戦の傷と復興の炎

戦の傷と復興の炎

昭和20年（1945年）、東京大空襲が新宿を焼き尽くした。歌舞伎町、新宿三丁目、淀22時を過ぎると、瓦礫の山と化した。空襲の夜、火の海が町を飲み込み、歌舞伎町や新宿三丁目の家々は灰となった。新宿駅も、プラットホームと鉄骨だけが残り、かつての賑わいは夢のようじゃった。だが、新宿御苑は奇跡的に難を逃れ、緑の木々が静かに立ち尽くした。死傷者は数万人とも言われ、生き残った者は新宿中央公園や高田馬場の防空壕、遠くの農村に逃げ込んだ。町の女たちは、焼けた家を見ながら涙を流し、子どもたちは母の手を握りしめた。
戦争が終わり、昭和20年8月、連合国の兵がやってくると、新宿は復興の第一歩を踏み出した。焼け跡には、闇市がまるでキノコのようにはえた。歌舞伎町には「新宿マーケット」と呼ばれる大きな闇市が生まれ、食料、衣類、進駐軍のチョコレートやタバコが飛び交った。復員兵、戦争孤児、地方からの流れ者が集まり、無法の匂いが漂った。闇市の屋台では、焼いたイカの匂いが立ち込め、酒を飲む男たちの笑い声が響いた。
新宿ゴールデン街もこの頃、闇市の一角から生まれた。小さな飲み屋が軒を連ね、作家や詩人、ジャーナリストが酒を酌み交わし、戦後の混沌を語り合った。狭い路地の提灯が揺れ、夜の静けさに物語が響いた。歌舞伎町は、闇市から娯楽街へと変わり、昭和21年（1946年）には簡素な映画館やキャバレーが生まれ、進駐軍の兵や地元民で賑わった。キャバレーの音楽が漏れ、女たちの笑顔が夜を彩った。
新宿駅も急いで直され、昭和24年（1949年）に今の西口に移った。木造の駅舎が再び旅人を迎え、汽笛の音が希望を運んだ。闇市は整理され、商店街が生まれ、昭和25年（1950年）に小田急百貨店、昭和32年（1957年）に京王百貨店が開業。新宿は戦前の輝きを取り戻し、さらなる飛躍の土台を築いた。町の子どもたちは、新しい店の看板を見て、未来に目を輝かせた。
新宿二丁目は、この頃、特別な場所になった。戦前の男色文化が花開き、ゲイバーや社交場が次々と生まれた。闇市の自由な空気と、進駐軍の西洋の風が混ざり合い、新宿二丁目は日本一のゲイタウンの礎を築いた。1950年代には、トランスジェンダーやレズビアンの仲間も集まり、誰もが自分らしくいられる場所になった。バーのカウンターでは、客たちが静かに語らい、笑顔が灯った。町の古老たちは、この新しい風を不思議そうに見つめたもんじゃよ。