプラントは、チタン製のねじ型の構造を持ち、顎の骨に直接埋め込むタイプで、現在ではインプラント治療のほぼ全てと言っても過言ではないほど広く採用されています。その理由は、シンプルで信頼性が高く、さまざまな患者さんの状態に対応できる柔軟性があるからです。

インプラントは、大きさや形が患者さんの骨の状態や、どの歯を補うのかによって細かく選ばれます。たとえば、前歯を失った場合と奥歯を失った場合では、骨にかかる力や必要な安定性が異なるため、インプラントの長さや太さが調整されます。最近では、表面処理技術の進歩が目覚ましく、インプラントの表面に微細な凹凸を施したり、特殊なコーティングを加えたりすることで、骨との結合が以前よりもずっと早く、強固に進むよう改良されています。これにより、手術後の回復期間が短縮され、患者さんにとって負担が減るのも大きな利点です。

このインプラントを中心に、以下では具体的な治療シナリオごとにその適用方法を詳しく見ていきます。

現代の歯科医療では、他の種類が使われることはまれで、インプラントがほぼ標準となっているため、ここではその活用法に焦点を当てて説明します。

即時埋入の場合

インプラントの一つの応用として、**即時埋入(Immediate Placement)**があります。これは、歯を抜いたその場で、すぐにインプラントを埋め込む方法です。たとえば、虫歯や歯周病で歯が抜けた場合や、事故で歯が折れてしまった場合に、抜歯したその日のうちにインプラントを入れることが可能です。この方法の大きな特徴は、治療期間を大幅に短縮できる点にあります。通常、インプラント治療では抜歯後に数ヶ月待って骨が治るのを確認してから埋入しますが、即時埋入ならその待ち時間を省略できるのです。

ただし、即時埋入が適しているかどうかは、いくつかの条件に左右されます。まず、抜歯した部分の骨が十分に残っていて、健康な状態であることが必要です。たとえば、感染がひどく骨が溶けている場合は、この方法は難しくなります。また、インプラントがしっかりと固定される「初期安定性」が得られるかも重要なポイントです。最近のインプラントは、ねじのデザインが改良され、柔らかい骨でも安定しやすいものが多く、即時埋入の成功率を高めています。

たとえば、前歯を失った患者さんが、見た目をすぐに回復したいと希望する場合、即時埋入でインプラントを入れて仮歯を装着すれば、その日のうちに笑顔を取り戻せます。このスピード感と審美性が、即時埋入の大きな魅力です。ただし、術後のケアや噛む力の管理がより慎重に求められるため、患者さんへの説明と協力が欠かせません。

増骨剤を使う場合

次に、インプラントを埋める際に、**増骨剤(Bone Augmentation Material)**を使用する場合があります。これは、顎の骨の量が不足しているときに、骨を補う材料を追加してインプラントを安定させる方法です。たとえば、長年歯がない状態が続くと、骨が自然に痩せて薄くなってしまうことがあります。そんなとき、単純にインプラントを埋めるだけでは安定性が得られないため、増骨剤を活用して骨のボリュームを増やすのです。

増骨剤にはいくつかの種類があり、患者さん自身の骨(自家骨)を別の部分から採取して使う場合もあれば、人工的な骨補填材や牛由来の素材を使う場合もあります。たとえば、下顎の奥歯を補うためにインプラントを入れる際、骨の高さが足りないと判断された場合、手術中に増骨剤を埋め込んで、インプラントをしっかり支える土台を作ります。このプロセスは、インプラントの柔軟性を活かした治療法で、骨が少ない患者さんでも治療を受けられる可能性を広げてくれます。

増骨剤を使う場合、治療期間が少し長くなることがあります。たとえば、増骨剤が骨と一体化するまで3~6ヶ月待ってからインプラントを埋めるケースや、手術と同時に行うケースがあります。どちらにせよ、インプラントの高い適応力のおかげで、骨の状態が悪い患者さんにも自然な歯を取り戻すチャンスが与えられるのです。

ソケットリフトの場合

上顎の奥歯を治療する際に、骨の厚みが足りない場合、インプラントと一緒に**ソケットリフト(Socket Lift)**という手法が使われることがあります。これは、上顎洞(鼻の横にある空洞)の底を少し持ち上げてスペースを作り、そこに増骨剤を入れて骨を増やす方法です。たとえば、上顎の奥歯を失ってしばらく経つと、上顎洞が下がってきて骨が薄くなることがあります。そんなときに、ソケットリフトが役立つのです。

具体的な手順としては、インプラントを埋める穴をドリルで開ける際に、上顎洞の膜(シュナイダー膜)を慎重に押し上げます。そして、その下に増骨剤を詰めて、インプラントを同時に埋め込むか、後で埋めるかを決めます。たとえば、骨が5mm程度しかない場合、ソケットリフトで2~3mm持ち上げて増骨剤を加えれば、インプラントを安定させられるのです。

この方法の利点は、大きな手術を避けられることです。たとえば、もっと大がかりなサイナスリフトに比べ、ソケットリフトは切開が小さく、患者さんの負担が少ないのが特徴です。インプラントのねじ型デザインは、このような微妙な調整が必要な場面でもしっかりと固定されるので、ソケットリフトとの相性が抜群です。上顎の治療で骨が薄い患者さんにとって、自然な噛み心地を取り戻すための現実的な選択肢となっています。

サイナスリフトの場合

さらに骨が極端に少ない場合、特に上顎で深刻な骨吸収があるときには、**サイナスリフト(Sinus Lift)**がインプラントと組み合わせて行われます。これは、上顎洞の底を大幅に持ち上げて、大量の増骨剤を入れて骨を増やす大がかりな方法です。たとえば、上顎の骨が3mm以下しかないような重度のケースでは、ソケットリフトでは対応しきれず、サイナスリフトが必要になります。

サイナスリフトの手術は、歯肉を大きく切開し、骨に窓を開けて上顎洞膜を持ち上げ、そこに自家骨や人工骨をたっぷり詰めるという流れです。その後、骨が安定するのを待って(通常6~9ヶ月)、インプラントを埋め込みます。たとえば、奥歯をすべて失った患者さんが、しっかり噛めるようにしたいと希望する場合、サイナスリフトで骨を10mm以上増やして、複数のインプラントを安定させることができます。

この方法は、手術の規模が大きいため、患者さんの体力や回復力も考慮されます。しかし、インプラントの高い生体適合性と結合力のおかげで、サイナスリフト後の骨にもしっかりと馴染み、長期間安定した結果をもたらします。骨が極端に少ない患者さんでも、諦めずに治療を受けられる可能性を広げる、まさに救世主のような手法と言えるでしょう。

その他の種類(補足)

インプラントが主流である現代において、他の種類はほとんど使われなくなっていますが、補足として触れておきます。たとえば、サブペリオステアルインプラントは、骨の上に金属フレームを置いて歯を固定するタイプで、かつては骨量が少ない患者さんに使われました。しかし、安定性がインプラントに劣り、現代ではほぼ見かけません。

また、ジゴマティックインプラントは、上顎の骨が極端に少ない場合に頬骨に固定する特殊な方法です。たとえば、重度の骨吸収で通常のインプラントが不可能な場合に有効ですが、手術が複雑で専門的な技術が必要なため、ごく限られたケースでしか使われません。

ミニインプラントは、直径が3mm未満の小さなインプラントで、一時的な使用や狭いスペース、入れ歯の安定化に役立ちます。たとえば、下顎の前歯を仮に補う場合に便利ですが、耐久性が低いため、インプラントに取って代わられています。

さらに、「即時負荷インプラント」や「オールオンフォー」といった手法もありますが、これらもインプラントをベースにした応用です。患者さんの状態や希望に合わせて選ばれますが、結局のところ、インプラントがその柔軟性と信頼性で現代治療の中心となっているのです。このように、現在ではインプラントがインプラント治療のほぼ全てを占めており、即時埋入、増骨剤使用、ソケットリフト、サイナスリフトといったさまざまな状況に対応できる万能性が特徴です。そのチタン製の構造と表面処理技術の進化により、骨との結合が早く、強く、患者さんのニーズに柔軟に応えられるのが強みです。他の種類は過去のものとなりつつあり、インプラントが現代の歯科医療の標準として確立していると言えるでしょう。

インプラント治療のステップごとの詳細

⚫︎初回の診察と診断プロセス

インプラント治療を始めるにあたって、最初に行われるのが歯科医師による丁寧な診察と診断です。この段階は、治療がうまくいくかどうかを大きく左右する非常に重要なプロセスで、以下のような項目が詳しく調べられます。

まず、患者さんの全身の健康状態を確認します。例えば、糖尿病や骨粗しょう症、心臓病などの病気があるかどうか、また普段飲んでいる薬やアレルギーの有無をチェックします。これらは、インプラント治療が適しているかどうかや、成功率に影響を与える可能性があるためです。

次に、口の中の状態を詳しく見ます。残っている歯の健康状態、歯周病があるかどうか、噛み合わせがどうなっているか、歯肉などの軟らかい組織がどのくらい健康かを調べます。特に歯周病は、インプラントが長持ちするかどうかに大きな影響を与えるので、もし見つかれば先に治療することが必要です。

さらに、顎の骨の状態を評価します。レントゲン写真やCTスキャンを使って、骨の厚さ、質、密度を詳しく確認します。最近では3DのCTスキャンが使われることが多く、これによって非常に精密なデータが得られます。これにより、インプラントを埋めるのに十分な骨があるか、またその質が適切かを判断します。

また、歯が抜けた部分についても詳しく見ます。その場所の状態や、周囲の歯との関係、見た目の美しさをどれくらい求めるかを考慮して、最適なインプラントの種類や大きさ、埋める位置を決めます。

最後に、神経や血管の位置をCTスキャンで確認します。特に下顎管や上顎洞といった重要な部分がどこにあるかを把握することで、手術中に神経を傷つけるリスクを減らすことができます。

これらの情報をすべて集めて分析し、インプラント治療が適切かどうか、またどんな治療計画がベストかを判断します。このとき、患者さんの希望や期待も丁寧に聞き取り、治療の目標をはっきりさせます。必要に応じて、口の中の写真を撮ったり、歯の型を取ったりして、さらに詳しい計画を立てるための資料にします。

⚫︎治療計画の具体的な立案

初診でのデータを基に、患者さん一人ひとりに合わせた詳細な治療計画が作られます。この計画には、次のような内容が含まれています。

まず、必要なインプラントの本数と、どこに埋めるかを決めます。これは、歯が抜けた状態や顎の骨の条件によって変わります。1本だけの場合もあれば、顎全体を補う場合もあるので、ケースごとに柔軟に対応します。

次に、インプラントの種類や大きさを選びます。たとえば、骨が少ない場合には短いインプラントや細いものが検討されます。

また、骨や歯肉の追加処置が必要かどうかも考えます。骨の量や質が足りない場合、骨を増やす「骨移植」が必要になることがありますし、見た目を良くするために歯肉を移植することもあります。

さらに、治療のスケジュールと期間を決めます。最初の手術から最終的な歯の装着まで、通常は数ヶ月から半年以上かかることが多いです。

費用の見積もりも提示します。インプラントの本数や骨移植の有無、使う素材によって金額が変わるため、具体的な数字を伝えます。

そして、インプラント以外の選択肢も説明します。たとえば、ブリッジや入れ歯といった方法もあり、それぞれのメリットとデメリットを伝えて、患者さんが十分な情報を持って選べるようにします。

この計画は、患者さんと一緒にじっくり話し合い、必要なら調整します。生活スタイルや経済的な状況、患者さんの希望も考慮しながら、最も良い形に仕上げます。また、リスクや合併症の可能性についても丁寧に説明し、納得してもらった上で進めます。

⚫︎手術に向けた準備

インプラントの手術を行う前に、以下のような準備が進められます。

まず、治療の内容や流れ、期待できる結果、リスク、他の選択肢について患者さんに詳しく説明し、同意を得ます。これはインフォームドコンセントと呼ばれる重要なステップです。

次に、全身の健康状態を再確認します。必要なら血液検査や心電図を行い、特に糖尿病のコントロールや、抗凝固薬を使っている人の調整をします。

口の中も準備します。歯石を取ったり、虫歯を治療したりして、清潔で健康な状態に整えます。

麻酔の方法も決めます。通常は局所麻酔ですが、複雑なケースや患者さんの希望によっては全身麻酔も検討します。

また、CTデータを使って手術用のガイド(ステント)を作ることもあります。これで手術の精度と安全性が上がります。

術前に使う薬も準備します。感染を防ぐための抗生物質や、不安を和らげる鎮静剤などが考えられます。

最後に、手術当日の注意点を伝えます。食事の制限や薬の飲み方、服装などについて細かく説明します。

これらの準備で、安全で効果的な手術を目指し、患者さんの不安も軽減します。

⚫︎インプラント手術の実際

手術は次のような流れで進みます。

①最初に麻酔をします。通常は局所麻酔ですが、場合によっては静脈内鎮静や全身麻酔も使います。

②歯肉を切開して顎の骨を出します。切開は小さくして、術後の痛みや腫れを減らします。

③骨にドリルで穴を開けます。専用の道具で少しずつ広げ、熱を防ぐために生理食塩水で冷やしながら慎重に進めます。

④準備した穴にインプラント体を埋め込み、初期の安定を確認します。

骨が足りない場合は、自家骨や人工骨で骨移植を行い、長持ちするようにします。

⑤最後に、歯肉を元に戻して縫います。治癒を助ける膜を使うこともあります。

手術時間は、インプラント1本で30分~1時間程度ですが、複数本や骨移植があると長くなります。

手術後は、骨とインプラントが結合する「オッセオインテグレーション」の期間(3~6ヶ月)が必要で、その間は仮の歯やブリッジで見た目と機能を保ちます。

⚫︎回復期間と二次手術の役割

インプラント手術後の回復期間は、治療全体の成功を左右する非常に重要なステップです。この期間中に、インプラント体が顎の骨と生物学的に結びつき、噛む力に耐えられるほどの強固な土台が形成されます。現代のインプラント治療では、通常、初回手術後に2次手術が行われることが前提となっており、この回復期間はその準備段階として欠かせません。

患者さんは定期的に歯科医院を訪れ、治癒の進み具合をチェックしてもらいます。たとえば、数週間おきに診察を受け、レントゲン撮影を通じてインプラントと骨の結合状態を確認します。この検査は、インプラントがしっかりと骨に定着しているか、問題なく治癒が進んでいるかを把握するために不可欠です。また、この期間中、患者さんには特別なケア方法が指導されます。具体的には、柔らかい毛の歯ブラシを使って優しく清掃したり、刺激の少ない洗浄液で口の中を清潔に保ったりすることで、感染や炎症を防ぎます。たとえば、硬いブラシで強く磨くとインプラント周囲を傷つける恐れがあるため、慎重なケアが求められるのです。

回復期間の長さは、患者さんの骨の質や全身の健康状態、使用するインプラントの種類によって異なりますが、一般的には3~6ヶ月程度が目安です。ただし、最近では表面処理技術が進んだインプラントが登場しており、たとえば親水性の高いコーティングや微細な凹凸が施されたものが使われることで、骨との結合が早まり、2~3ヶ月に短縮されるケースも増えています。この期間は、初回手術で埋めたインプラントが骨にしっかり馴染むための大切な時間であり、次のステップである2次手術に向けて準備を整える段階でもあります。

現代のインプラント治療では、2次手術がほぼ標準的なプロセスとして組み込まれています。初回手術では、インプラント体を歯肉の下に完全に埋めてしまい、そのまま治癒を待つのが一般的です。そして、回復期間が終わった後、2次手術でインプラントを露出させる作業が行われます。具体的には、歯肉を再度切開し、インプラントの上部を出し、治癒用のアバットメント(ヒーリングアバットメント)と呼ばれる小さな部品を取り付けます。このアバットメントは、歯肉を自然な形に整える役割を果たし、最終的な人工歯が美しくフィットするための土台を作ります。たとえば、前歯のように見た目が重要な部位では、歯肉のラインをきれいに整えることで、より自然な仕上がりを目指すのです。

2次手術は、通常、局所麻酔で行われ、初回手術に比べると規模が小さく、時間も短くて済みます。たとえば、30分程度で終わるケースが多く、患者さんの負担も比較的軽いのが特徴です。手術後は、歯肉が新しい形に落ち着くまで数週間(通常2~4週間)待つ必要があり、その間に患部が安定したら、最終的な人工歯の製作と装着へと進みます。この2次手術があることで、インプラントの位置や歯肉の状態をより精密に調整でき、見た目と機能の両方で優れた結果を得られるのです。

このように、回復期間と2次手術は、インプラント治療の成功に欠かせない一連の流れです。患者さんにとっては少し長いプロセスに感じるかもしれませんが、2次手術を前提としたこのステップが、最終的に自然で快適な歯を実現するための鍵を握っています。

インプラント治療の回復期間が終わり、2次手術が完了した後、いよいよ最終的な人工歯の製作と取り付けの段階に進みます。現代では、2次手術がほぼ必ず行われる前提で治療が進められるため、このステップはその後の仕上げとして非常に重要な位置を占めています。ここでは、患者さんの期待に応える見た目と機能を実現するために、最新の技術と細やかな調整が駆使されます。

⚫︎最終的な歯の製作と取り付け

まず最初に、精密な材料を使ってインプラントの位置や周囲の歯肉の形状を正確に記録します。この作業は「印象採取」と呼ばれ、柔らかいシリコンやゴムのような素材を口の中で固めて型を取るのが一般的です。たとえば、インプラントの上に小さなトレーを置き、その中に印象材を流し込んで固めることで、細かい部分まで正確に再現します。最近では、デジタル技術の進歩により、口腔内スキャナーを使って3Dデータとして記録するケースも増えてきました。この方法なら、患者さんの不快感が少なく、より精密なデータが得られるため、人工歯の設計に大いに役立ちます。

次に、上下の歯の噛み合わせを確認します。インプラントが入った状態で、自然で快適な噛み心地になるよう、上下の歯がどのように接触するかを慎重にチェックするのです。たとえば、ワックスや専用の器具を使って噛み合わせを記録し、それが最終的な歯の形に反映されます。このステップを怠ると、噛むときに違和感が出たり、インプラントに余計な力がかかったりする恐れがあるため、非常に重要な作業です。

その後、人工歯の色を決めます。患者さんの残っている歯の色や、希望する明るさ、自然さに合わせて、セラミックやジルコνιαの色見本を見ながら最適な色調を選びます。たとえば、隣の歯が少し黄ばんでいる場合、それに合わせた自然な色を選ぶことで、口全体が調和した印象になります。そして、仮歯を製作して実際に口に装着し、形や機能が問題ないかを試します。この仮歯は、患者さんが実際に使ってみて「もう少し高さを調整してほしい」「形を丸くしたい」といった感想を伝えるためのテスト段階でもあります。たとえば、仮歯を数日使って噛み心地や見た目を確認し、必要なら微調整を加えることで、最終的な歯の完成度を高めます。

これらのデータをもとに、歯科技工士が最終的な人工歯を製作します。素材には主にセラミックやジルコニアが使われ、これらは天然の歯に近い硬さと美しさを持ちながら、耐久性にも優れています。たとえば、セラミックは透明感があり、前歯のような審美性が求められる部位にぴったりですし、ジルコニアは強度が高いため、奥歯に適しています。技工士は、印象データやデジタルスキャンを基に、ミクロン単位で精密に歯を削り出し、患者さんの口に完璧に合う形を作り上げます。最近では、CAD/CAM技術が導入され、コンピュータで設計したデータを機械が自動で削り出すため、さらに正確で美しい仕上がりが可能になっています。

完成した人工歯は、インプラントに取り付けられます。このとき、アバットメント(2次手術で装着したもの)にネジで固定するか、セメントで接着するかを状況に応じて選びます。取り付け後、噛み合わせやフィット感を細かく調整します。たとえば、噛んだときに高すぎる部分があれば削ったり、他の歯とのバランスを見て微調整したりします。この作業は、患者さんが違和感なく自然に噛めるようになるまで丁寧に行われます。

最後に、レントゲン撮影でインプラントと人工歯の適合状態を確認します。これにより、内部で問題が起きていないか、骨との結合が維持されているかをチェックできます。さらに、患者さんに鏡を見てもらい、「見た目はどうか」「噛み心地に違和感はないか」を直接聞いて、満足度を確認します。たとえば、「もう少し白くしたい」「形が気になる」といった意見があれば、ここで最終的な修正を加えることも可能です。この段階では、見た目と機能の両方で患者さんの期待に応えることが目標です。2次手術を経て歯肉が整った状態だからこそ、自然で美しい仕上がりが実現します。最新技術を駆使し、歯科医師と技工士が連携して丁寧に作り上げることで、インプラント治療は最高の結果を迎えるのです。

インプラントの利点と欠点

⚫︎利点の詳細

自然な見た目と機能

インプラントは、その見た目が本物の歯とほとんど変わらないという点で、他の治療法とは一線を画しています。歯を失った後に感じる見た目の違和感や、周囲からの視線に対する不安を解消してくれるのです。人工の歯の根から丁寧に作られた歯冠までが一体となって機能するため、外見上、自分の歯と区別がつかないほどの自然さが実現します。たとえば、笑顔を見せるときや写真に写るときに、以前と同じように自信を持って振る舞えるのは、インプラントならではの魅力です。

また、噛む力についても非常に優れています。天然の歯に匹敵する、あるいは場合によってはそれを超えるほどの強さで、硬い食べ物でもしっかり噛み砕くことができます。たとえば、ステーキやナッツ、リンゴのような硬い果物でも、気にせず楽しめるのです。このしっかりした噛み心地は、食事を単なる栄養摂取ではなく、人生の楽しみのひとつとして味わうことを可能にします。

さらに、発音への影響がほとんどない点も大きな利点です。歯を失うと、空気が漏れて発音が不明瞭になることがありますが、インプラントは歯の根から再現するため、舌や唇の動きを自然にサポートします。たとえば、「サ行」や「タ行」の発音がクリアになり、会話中に相手に聞き返されることが減るでしょう。これにより、仕事でのプレゼンテーションや友人とのおしゃべりも、以前と同じようにスムーズに進められます。

このように、インプラントは見た目だけでなく、食事や会話といった日常生活のあらゆる場面で快適さを提供し、患者さんの生活の質を大きく引き上げてくれるのです。

耐久性

インプラントのもう一つの大きな魅力は、その耐久性にあります。正しいケアを続ければ、10年以上にわたって使い続けることができ、場合によっては一生涯にわたって機能し続けることも夢ではありません。この長持ちする理由は、使用される素材であるチタンの特性と、骨との強固な結びつきにあります。

チタンは、体に非常に馴染みやすい金属で、錆びたり劣化したりすることがほとんどありません。インプラント体がチタンで作られているため、口の中の湿った環境でも長期間安定して保たれるのです。さらに、インプラントが顎の骨としっかりと結合する「オッセオインテグレーション」という現象が、この耐久性を支えています。一度骨と一体化すれば、噛む力がかかっても動いたり外れたりする心配がほとんどありません。

たとえば、入れ歯のように何年かごとに作り直す必要がないため、長期的には手間やコストを抑えられる可能性もあります。研究によれば、適切に管理されたインプラントは15年後の残存率が90%を超えると報告されており、これは他の治療法と比べても非常に高い数字です。毎日の歯磨きや定期的な歯科検診を怠らなければ、インプラントはまるで自分の歯のように、長く頼りになる存在となるでしょう。

周囲の歯を守る

インプラントは、ブリッジとは異なり、周囲の健康な歯を削る必要がないという点でも優れています。ブリッジの場合、失った歯の両隣にある健康な歯を支えとして削り、そこに人工歯を固定します。この方法では、健康な歯の構造を犠牲にしなければならないため、将来的にその歯が弱くなったり、虫歯や歯周病のリスクが高まったりする可能性があります。

一方、インプラントは完全に独立した構造です。顎の骨に直接埋め込まれるため、隣の歯に一切負担をかけません。たとえば、前歯を1本失った場合でも、両側の歯をそのまま残し、インプラントだけで補うことができます。これにより、健康な歯を長く保ち、口全体のバランスを崩すことなく治療を終えられるのです。

また、口腔ケアの面でもメリットがあります。ブリッジでは、人工歯の下に食べかすがたまりやすく、清掃が難しい場合がありますが、インプラントは天然の歯と同じようにブラシやフロスでケアできるため、清潔を保ちやすいのも特徴です。このように、インプラントは周囲の歯に優しく、長期的な口腔の健康を守る助けとなります。

骨の維持

インプラントが他の治療法と大きく異なる点の一つに、顎の骨を維持する効果があります。歯を失うと、その部分の骨は噛む刺激を受けなくなり、徐々に痩せてしまう「骨吸収」という現象が起こります。この骨吸収が進むと、顔の輪郭が変化したり、残っている歯の位置がずれたりするリスクがあります。たとえば、下顎の歯をすべて失った場合、顎が細くなり、顔が老けて見えることもあるのです。

しかし、インプラントは人工の歯の根として機能し、噛むたびに骨に適度な刺激を与えます。この刺激が骨の密度を保ち、痩せるのを防いでくれるのです。たとえば、インプラントを入れて数年経っても、顎の形がほとんど変わらないという報告が多く、見た目の若々しさを維持する効果も期待できます。

さらに、将来別の歯を失った場合でも、骨がしっかり残っていれば追加のインプラント治療や他の歯科治療がしやすいという利点もあります。このように、インプラントは単に歯を補うだけでなく、口全体の健康と将来の選択肢を守る役割を果たしてくれるのです。

費用

⚫︎欠点の詳細

インプラント治療の最も大きな欠点の一つが、その費用です。1本あたり30万円から50万円程度かかることが一般的で、これは他の治療法と比べて非常に高額です。たとえば、ブリッジなら数万円から10万円程度で済むことが多いのに対し、インプラントはその数倍のコストがかかります。

この費用には、初診や検査、手術、インプラント自体の材料費、人工歯の製作費などが含まれます。さらに、骨の量が足りない場合に骨移植が必要になると、追加で10万円以上かかることもあります。日本では、健康保険が適用されるケースが一部の例外を除いてほとんどなく、基本的には全額自己負担となるため、経済的なハードルが高いと感じる人も多いでしょう。

たとえば、奥歯を2本失った場合、60万円から100万円近くかかる可能性があり、複数本となるとさらに大きな出費となります。このため、インプラントを希望しても、予算の都合で断念する患者さんも少なくありません。ただし、長持ちする点を考えると、長い目で見ればコストパフォーマンスが良い場合もあるため、一概に高いとは言えない側面もあります。それでも、初期投資としては大きな負担であることは間違いありません。

経済的な負担を軽くする意味で、デンタルローンの利用も検討する価値があるでしょう。

手術リスク

インプラントは手術を伴う治療であるため、さまざまなリスクが存在します。まず、感染症が挙げられます。手術中や術後に細菌が入り込むと、埋めた部分が腫れたり、痛みが出たりする可能性があります。滅菌を徹底していても、まれに起こることがあります。

次に、神経損傷のリスクがあります。下顎や上顎の神経に近い場所にインプラントを埋める際、誤って神経を傷つけてしまうと、唇や舌にしびれや痛みが生じることがあります。たとえば、下顎の奥歯を治療する場合、下歯槽神経を傷つけるリスクが懸念されます。

また、上顎の場合は上顎洞(鼻の横の空洞)を傷つける可能性もあります。これが起こると、副鼻腔炎のような症状が出ることがあり、治療が複雑になる場合も考えられます。さらに、手術中や術後の出血が予想以上に多い場合もあり、特に血が止まりにくい薬を飲んでいる人は注意が必要です。

まれですが、チタンに対するアレルギー反応も報告されています。腫れや赤みが出るケースで、他の素材(たとえばジルコニア)に変える必要が出てくることもあります。これらのリスクを減らすには、経験豊富な医師と最新の設備が必要で、患者さん自身も術後の指示を守ることが重要です。

治療期間

インプラント治療は、そのプロセスが長いことも欠点です。初診から最終的な歯の装着まで、数ヶ月から1年以上かかることも珍しくありません。たとえば、一般的な流れは、初診と診断で1~2週間、治療計画の立案でさらに1~2週間、手術が1日(複数本なら数日)、その後骨と結合する期間が3~6ヶ月、必要なら二次手術が1日、最後に人工歯の製作と装着で2~4週間というスケジュールです。

この期間は、患者さんの骨の状態や健康状態、治療する場所、骨移植の有無によって変わります。たとえば、骨が少ない場合には、骨移植のためにさらに3~6ヶ月追加されることもあります。この長期間にわたる治療は、患者さんの忍耐と協力が必要不可欠です。

治療中は仮の歯やブリッジを使うことが多いですが、見た目や機能に制限がある場合もあり、すぐに快適に噛みたい人にはストレスになるかもしれません。しかし、この慎重なプロセスが、長期的な安定と成功につながるため、必要な時間だと考えることもできます。

メンテナンス

インプラントは、天然の歯と同じように継続的なケアが必要です。毎日の歯磨きやフロスでの清掃が欠かせず、これを怠るとインプラント周囲炎というトラブルが起こるリスクがあります。この炎症は、骨を溶かしてしまい、最悪の場合はインプラントが抜け落ちることもあるのです。

たとえば、インプラント専用の歯間ブラシやフロスを使い、細かい部分まで丁寧に磨く必要があります。また、3~6ヶ月に1回の歯科検診で、専門家によるクリーニングを受けることも推奨されます。年に1度はレントゲンを撮り、骨の状態を確認するのも大切です。さらに、噛み合わせがずれないよう定期的にチェックし、必要なら調整します。生活習慣も重要で、喫煙や過度な飲酒はインプラントの寿命を縮める可能性があるため、控えるべきです。このように、インプラントは治療後も手間がかかり、患者さんの努力が求められるのです。

治療前後の準備とケア

⚫︎治療前の準備

全身管理

インプラント治療を成功させるためには、全身の健康状態を整えることが不可欠です。たとえば、糖尿病がある人は、血糖値がコントロールされていないと、傷の治りが遅れたり感染しやすくなったりします。HbA1c値(過去数ヶ月の血糖値の平均)を7.0%未満に保つことが理想的です。

骨粗しょう症も注意が必要です。骨密度が低いと、インプラントが安定しにくく、治療前に薬で骨を強くするなどの対策が必要になる場合があります。心臓病で抗凝固薬を飲んでいる人は、出血が止まりにくいリスクがあるため、主治医と相談して薬の調整を検討します。

自己免疫疾患でステロイドを使っている場合も、治癒が遅れる可能性があるため、医師と投薬プランを見直すことが大切です。これらの疾患は、インプラントの成功に直接影響するため、治療前にしっかり管理することが求められます。

生活習慣

生活習慣の見直しも重要です。喫煙は、治癒を遅らせ、インプラントの失敗リスクを高める大きな要因です。手術の少なくとも2週間前から禁煙し、できれば完全にやめるのが理想です。たとえば、タバコのニコチンが血管を収縮させ、血流を悪くするため、骨とインプラントの結合がうまくいかない場合があります。

アルコールも過度に摂取すると治癒を妨げるため、手術前後は控えめにすることが推奨されます。また、栄養バランスの取れた食事も大切で、タンパク質やビタミンC、Dを意識的に摂ることで、体の回復力を高められます。たとえば、魚や野菜、果物を積極的に食べる習慣をつけると良いでしょう。

口腔準備

口の中の状態を整えるのも必須です。歯周病がある場合、インプラントが失敗するリスクが高まるため、治療前に徹底的に治しておく必要があります。たとえば、歯茎の炎症や出血があるなら、クリーニングや薬で改善します。

虫歯も放置せず、手術前に治療を済ませます。口の中が清潔でないと、細菌がインプラント部分に感染する恐れがあるからです。さらに、普段の歯磨きやフロスの習慣を見直し、正しい方法を身につけることも大切です。歯科医師から指導を受け、実践することで、治療の準備が整います。

相談

治療を始める前には、歯科医師との詳細な相談が欠かせません。治療の具体的なステップや期間、期待できる結果と限界、リスク、費用、代替案(ブリッジや入れ歯など)をじっくり話し合います。たとえば、「どれくらい時間がかかるのか」「見た目はどこまで自然になるのか」「もし失敗したらどうなるのか」といった疑問を解消し、不安を取り除きます。

費用の支払い方法や、術後のケアについても確認し、現実的な計画を立てます。患者さんの希望と治療の現実が一致するよう、時間をかけて話し合うことで、納得した状態で治療に臨めるのです。

⚫︎術後のケア

直後

手術直後の24~48時間は、慎重なケアが必要です。まず、出血については、縫合によって自然に止まるのが一般的ですが、軽い滲み程度の出血が見られる場合があります。これは正常な範囲内で、通常は自然に収まります。ただし、出血が長時間続く場合や量が多い場合は、速やかに担当の歯科医師に連絡してください。

腫れや痛みが気になる場合、頬を軽く冷やすことで一時的に楽になることがありますが、過度な冷却は避けてください。冷やす場合は、氷嚢を直接長時間当てるのではなく、タオルで包んだものを短時間(5~10分程度)使用し、その後休憩を挟む程度に留めましょう。過剰に冷やすと血流が低下し、治癒が遅れる可能性があるためです。

頭を少し高くして休むことで、血流が安定し、腫れや不快感を軽減する効果が期待できます。安静を保ち、無理のない姿勢で過ごすことが回復を助けます。

食事は、熱いものや刺激物を避け、柔らかくて冷たいもの(スープやヨーグルト)を摂ります。ストローを使うと圧がかかり、出血が増える恐れがあるので使わないようにしましょう。

感染予防

感染を防ぐために、抗生物質を医師の指示通りに飲みます。たとえば、手術前後に5~7日分の処方が出ることが多いです。口腔衛生も重要で、手術当日は歯磨きを控えますが、翌日からは医師の指示に従い、慎重にケアを始めます。

塩水やクロルヘキシジン液でのうがいは、口の中を清潔に保ち、細菌の増殖を抑えます。たとえば、1日数回、食後に行うと効果的です。これで、インプラント部分の感染リスクを大幅に減らせます。

その後

術後数週間から数ヶ月は、長期的なケアが始まります。歯磨きは手術部位を避けつつ、他の部分を普段通り行い、医師の指示があれば特殊なブラシを使います。フロスはまだ控えめにし、様子を見ながら徐々に取り入れます。

定期的な検診で経過を確認し、異常があればすぐ報告します。たとえば、過度な痛みや腫れ、発熱は要注意です。この期間のケアが、インプラントの成功を左右するのです。

⚫︎長期的なケア

毎日のケア

インプラントを長持ちさせるには、毎日の丁寧なケアが欠かせません。歯ブラシはやわらかめにしてフッ素入りの歯磨き粉を使い、1日2~3回、インプラント周囲を特に慎重に磨きます。電動歯ブラシも効果的で、手動よりプラークをしっかり取れる場合があります。

フロスや歯間ブラシで、インプラントの隙間を清掃し、抗菌性のマウスウォッシュで細菌を減らします。舌の掃除も忘れず、口臭予防にもつながります。これを習慣化することで、インプラントを清潔に保てます。

何といってもインプラントで怖いのはインプラント周囲炎です。インプラントの周りに歯垢が付着して清掃状態が悪いと、歯垢の周りで口腔内細菌の活動が活発になり、歯ぐきに感染症を引き起こします。

この感染症は歯ぐきからどんどん奥に進み骨を溶かしてしまいます。

そうするとせっかくのインプラントが抜け落ちてしまいます。

毎日のケアを欠かさず長持ちさせて下さい。

検診

半年に1回の定期検診が推奨されますが、状況によっては3~4ヶ月ごとになることもあります。検診では、歯肉の状態やインプラントの安定性、噛み合わせをチェックし、専門家によるクリーニングで歯石や汚れを取ります。

年に1回はレントゲンを撮り、骨の状態を確認します。これで、問題を早期に発見し、簡単な治療で済ませられる可能性が高まります。医師からのアドバイスも受け、生活習慣を見直す良い機会です。

習慣

禁煙は必須で、タバコはインプラント周囲炎のリスクを高めます。食事はカルシウムやビタミンDを多く含むものを摂り、骨を強く保ちます。たとえば、牛乳や魚、緑黄色野菜が良い選択です。過度な飲酒も避け、口の乾燥を防ぎます。何か異常(痛みや腫れ、動揺)を感じたらすぐ医師に相談し、鏡で歯肉の変化をチェックする習慣も大切です。これで、インプラントを長く健康に保てるのです。

よくある質問と回答

⚫︎痛みは?

「インプラント治療は痛いですか?」とよく聞かれますが、手術中は局所麻酔を使うため、ほとんど痛みを感じません。麻酔が効いている間は不快感も少なく、患者さんの多くが「思ったより楽だった」と感想を述べます。ただし、麻酔の注射時に軽いチクッとした感覚がある場合もあります。

術後は多少の腫れや違和感が出ることがありますが、これは治癒の一部で、通常は数日から1週間で落ち着きます。たとえば、処方された鎮痛剤を飲んだり、氷で冷やしたり、軟らかい食事を取ることで楽になります。痛みが長引く場合は、医師に相談するのが賢明です。

⚫︎寿命は?

「インプラントはどれくらい持ちますか?」という質問も多いです。適切なケアを続ければ、10年以上使い続けられ、時には一生持つこともあります。たとえば、毎日の歯磨きや半年ごとの検診を欠かさず、喫煙を避ければ、非常に長持ちします。

寿命は、口腔ケアや生活習慣、全身の健康に左右されます。研究では、10年後の生存率が90~95%以上と高く、上部の人工歯は7~15年で交換が必要な場合もありますが、インプラント自体は非常に耐久性があります。

⚫︎食事は?

「手術後、いつ普通に食べられますか?」という疑問もよくあります。手術直後は24~48時間、液体や柔らかいもの(スープやプリン)に限り、1週間でマッシュポテトやパスタに移行します。2~4週間で少し固いものも試せ、2~3ヶ月でほぼ通常の食事が可能です。

ただし、回復速度は個人差や骨の状態、治療の複雑さで変わります。無理に硬いものを食べるとインプラントに負担がかかるので、医師の指示に従うことが大切です。

⚫︎病気でも?

「全身疾患があっても治療できますか?」と心配する人もいます。たとえば、糖尿病は血糖がコントロールされていれば(HbA1c 7.0%未満)、治療可能です。骨粗しょう症や心疾患も、医師と調整すれば対応でき、自己免疫疾患やがん治療歴も慎重な評価で可能になる場合があります。

重要なのは、主治医と歯科医師が連携し、リスクを把握することです。既往歴を伝え、検査や調整を済ませれば、多くの人がインプラントの恩恵を受けられます。

⚫︎ブリッジと?

「インプラントとブリッジの違いは?」という質問も多いです。インプラントは骨に埋め込む独立型で、隣の歯を削らず、10年以上持つことが多いです。ブリッジは隣の歯を削り、5~15年で交換が必要で、骨の刺激がないため痩せやすいです。インプラントは清掃が簡単で、ブリッジは下部が掃除しにくいです。治療期間はインプラントが長く、初期費用も高いですが、長期的なメリットを考えると価値があります。医師と相談し、状況に合う方を選びましょう。

リスクと副作用

⚫︎感染

インプラント治療では、感染がリスクの一つです。手術中や術後に細菌が入ると、腫れや痛み、熱が出ることがあります。たとえば、糖尿病や喫煙、不衛生な口内環境だとリスクが高まります。

予防には、術前の抗生物質(1時間前投与)、無菌環境での手術、術後5~7日の抗生物質、患者へのケア指導(うがいやブラシ使用)が効果的です。症状が出ればすぐ医師に連絡し、早期治療で対処できます。

⚫︎神経損傷

神経を傷つけるリスクもあり、特に下顎の奥歯や上顎前歯で注意が必要です。たとえば、下歯槽神経を傷つけると、唇や舌にしびれや痛みが出たり、味覚が変わったりします。

これを防ぐには、3D CTで神経の位置を確認し、サージカルガイドで精密に手術します。経験豊富な医師が短いインプラントを選ぶことも有効です。起きた場合、軽度なら自然回復、重度なら追加治療が必要です。

インプラントの失敗はまれ(成功率95%)ですが、骨不足、感染、過度な負荷、喫煙などが原因で起こります。たとえば、インプラントが動いたり、痛みが続く場合、骨吸収や炎症が疑われます。

⚫︎失敗

対応策は、除去、骨再生、再埋入、他の治療法(ブリッジなど)の検討です。適切な計画とケアでリスクは減らせます。

その他歯肉炎やインプラント周囲炎、歯肉退縮による見た目の問題、上顎洞のトラブル、チタンアレルギーなどもまれにあります。口腔衛生、早期発見、精密診断、適切な素材選択で、これらも管理可能です。

治療後の生活

⚫︎食事

インプラントが安定すればほとんどの食べ物を楽しめますが、硬いもの(ナッツやキャンディー)は注意が必要です。術後は柔らかい食事から始め、徐々に戻します。たとえば、熱いものや酸性の食品も初期は控え、栄養バランスを考えて水分を多めに摂ります。

⚫︎ケア

毎日の丁寧な清掃が必須です。柔らかい歯ブラシで3回磨き、歯間ブラシやフロス、水流式フロス、抗菌洗口液を使います。舌の掃除も忘れず、口全体を清潔に保ちます。

⚫︎検診

年2回の検診で、歯肉や安定性、噛み合わせをチェックし、クリーニングとレントゲンで状態を確認します。早期発見が重要で、医師のアドバイスを受けられます。

習慣喫煙は治癒を遅らせ、成功率を下げるので禁煙が理想です。過度な飲酒や激しい運動も控え、ストレス管理で免疫を保ちます。これでインプラントを長く使えます。

まとめ

インプラントは自然で長持ちする優れた治療ですが、高額でリスクもあり、ケアが欠かせません。医師と相談し、準備と習慣を整えれば、健康で自信ある生活が手に入ります。治療の知識を深め、自分に合う選択をすることで、笑顔と快適さが戻ってきます。インプラントは自然で長持ちする優れた治療ですが、高額でリスクもあり、ケアが欠かせません。医師と相談し、準備と習慣を整えれば、健康で自信ある生活が手に入ります。治療の知識を深め、自分に合う選択をすることで、笑顔と快適さが戻ってきます。

インプラントメーカーいろいろ

⚫︎アストラ、ノーベルバイオケア、ストローマン、オステム

インプラント治療の成功は、歯科医師の技術だけでなく、使用するインプラントの品質に大きく影響されます。世界には多くのインプラントメーカーが存在しますが、ここでは特に優れた4社――スウェーデンのアストラ(Astra Tech Implant System)、スウェーデン発祥で現在はスイスを拠点とするノーベルバイオケア(Nobel Biocare)、スイスのストローマン(Straumann)、そして韓国のオステム(Osstem)――を取り上げます。これらはそれぞれ独自の歴史と技術を持ち、世界中で広く採用されています。ここでは、各社の特徴や強み、世界シェアを解説し、どのメーカーがどのようなニーズに適しているのかを見ていきます。特に、アストラはその信頼性と設計で若干の優位性を持つ選択肢として注目されます。

⚫︎アストラ(Astra Tech Implant System)

概要と歴史: アストラテックはスウェーデンで生まれ、現在はアメリカのデンツプライシロナ社傘下にあるインプラントメーカーです。1996年に日本で認可を受けて以来、世界中で高い評価を得ており、ノーベルバイオケアやストローマンと並ぶ「世界三大インプラントメーカー」の一つとして知られています。

特徴:

骨との結合速度: アストラのインプラントは、表面を粗く加工する技術により、骨との結合(オッセオインテグレーション)が迅速で強固です。通常、他のインプラントが結合に6~12週間かかるのに対し、アストラはそれより短い期間で安定する傾向があります。

結合部の設計: インプラントとアバットメント(上部構造をつなぐ部品)の結合部に独自の「コニカルシールデザイン」を採用。これにより、ネジの緩みが少なく、細菌の侵入を防ぎ、長期間の安定性が期待できます。

骨吸収の抑制: 噛む力による負荷を適切に分散する設計で、骨の吸収を最小限に抑えます。これにより、インプラント周囲の骨の高さが維持され、審美性や機能性が長持ちします。

強み: 長期的な安定性と信頼性が際立ち、特に骨の状態が不安定な患者や、審美性を重視するケースに適しています。また、豊富な臨床データに裏打ちされた実績があり、学術的な検証も進んでいます。

世界シェア: 具体的な数値は公開されていませんが、ストローマンやノーベルバイオケアに次ぐシェアを持ち、特に欧米市場で高い支持を得ています。

適したニーズ: 長期使用を前提とした治療や、骨の状態が難しい症例での信頼性を求める患者に最適。

⚫︎ノーベルバイオケア(Nobel Biocare)

概要と歴史: スウェーデン発祥で、現在はスイスに拠点を置くノーベルバイオケアは、インプラントのパイオニアとして知られています。1965年にブローネマルク教授がチタン製インプラントを初めて臨床応用したことから始まり、60年以上の歴史を誇ります。

特徴:

インプラントの元祖: 世界初のインプラント治療を行ったメーカーであり、「オッセオインテグレーション」の概念を確立しました。40年以上使い続けられた症例も報告されています。

タイユナイト表面: 独自の表面加工「TiUnite」を施したインプラントは、骨との結合を促進し、早期の負荷にも対応可能。治療当日に仮歯を装着できるケースもあります。

豊富なラインナップ: インプラントの長さや太さのバリエーションが豊富で、骨が細い症例や全顎治療(All-on-4など)にも対応。柔軟性が非常に高いです。

強み: 長い歴史と実績に裏打ちされた信頼性、先進的な技術開発(例: サージカルガイドシステムやザイゴマインプラント)が特徴。審美性と機能性を両立させたい患者に支持されています。

世界シェア: 世界シェアで第2位(約20-25%程度と推定)とされ、ストローマンに次ぐ地位を確立。特に北米や欧州で広く採用されています。

適したニーズ: 審美性を重視する前歯部治療や、複雑な症例(骨量不足など)への対応を求める患者に適しています。

⚫︎ストローマン(Straumann)

概要と歴史: スイスのバーゼルに本社を置くストローマンは、50年以上の歴史を持つメーカーで、世界シェアNo.1を誇ります。国際的学術組織ITIとの連携により、科学的根拠に基づいた製品開発を行っています。

特徴:

SLActive表面: 独自の「SLActive」技術により、超親水性の表面を実現。骨との結合が通常6~8週間かかるところを3~4週間に短縮し、治療期間を大幅に削減します。

Roxolid素材: チタンとジルコニウムを組み合わせた高強度合金を採用。細いインプラントでも高い機械的強度を持ち、骨量が少ない症例にも適用可能です。

高い成功率: 10年間の臨床研究で成功率97%、生存率98.8%を記録。インプラント周囲炎の発生率も低いとされています。

強み: 世界トップシェアを支えるのは、迅速な骨結合と長期安定性。特に日本人のような骨幅が狭い患者にも適合しやすい小型インプラントが評価されています。

世界シェア: 約25-30%と推定され、世界70カ国以上で1300万本以上が使用されています。日本でも多くの歯科医院が採用。

適したニーズ: 治療期間を短縮したい患者や、骨量が少ないケースでの安全性と耐久性を重視する患者に最適。

⚫︎オステム(Osstem)

概要と歴史: 韓国のメーカーで、1997年に設立され、アジア市場を中心に急速に成長。世界シェアでは第6位(約5-10%程度)ですが、アジアではトップクラスのシェアを誇ります。

特徴:

アジア人に最適化: アジア人の骨格(顎が小さく骨量が少ない傾向)を考慮した設計。特に「ワイド&ショート」インプラントは、骨造成手術を回避しやすくします。

SA表面: 優れた表面性状「SA surface」を採用し、初期固定が容易で骨との結合がスムーズ。ストローマンのSLA技術に似た特性を持ちます。

コストパフォーマンス: 高品質ながら価格が抑えられており、他のトップメーカーと比較して手頃です。

強み: アジア人の体型に合わせた設計と、リーズナブルな価格で高品質を実現。特に韓国や日本での臨床実績が豊富で、信頼性も向上しています。

世界シェア: グローバルでは6位ですが、アジア市場ではシェアNo.1。特にコスト意識の高い地域で支持されています。

適したニーズ: 予算を抑えつつ高品質なインプラントを求める患者や、アジア人の骨格に適した治療を希望する患者に適しています。

比較と結論

信頼性と歴史: ノーベルバイオケアが最長の歴史を持ち、アストラとストローマンも長期データで信頼性を証明。オステムは歴史が浅いものの急速に評価を上げています。

治療期間: ストローマンのSLActiveが最も早く、アストラとノーベルバイオケアも優れる。オステムは標準的。

コスト: オステムが最も手頃で、ストローマン、ノーベルバイオケア、アストラは高価格帯。

世界シェア: ストローマン(1位)、ノーベルバイオケア(2位)、アストラ(3位クラス)、オステム(6位)。

アストラは信頼性と設計のバランスで若干優位性を持ちますが、ニーズ次第で選択肢が変わります。治療期間を重視するならストローマン、歴史と柔軟性を求めるならノーベルバイオケア、コストを抑えたいならオステムが候補に挙がります。最終的には、患者の骨状態や予算、歯科医師の意見を基に選ぶのが賢明です。

12.最後に当院ではアストラを使用しているので、アストラの臨床データをご紹介します。

スウェーデンで開発され、世界中で広く使用されています。特にその長期的な成功率や骨との結合性能に関するデータが豊富で、学術的な裏付けが強みとなっています。

アストラの臨床データ概要

1. 成功率と生存率

長期データ: アストラのインプラントは、10年以上の追跡研究で高い成功率を示しています。例えば、1990年代から2000年代初頭に実施された複数の臨床研究では、**インプラント生存率が95~98%**に達すると報告されています。これは、インプラントが抜け落ちたり機能しなくなったりせず、口腔内で維持されている割合を示します。

成功率: 単なる生存だけでなく、審美性や機能性が維持された状態での成功率も高く、**約94~97%**とされています。これは、インプラント周囲炎や骨吸収が少ないことを裏付けています。

具体例: 2011年の研究(Berglundh et al.)では、10年間の追跡でアストラインプラントの生存率が97.7%であり、インプラント周囲の骨喪失が平均0.3mm未満であることが確認されました。

2. 骨との結合(オッセオインテグレーション)

結合速度: アストラの特徴である「OsseoSpeed」表面加工技術(フッ化水素で処理されたチタン表面)は、骨との結合を促進します。臨床研究では、通常のインプラントが6~12週間で安定するのに対し、アストラは4~6週間で十分な初期安定性を得られると報告されています。

初期固定力: インプラント埋入直後のトルク値(初期固定力)が平均35Ncm以上で、早期負荷(即時仮歯装着)にも対応可能であることが示されています(例: Norton, 2013)。

科学的根拠: OsseoSpeed表面は、骨細胞の付着を高め、骨形成を促進するマイクロ構造が特徴。これにより、特に骨質が軟らかい患者でも高い成功率が得られています。

3. 骨吸収の抑制

骨レベルの維持: アストラの「コニカルシールデザイン」(インプラントとアバットメントの密閉性の高い結合部)は、噛む力による負荷を分散し、骨吸収を最小限に抑えます。臨床データでは、10年間で平均骨喪失量が0.3~0.5mm程度と、他のメーカー(例: 平均1mm前後)と比べて少ない傾向があります。

研究例: 2008年の論文(Pjetursson et al.)では、アストラインプラントを使用した症例の5年間の骨喪失が平均0.24mmであり、審美性や長期安定性に寄与すると評価されています。

4. インプラント周囲炎の発生率

低い炎症リスク: コニカルシールデザインにより、結合部への細菌侵入が抑えられ、インプラント周囲炎の発生率が低いことが報告されています。10年間の追跡研究で、インプラント周囲炎の発症率は**約2~5%**と、他のシステム(5~10%程度)と比較して低い水準です。

データ例: 2017年のメタアナリシス(Derks et al.)では、アストラを含むプレミアムインプラントシステムは、インプラント周囲炎のリスクが低減される傾向にあると結論づけられています。

5. 臨床応用の多様性

症例数: アストラは世界中で数百万本以上が埋入されており、症例データが豊富です。特に、骨量が少ない症例や即時埋入(抜歯直後のインプラント埋入)でも高い成功率が確認されています。

即時負荷のデータ: 特定の条件下で即時負荷を行った場合、**成功率が92~95%**と報告されており、早期回復を求める患者にも適応可能(例: Glauser et al., 2007)。

6. 患者満足度と審美性

審美的成果: 前歯部への適用でも、骨吸収が少ないため歯肉ラインが安定しやすく、審美的な満足度が高いとされています。患者ベースの調査では、90%以上の患者が機能性と見た目に満足と回答(デンツプライシロナの公式資料より)。

具体例: 2015年の研究(Cooper et al.)では、アストラを使用した前歯インプラントの審美スコア(PES/WES)が平均13.5/14と高評価でした。

主な臨床研究と出典

以下は、アストラの臨床データを裏付ける代表的な研究です:

Berglundh, T. et al. (2011): 「10年間のインプラント生存率と骨維持に関する研究」 - 生存率97.7%、骨喪失0.3mm未満。

Pjetursson, B. E. et al. (2008): 「5年間の骨レベル変化」 - 平均骨喪失0.24mm。

Norton, M. R. (2013): 「OsseoSpeed表面の初期安定性」 - 4週間での骨結合を確認。

Derks, J. et al. (2017): 「インプラント周囲炎のメタアナリシス」 - アストラの低リスクを指摘。

Glauser, R. et al. (2007): 「即時負荷の臨床結果」 - 成功率92%以上。

まとめ

アストラの臨床データは、高い生存率(95~98%)、迅速な骨結合(4~6週間)、骨吸収の抑制(0.3~0.5mm/10年)、低いインプラント周囲炎リスク(2~5%)を特徴とし、他のトップメーカー(ストローマンやノーベルバイオケア)と比較しても遜色ない結果を示しています。特に、長期的な安定性と審美性を求める症例で強みを発揮し、科学的根拠に基づく信頼性が評価されています。

歯周病と全身疾患

-歯科医院でのメインテナンスが命を守る鍵に-

歯周病とは何か?

歯周病は、歯茎が腫れたり、痛みが出たり、出血などの症状を伴い、歯を支える歯茎(歯肉)や骨に炎症を引き起こす慢性的な疾患で、歯垢(プラーク)と呼ばれる細菌の塊が主な原因です。この病気は、軽度の「歯肉炎」から始まり、進行すると「歯周炎」となり、歯がグラついたり抜けたりする深刻な状態に発展します。日本では、成人の約80%が何らかの歯周病の兆候を持っているとされ、非常に身近な健康問題です。
歯肉炎の段階では、歯茎が赤く腫れ、歯磨き時に出血することが特徴です。歯周炎に進行すると、歯茎が下がって歯が長く見えたり、口臭が強くなったり、さらには歯を支える骨が溶けてしまいます。この段階では自覚症状が少ない「サイレントディジーズ(沈黙の病気)」とも呼ばれ、気づいた時には手遅れになることもあります。
しかし、歯周病の影響は口の中だけに留まりません。近年、歯周病が全身疾患と深く関わっていることが科学的に明らかになり、心臓、血糖、呼吸器、妊娠など、命に関わる健康リスクと結びついています。この事実を踏まえると、歯周病の治療と予防、特に歯科医院での定期的なメインテナンスがどれほど重要かがわかります。

歯周病の原因と進行のメカニズム

歯周病を引き起こす原因は多岐にわたりますが、主に次の要素が関与しています。  

歯垢と歯石: 歯磨きが不十分だと、歯垢が歯や歯茎の間に溜まり、細菌が繁殖します。この歯垢が硬化した歯石は自宅では除去できず、炎症を悪化させます。  

生活習慣: 喫煙は歯茎の血流を悪化させ、免疫力を低下させるため、歯周病のリスクを2~6倍に高めます。過度な飲酒や栄養不足(特にビタミンCやDの欠乏)も同様です。  

全身疾患: 糖尿病、ホルモンの乱れ(妊娠や更年期)、免疫系の病気は歯周病を進行させます。  

遺伝的要因: 家族に歯周病が多い場合、遺伝的にリスクが高い傾向があります。  

不適切な口腔ケア: 歯ブラシの使い方が悪い、フロスや歯間ブラシを怠ると、細菌が蓄積しやすくなります。歯周病は、細菌が歯茎に炎症を起こし、その炎症が歯周ポケット(歯と歯茎の隙間)を深くすることで進行します。深くなったポケットで細菌がさらに繁殖し、骨を溶かす毒素を放出。この悪循環が全身に影響を及ぼすきっかけとなるのです。

歯周病が全身疾患に与える深刻な影響

歯周病は口の中の病気にとどまらず、全身に波及するリスクが明らかになっています。

歯周病細菌は最初は食後に残った食べかすを栄養に繁殖していきます。しかし時間の経過とともに歯茎の中の毛細血管に流れる血液を狙い、豊富な栄養源を手に入れるために歯肉に炎症を引き起こし、歯周組織を破壊し、血管壁を壊し血液に到達します。その後、歯周病細菌が血流を通じて各臓器に運ばれ、臓器内で発見されるという研究データが多く発表され、その深刻さを裏付けています。

以下に主要な影響を詳しく見ていきます。

3.1 心疾患との関連:歯周病細菌が心臓で発見される

歯周病と心疾患の関連は、多くの研究で確認されています。たとえば、2018年の『Journal of Periodontology』に掲載された研究では、歯周病患者の心臓組織や動脈硬化のプラークから、ポルフィロモナス・ジンジバリス(歯周病の主要な原因菌)が検出されました。この細菌は、血流に乗って心臓に到達し、血管内で炎症を起こし、動脈硬化や心筋梗塞のリスクを高めると考えられています。

別の研究(『Circulation』2016年)では、歯周病患者の心疾患リスクが1.5~2倍に上昇し、重度の歯周病ではそのリスクがさらに顕著であると報告されています。歯周病細菌が心臓弁や冠動脈で発見されるケースもあり、口の中の健康が心臓の命運を握っていると言えるでしょう。

3.2 糖尿病との双方向の関係

歯周病と糖尿病は互いに悪影響を及ぼす双方向の関係にあります。糖尿病患者は血糖コントロールが不良だと歯茎の免疫力が低下し、歯周病が進行しやすくなります。一方、歯周病の炎症はインスリン抵抗性を高め、血糖値を悪化させます。

『Diabetes Care』(2013年)の研究では、歯周病治療を受けた糖尿病患者のHbA1c(血糖値の指標)が平均0.4~1%改善したと報告されています。さらに、歯周病細菌が膵臓や肝臓で検出されたケースもあり、全身の代謝に影響を与えている可能性が示唆されています。

3.3 妊娠合併症と歯周病

妊婦の歯周病は、早産や低体重児出産のリスクを2~7倍に高めるとされます。『American Journal of Obstetrics and Gynecology』(2006年)によると、歯周病菌が胎盤や羊水中で発見され、子宮内感染を引き起こす可能性が指摘されています。この細菌が血流を通じて胎児に影響を与え、早産を誘発するのです。妊娠中の口腔ケアが母子の健康に直結する重要な例です。

3.4 肺炎と高齢者のリスク

高齢者では、歯周病菌が誤嚥性肺炎の原因となることがあります。『Journal of Dental Research』(2014年)の研究では、歯周病患者の肺組織から歯周病関連細菌が検出され、誤嚥による肺炎リスクが3倍以上高いとされました。特に、口腔ケアが不十分な場合、細菌が気道に入り込み、命に関わる感染症を引き起こします。

3.5 その他の疾患との関連

歯周病は関節リウマチやアルツハイマー病とも関連が指摘されています。たとえば、2019年の『Science Advances』の研究では、歯周病菌ポルフィロモナス・ジンジバリスがアルツハイマー患者の脳内で検出され、認知症の進行に関与する可能性が示唆されました。また、リウマチ患者の関節液からも同様の細菌が見つかっています。これらのデータから、歯周病が単なる口の病気ではなく、全身の炎症を誘発し、複数の臓器で細菌が発見される「全身性のリスク因子」であることがわかります。

歯周病治療のプロセス

歯周病が全身疾患にこれほど影響を与える以上、適切な治療が不可欠です。治療は進行度に応じて次のように行われます。

4.1 初期治療:スケーリングとルートプレーニング

軽度の場合、歯科医院で「スケーリング」(歯石除去)と「ルートプレーニング」(歯根の清掃)が行われます。これにより、歯垢や歯石が取り除かれ、炎症が抑えられます。通常、数回に分けて行われ、正しい歯磨きの仕方も指導されます。

4.2 進行した場合:外科的治療

中度~重度の歯周炎では、外科的治療が必要な場合があります。  

フラップ手術: 歯茎を切開し、深い歯石や感染組織を除去。  

骨再生療法: 溶けた骨を再生するGTR法やエムドゲインを使用。

これらは局所麻酔で実施され、回復には数週間かかります。

4.3 全身疾患との連携治療

糖尿病や心疾患が関与する場合、内科医と連携し、血糖管理や禁煙指導が並行して行われます。歯周病治療が全身の炎症を軽減し、疾患の改善に寄与することが期待されます。さらに、近年の研究により、歯周病細菌(特にPorphyromonas gingivalisやAggregatibacter actinomycetemcomitansなど)が歯肉の炎症部位から血液に乗って全身に運ばれ、血管壁に付着することで炎症を引き起こすことが明らかになっています。たとえば、2005年の米国心臓協会(AHA)の報告では、歯周病患者の動脈硬化性プラークから歯周病細菌のDNAが検出され、これが血管内皮の炎症やアテローム形成を促進する可能性が示唆されました。また、2012年のJournal of Clinical Periodontologyに掲載された研究(Tonetti et al.)では、歯周病治療を受けた患者群で血中の炎症マーカー(CRPやIL-6)が有意に低下し、心血管リスクが改善したことが報告されています。このメカニズムは、歯周病が心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患リスクを1.5~2倍に高めるとする疫学データ(例: Humphrey et al., 2008, American Journal of Preventive Medicine)とも一致します。このため、歯周病の管理は単なる口腔内の治療にとどまらず、全身の炎症性疾患の予防や管理において重要な役割を果たします。特に糖尿病患者では、歯周病が血糖コントロールを悪化させる双方向の関係が確認されており(例えば、Diabetes Care 2018年のメタアナリシスでHbA1cが平均0.4%改善)、連携治療の効果がより顕著に現れることが期待されます。こうした科学的根拠に基づき、歯周病治療は全身健康の向上に寄与する包括的なアプローチとして位置づけられています。

歯科医院でのメインテナンスがなぜ重要か

治療後の歯周病は再発しやすく、全身疾患への影響を防ぐには、歯科医院での定期メインテナンスが不可欠です。

5.1 メインテナンスの内容と頻度

頻度: 一般的に3~6ヶ月に1回、リスクが高い場合は1~2ヶ月ごと。 

内容: 歯垢・歯石の除去、歯茎の健康チェック、レントゲンによる骨の状態確認。  

効果: 再発を防ぎ、全身疾患リスクを低減。たとえば、定期クリーニングで心疾患リスクが約30%低下したとのデータ(『American Heart Journal』2011年)もあります。

自宅でのケアでは歯石や深いポケットの細菌を完全に除去できないため、専門家の介入が必須です。

5.2 全身疾患予防への貢献

メインテナンスは、歯周病菌が血流に乗って心臓や肺、脳に到達するのを防ぎます。研究で臓器内で検出された細菌は、口腔内の管理不足が原因とされており、定期的なクリーニングがそのリスクを大幅に減らします。たとえば、肺炎予防では、半年ごとのメインテナンスで入院リスクが半減した例も報告されています。

5.3 患者の意識と継続の重要性メインテナンスは一度で終わるものではなく、継続が鍵です。歯周病の再発は気づきにくいため、定期的に歯科医院でチェックを受けることで、早期発見・早期対処が可能になります。これが全身の健康を守る基盤となります。

自宅でのケアと歯科医院の連携

メインテナンスの効果を最大化するには、自宅でのケアも重要です。  

歯磨き: 1日2~3回、2分以上、歯と歯茎の境目を45度で丁寧に。  

フロス・歯間ブラシ: 歯間の歯垢を除去。  

生活習慣: 禁煙、野菜や果物を多めに摂り、ストレス管理。

しかし、自宅ケアだけでは不十分。歯科医院でのプロフェッショナルなクリーニングが、全身疾患を防ぐ最終防衛線です。

メインテナンスで歯周病と全身疾患を管理する

歯周病は、歯を失うだけでなく、心疾患、糖尿病、妊娠合併症、肺炎、認知症など、全身疾患に深刻な影響を与える病気です。研究で歯周病細菌が心臓、肺、脳、胎盤で発見されている事実は、その危険性を物語ります。歯科医院での治療で進行を止め、3~6ヶ月に1回のメインテナンスで再発を防ぐことが、口と体の健康を守る最善策です。「歯茎が腫れる」「出血する」などのサインを見逃さず、早めに受診を。そして、定期的なメインテナンスを習慣化してください。歯周病を管理することは、歯の健康だけでなく全身疾患を予防し、命を守るための大きな一歩です。

虫歯治療について

虫歯はズキズキ痛みが出始めたら緊急事態です。

痛みが出るということは神経が感染を起こし始めた証拠です。ズキズキ痛みが出始める前のしみるくらいの状態のうちに歯医者に行きましょう。

和光で虫歯治療をするなら歯科タケダクリニックへご相談下さい。

放置すると神経を抜くことになり、神経を抜いた歯は枯れ木のようにもろくなっていき、いずれは抜くことになります。虫歯(う蝕)は、口腔内の細菌が糖を代謝して酸を生成し、その酸が歯の表面の硬いエナメル質を溶かすことで始まる病気です。歯の内側は象牙質と呼ばれる柔らかい部分になるため、細菌が侵入すると一気に虫歯が進行し神経まで到達します。放置すると歯の痛み、感染症、さらには歯の喪失につながる可能性があるため、早期の対処が不可欠です。この記事では、虫歯の進行段階、治療法、費用、予防策などを詳しく掘り下げて解説します。

虫歯の進行段階

虫歯は進行度合いによって4つのステージ(C1~C4)に分類されます。

C3以上になると自発痛が出てきます。

自発通が出始めると神経が細菌感染を起こしてしまった可能性が高く、治療方法としては神経を取り除くしか方法がなくなります。

くれぐれも痛みがでる前に治療をすることが重要です。

  1. C1(初期虫歯) まったく痛くない
    • 特徴: 歯の最外層であるエナメル質に小さな白濁や黒ずみが生じる。まだ穴は開いていない。
    • 症状: 痛みやしみる感覚はほぼなく、見た目で気づくことが多い。
    • 進行速度: 比較的ゆっくりで、適切なケアで進行を止められる可能性がある。
  2. C2(象牙質虫歯) ちょっと染みる程度
    • 特徴: 虫歯がエナメル質を突破し、その下の象牙質に到達。穴が開き始める。
    • 症状: 冷たいもの、甘いもの、酸っぱいものに反応してしみたり、軽い痛みを感じる場合がある。
    • 進行速度: 象牙質はエナメル質より柔らかいため、進行が早まる。
  3. C3(神経まで達した虫歯) 痛い~激痛
    • 特徴: 虫歯が歯髄(神経や血管が集まる部分)に到達。炎症や感染を引き起こす。
    • 症状: ズキズキとした強い痛み、熱いものへの敏感さ、噛むときの不快感。放置すると歯髄炎や根尖性歯周炎に発展。
    • 進行速度: 急速に悪化し、全身への影響(発熱や腫れ)も出る可能性がある。
  4. C4(歯根のみ残った状態) 激痛~神経の死滅
    • 特徴: 歯冠がほぼ崩壊し、根だけが残る。歯髄が死に、歯根に膿が溜まることも。
    • 症状: 痛みが消失する場合もあるが、歯茎の腫れや膿の排出が起こる。

進行速度: 歯の修復がほぼ不可能な状態に到達。

虫歯治療の主な方法

虫歯の治療法は進行度や患者の希望、歯の状態によって異なります。以下に、各段階ごとの詳細な治療法を説明します。(保険診療)

  1. フッ素塗布や再石灰化(C1の場合)
    • 内容: 高濃度のフッ素を歯に塗布し、エナメル質の再石灰化を促す。削る必要がない非侵襲的治療。
    • 使用場面: 初期虫歯で穴が開いていない場合に適用。
    • メリット: 歯を削らずに済む、自然治癒を期待できる。
    • デメリット: 進行が進むと効果が薄れるため、定期的な経過観察が必要。
  2. 詰め物(コンポジットレジンやインレー)(C2の場合)
    • コンポジットレジン:
      • プラスチック樹脂を虫歯を削った部分に直接詰める方法。
      • メリット: 1回の通院で済む、色が自然で目立たない。
      • デメリット: 大きな虫歯には不向き、耐久性がやや劣る。
    • インレー:
      • 金属(金や銀)やセラミックで作られた詰め物を歯にはめる。
      • メリット: 耐久性が高く、噛む力が強い奥歯に適している。
      • デメリット: 型取りが必要で2回以上の通院を要する。
    • 手順: 虫歯をドリルで除去後、歯の形に合わせて詰め物を装着。
  3. 根管治療(C3の場合)
    • 内容: 感染した歯髄を取り除き、根管内を洗浄・消毒後、薬剤で封鎖する。その後、クラウン(被せ物)で補強。
    • 手順:
    • ❶歯に穴を開け、歯髄を取り除く。
    • ❷根管をファイルで清掃し、消毒薬で洗浄。
    • ❸ガッタパーチャ(ゴム状の材料)で根管を充填。(神経を取り除いた隙間を埋めていきます。)
    • ❹土台を立ててクラウンを被せる。

メリット: 歯を残せる可能性がある。

デメリット: 治療期間が長く(2~5回程度)、費用も高め。

  1. 抜歯(C4の場合)
    • 内容: 修復不可能な歯を抜き、その後の治療(ブリッジ、インプラント、入れ歯)を検討。
    • 手順: 麻酔後、鉗子で歯を抜き、必要に応じて縫合。
    • メリット: 感染の拡大を防げる。

デメリット: 歯を抜いた後、骨が瘦せていく。隣の歯が傾いてくる可能性がある。

治療の流れ

1.診察と診断

歯科医師が視診、レントゲン撮影、プロービング(歯の表面を調べる)で虫歯の深さや範囲を確認。

レーザー診断機器を使う医院も増えている。

2.麻酔

局所麻酔(注射)で治療中の痛みを軽減。表面麻酔を併用して注射の痛みを和らげる場合も。

3.虫歯の除去

高速ドリルやレーザー、エアアブレージョン(微粒子を吹き付ける方法)で虫歯を削る。

削る範囲は最小限に抑え、健全な歯質を残すよう配慮。

4.修復

詰め物や被せ物を装着し、噛み合わせを調整。

5.アフターケア

再発防止の指導(歯磨き方法、フロスの使用)、次回の検診日程を提案。

治療にかかる費用と時間

保険適用(日本での目安、2025年3月時点)

C1: フッ素塗布は数百円~1,000円程度。

C2: コンポジットレジンで1,500~3,000円、インレーで3,000~5,000円。

C3: 根管治療で5,000~10,000円+クラウン代(3,000~5,000円)。

C4: 抜歯で1,000~2,000円。

自由診療(世論の金額高騰に伴い変わっていきます。下記は目安にして下さい。)

セラミックインレー: 3万~8万円。

セラミッククラウン: 8万~15万円。

インプラント: 30万~50万円/本。

時間

C1: 15~30分(1回)。

C2: 30分~1時間(1~2回)。

C3: 1時間/回で2~5回。

C4: 30分~1時間(抜歯のみなら1回)。

虫歯治療の注意点

・痛みがなくても放置しない: 神経が死ぬと痛みが消える場合があるが、内部で感染が進行。

・治療後のケアが重要: 詰め物の隙間から再発する「二次う蝕」に注意。毎日の歯磨きとフロスが必須。

・歯科医選び: 最新設備や丁寧な説明をする医院を選ぶ。口コミや初診時の印象で判断。

虫歯予防のポイント

・正しい歯磨き: 朝晩2回、2~3分かけて磨く。フッ素濃度1,000~1,500ppmの歯磨き粉が効果的。

・食生活の改善: 砂糖入り飲料やお菓子を減らし、食後は30分以内に歯磨きか水で口をすすぐ。

・補助ツール: デンタルフロスや歯間ブラシで歯間の汚れを除去。

・定期検診: 6ヶ月に1回、クリーニングとチェックを受ける。

虫歯は早期発見と治療で歯を長く保つことが可能です。痛みがなくても定期的に歯科医院を訪れ、日々のケアを怠らないことが、健康な口腔環境への第一歩です。もし虫歯治療について疑問があれば、ぜひ専門家に相談してみてください。